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中国と韓国の友達へ。Dear Friends in Korea and China

投稿日:2017/12/15更新日:2019/03/29

本日も中国で反日デモが起こっている。今回は、上海である。2万人が参加し、一部が暴徒化し、日本総領事館に投石し窓ガラスを割り、日本料理店や小売店の看板や店舗を破壊したらしい。このコラムは、政治的なことを書かないつもりできたが、拙著「人生の座標軸」に記載のとおり、僕は組織人であるとともに、日本人・アジア人である。日本人そして、アジアの仲間として、どうしても黙ってみていられないのである。

数日前には、40才以下の若手起業家が集まるYEO(Young Entrepreneurs Organization)のメイリングリストで、中国で事業を開始している起業家から以下の趣旨のメールが入った。

「中国でビジネス展開をしようと思っているが、竹島問題それから中国での反日感情の高まりなどがあって、今思うように進まなくなってきた。以前、ソウルで、日本が征服している時代に使った刑務所跡地を訪問した。衝撃を受けた。日本政府も過去の事実関係を開示すべきである。そして今こそ、僕らが、何らかの発言をする必要があるのではないか」と。それに呼応する形で、他の参加者からも、「また、今こそ、世界の歴史的事実を中立者が検証し我々の時代で可能な限り過去を清算し、新しい世代の子供達には、全世界共通認識での教育をしていくべきである」。との意見があった。

僕も黙っておられずに以下のとおり、意見を表明することにした。

「難しい問題ですが、僕なりの見解を書いてみます。
中立者が歴史を検証することが良いかどうかもわからないし、全世界共通認識での教育が必要かもわからないです。そもそも歴史というものは、視点によって違ってくるものだと思うので、ある程度の差異はあっても問題は無いと思います。また、他国の教科書や他国の首相の信条に対して、異論を投げかける行為が内政干渉ではないかという意見も根強くあります。それよりもアジア人、地球人として、戦争を体験していない若者として、未来指向の関係構築を訴えかける方が重要だと思います。

一番いいのは、YEO韓国や中国の方々と徹底的に議論してみることだと思います。僕は、過去に満足いくまで議論してきたので、ある程度すっきりしています。議論するためには、自分なりの歴史観を持つ必要があると思います。幕末に、アジア諸国が欧米列強に植民地化される中でおきた明治維新にまで遡り、日清、日露戦争を経ての日韓併合、そして日中戦争までの流れを理解することが重要です。それなくして、一部の歴史認識や一事象を取り上げるのは、誤解を招くし、望ましくない結果を招くと思います」。

そして、続けた。「先ずは、座標軸のX軸にあたる世界観(アジア観)を身に付け、Y軸にあたる歴史観を身に付けるによって、自分なりに何が正しいかがわかると思います。それを、自らのアイデンティティに従い日本人(韓国人・中国人)の視点、アジア人の視点、地球人の視点としてわけて議論をすると、結局違いを認識したうえで(つまり同意をしなくても)、納得して次に進めるのではないかと思います。

日本を引っ張っていき世界に飛び立つ立場の起業家の皆さんが、自分なりの良い歴史観・世界観を持つことは、とても重要なことだと思います。(^^)」。

このメールのあとで、最初の発言者から「アジアの歴史を学びながらアジアのビジネスを考える研究会が発足することにした」、とメールが入った。そして、多くの起業家の方々が参加表明し始めたのである。このYEOは、世界レベルの機関なので、韓国・中国の方々と未来志向の共同声明などが出せることを皆望んでいるのを皆のメールの発言の中から感じ取ることができた。

その反日運動が盛り上がるさなかの一昨日に、別の勉強会で、安倍晋三さんをお招きして、夕食会を開催することになった。僕は、ラッキーなことに、安倍先生の真横に座ることができた。そこでも中国のデモのことや日本の安保理に韓国・中国が反対していることが話題になった。安倍先生と、色んなことを意見交換する中で、新たな発見がいくつかあった。その中で一番大きな発見が、「戦後ドイツは、国家として近隣諸国に対して、損害賠償は一切行っていない」、という点だ。つまり、日本が中国・韓国やアジア諸国に、ODAという形で賠償し、経済、技術移転、人材開発に貢献してきたのにも関わらず、ドイツは一切それを行っていないのである。ところが、中国や韓国は、「ドイツを見習え」、という。日本は、十分に謝罪をしてきていると思うし、アジア諸国への貢献もかなり行ってきている。その事実関係をしっかりと伝えていくことが重要なのでは、との結論に達していた。

会合のあとで、政治家の世耕弘成議員などと赤坂、西麻布のバーで二次会・三次会と称して議論しつづけた。世耕さんは、今回安倍晋三さんを招いてくれた方だ。僕と同い年で、NTT出身ということで、ビジネスライクに話しができるので、親しくさせてもらっている。その夜、世耕さんとは、次のように、様々なことを意見交換した。

「やはり、僕らは、黙っていてはいけないのではないか。日韓、日中関係は、僕らが正しいと思うことをキチンと発言することによってしか、改善しないと思う。台風が過ぎるのを首をすくめて待っていても、解決はしない。偉い方々が発言しないならば、僕らが立ち上がり、ハッキリと言うべきだと思う。ただ、あくまでも、発言の姿勢やトーンは、対決を煽るのではなくて、同じアジアの仲間(友達)として、理解してもらうために発言する、というスタンスは崩すべきではないと思う。これからは、僕らがリーダーシップを発揮して、引っ張っていく時代になってきたのではないか」と。

そして、意気投合して、「ビジネスパーソンと政治家の連名で、ファイナンシャルタイムズ紙などに投稿して、声を伝えよう。そしてゆくゆくは、本を出版しよう。」ということになった。タイトルは、「Dear friends in China and Korea]。つまり、「親愛なる中国と韓国の友達へ」というものにしよう、ということになった。

翌日、二日酔いでお腹に違和感がある中で、時間を見つけながら、以下文章を書き上げた。昼間は会議がびっしり入っているし、夜には次期ダイエー社長の樋口さんの講演会が入っているので、時間はあまりなかった。また、ネイティブにチェックしてもらう時間も無い。こういうのはタイムリーに出さないと意味が無いのだ。「どうせ、日本人が書いているのだから、多少英語のミスはいいでしょう」、という気持ちで、書き上げて、世耕さんの同意をもらって、そのまま投稿した。

文章は、以下のとおりである。

Dear Friends in Korea and China,

As future leaders of business and politics, we are quite concerned about the tension aroused in China-Japan and Korea-Japan relationship. We have many friends in Korea and China. We admire the civilization and cultural heritage that China and Korea have brought to Japan.

Although we share some sympathy to your uneasiness towards Japan's understanding on history, that does not justify the violence towards Japanese citizens visiting China, the attack towards Japanese Embassy, and the boycott of the products made by Japanese companies who have invested and committed to China.

Even though we are in the generation who has never experienced the war, we have been brought up feeling that Japan has kept apologizing to China and Korea. Whenever our Prime Minister visits your countries, we have been demanded to apologize to you. We have been seeing the scenes on TV many many times. .

Our question is "How long do we need to keep on apologizing to you, before you feel satisfied?" It has been already 60 years after the war. You always mention that our apology is not enough by comparing Japan with Germany. But we feel that Japan has been acting in a good manner to compensate to our neighboring nations in a way comparable or in a different way than Germany. Japan has been contributing in a form of ODA to Korea, China and the rest of Asia. We have actually committed to the development of Asia by contributing in building infrastructures, technology transfer, and human development. We have never fought or engaged in the war for more than half a century. We have kept peaceful democracy for the past 60 years.

Our friends in Korea and in China, we feel that it is about time to look to the bright future, not the past.
All of the three countries are very important to the region and to the world. All of us should join together to build the world a better place for all of us to live in.

This is the message that we would like to convey to you, our friends in Korea and China.

Yoshito Hori 
Hiroshige Seko

<対訳>
韓国と中国の親愛なる友人達へ、

将来を背負っていく日本のビジネスパーソンと政治家の一員として、僕らは、最近の日中関係と日韓関係の急激な悪化を懸念しています。僕らには、韓国と中国に多くの友人がいます。僕らは、中国と韓国が日本にもたらした文明と文化的な遺産を評価しています。

あなた方が歴史問題で、日本に対して多少の苛立ちを持っていることに一定の理解を示しますが、だからと言って、中国を訪問している日本の市民への暴力、日本の大使館への攻撃、と中国にコミットしている製品のボイコットを正当化することはできないです。

僕らのように戦争を経験したことが無い世代は、僕らの首相があなたの国を訪問するたびに、要求に従って謝罪をするのを見て育ってきました。我々は、 テレビでその場面を何度も見てきました。

ぼくらの質問は、「あなた方が納得するまで、僕らはあとどれだけ謝罪し続ける必要があるのでしょうか?」ということです。 すでに戦争が終結して60年が経過しました。
あなた方は、ドイツを引き合いに出して、日本の謝罪は十分でないと言われます。しか し、日本がドイツと同等あるいはそれ以上に補償に応じてきたことを知っています。

隣国に国家として補償しなかっ たドイツとは違う形で、日本は韓国、中国と他のアジアに政府開発援助(ODA)の形式で貢献してきました。 僕らは、社会基盤整備、技術移転と人材の育成開発に貢献することによって、アジアの開発に専念してきました。僕らは、半世紀以上の間戦争に関与してきませんでした。僕らは、過去60年の間平和な民主主義を維持してきました。

親愛なる中国と韓国の友人達へ、僕らは過去ではなくて、明るい将来に目を 向ける時期になっているのだと認識しています。中国、韓国、日本の3カ国は全て、地域そして世界にとってとても重要な地位を占めます。僕ら全員が、世界をより良い場所にするために協力する必要があります。

これが中国と韓国友人に伝えたいメッセージです。
堀義人
世耕弘成

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どういう反応があるかはわからない。結局ボツになって掲載されないかもしれない。ただ、そうであってもコラムとして残しておくことによって、見てくれる方もいるのではないかと思う。やはり、考えていることをハッキリ述べて、対話をすることを通してしか、この問題は解決しないと思う。僕ら、一人一人が、しっかりとした歴史観と世界観を持ち、決して逃げたり話題をそらしたりすることなく、自らの信念に従い、対話を粘り強く行うことが重要だと思う。

本日(土曜)の昼前に4人の子供をランドクルーザーに乗せて山小屋に向かった。山の上では桜はまだ咲いていなかった。4人の子供達が大きくなるころには、この問題が解決しているのであろうか。今年でもう戦後60年である。60年かかっても結局解決できていないのである。同じアジア人の仲間として、中国人、韓国人と日本人とで、アジア及び世界を一緒になって良い場所にすべく貢献できることを切に祈っている。

この問題を解決できるかどうかは、結局僕ら一人一人にかかっているのだと思う。子供達のためにも、未来指向の関係を構築できるようにすべく対話を重ねる必要があると思う。

2005年4月16日
軽井沢の山小屋にて
堀義人

 

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