悪い癖 

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「あぁ、またやってしまったぁ〜」、と朝起きて、自己嫌悪に陥る。

お酒の飲みすぎで、頭が朦朧とし、胸焼けがして、体がフラフラとしているのを実感しながら、頭を抱え 、ながら昨晩の記憶をたどることになる。
記憶があるときは、まだ良い。一番恐ろしいのは、記憶を断片的にしか覚えていない時である。これが恐ろしいのである。

「何か迷惑をかけていないであろうか?」、「恥ずかしい行為をしていないであろうか?」と思い巡らすが、記憶がないので、どうしようもない。気にはなっても、朝からアポがあるので、先ずはお風呂に入りながら体調を整え、慌しく準備をすることになる。

ひと段落して、多少心身ともに回復し始め、時間的にゆとりができたときに、昨晩の飲み仲間に電話をする。平身低頭謝り、自らの昨晩の行為を教えてもらうことにする。自分の行為を他人に教えてもらわなければならないのも、情けない話である。そして、ご迷惑をおかけ し たであろう方々を教えてもらい、必要に応じて、謝罪のメールを送るのである。

「謝罪をするぐらいならば、そんなに飲まなければいいのに」、と思うものである。以前の若手ベンチャー起業家的な立場ならばまだ、「起業家だから、辛いこともあるのでしょう」ということで、多少は優しく受け止めてもらえる面もあったかもしれない。しかし今や、経営大学院の「学長」である。世間的な立場が違うのである。週刊誌には、「学長、お酒を飲んで、ハチャメチャ騒ぎ。 これは教育者と して相応しい行為なのか?」なんて、見出しが並ぶかもしれない。

社内の飲み仲間からは、冗談混じりに、「グロービスのリスクは、トップの素行にある」 何て言われちゃうと 、美味しいはずのお酒も進まなくなってくる。

そこまで言われるならば、なんとかこの『悪い癖』を治そう思い立ち、なぜそうなるかという原因をパターンごとに分析することにした。

パターン1:美味しいお酒のパターン
僕は、美味しいお酒が好きなのである。特にシャンパンとワインは、美味しいとついついクイクイと飲んでしまう。シャンパンから始まると、つい飲みすぎてしまい、そこに美味しいワインでも来ようものなら、楽しい会話とともに酒量が自然に増えてしまうのだ。日本酒や焼酎も好きなので、同様の状態になる。ただ、少人数で紳士的に飲んでいるときには、「危ない状態」にはならないのだ。従って、このパターン1は、「長時間飲まない限りは、問題無し」、と言えよう。

パターン2:自分へのご褒美で飲むパターン
これは、自分が一生懸命に何かをして、成功させた際、「自分へのご褒 美」として飲む場合である。この場合は、少数の近しい仲間と共に、六本木の街なかなどに繰り出すことが多い。「ご褒美」なので、多少奮発して美味しいお酒を飲む。しかし、パターン1と違うのは、紳士的に飲むことは無く、踊ったり、騒いだりして、思いっきり楽しむ点である。「ご褒美」ということで、達成感があるからか、どうしても体がふらつくまで飲まないと、気が済まないのである。街なかを徘徊しているときに、真っ直ぐ歩いているようではダメなのである。だいたい夜中の2時か3時まで飲んでしまう。このパターン2は、「中程度の危なさ」である。

パターン3:飲まされるパターン  
僕は、お酒の場になると率先して周りの方々を盛り上げようとするほうである。 特に社内や親しい友人との会合ではそういう思いが強くなる。周りの人も、僕が酔うと場が盛り上がることが分かってくると、「堀義人を飲ませると場が盛り上がるから飲ませようぜ」 となってくるらしい若手起業家の会であるYEO (現EO) の方々に聞いたのだが、僕は、お酒の場では「盛り上げ役」としてターゲットになっているようだ。確かに二次会などの場で、盛り上がりが欠けると、皆がこぞって僕にお酒を注ぎにくる。「受けた酒は、飲まなければならな い」、と体育会的精神で受け止めてしまうので、そのまま「危ない状態」に急ピッチで突入していく。もっとも危ないのがこのパターン3である。

こうやってパターン分析をしてみると、解決策も自ずと見えてくる。まずは以下、自主ルールを制定することにした。

①イッキ飲みは、挑発されても受けない。僕は、体育会系のノリがまだ残っているので、誘われたら断れないたちなのである。でも45歳を迎えようとしている今、体力的にも持たなくなってきているので、これはさすがにもう辞めようと思う。

②12時を超えたらお酒を飲まない。シンデレラとして、たとえ盛り上がっていようが颯爽と帰る。それができるようにならなければならない。

③「ご褒美」は、お酒以外のものにする。例えば、5人の子供達と過ごすことをご褒美にする、とかである。

さて、この3つの自主ルールで、「悪い癖」は撃破できるのだろうか。またこの3つのルールは、本当に守れるのだろうか。

そんなに真面目になると、「面白みが欠ける」という意見もあるかもしれないが、さすがに45歳となり、「学長」ともなると、自分の行動を変えていく必要が出てくるのである。お酒の場以外でも面白みを出せる人間に進化する必要があるのかもしれない。

今までお酒の場に付き合ってくれた方々に感謝をしつつ、これから進化していくであろう堀義人の門出を祝して、乾杯の音頭でこのコラムを締めたいと思います。

「乾杯!」

さて、どうなることやら。新生・堀義人に乞うご期待。(^^)¥


2007年3月9日
自宅にて執筆
堀義人

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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