球団買収交渉!? 

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4月の最初の日に、グロービス全社員が加入しているメーリングリストに次のメールが間違って流されてきた。差出人は、グロービス大阪オフィス代表の松浦恭也氏で、本来は大阪オフィスの経営会議参加者のみに内密に出されていた筈のものが、間違って全社員に流れてきたものだ。

タイトルは、「球団買収交渉の進捗状況について」で、以下書かれていた。

本日2時からの大阪経営会議では、1月以来交渉が続いている、例の九州独立リーグの球団買収の話について、私から進捗報告をしたいと思います。

詳しくは経営会議で共有しますが、過去3年にわたり収支トントンの状況のため、買収価格はおそらく5億円程度に落ち着くのではないかと思っています。大阪オフィスの営業利益マルチプルからすると悪くないのでは、と。

九州地区でのグロービス知名度を一気に上げる絶好のチャンスですので、ぜひ前向きに検討したいと思います。なお、グループ経営執行会議を含め、本件は超極秘で進めていますので、くれぐれも他言なきよう。

また、経営会議メンバーが新会社(英国領マン島にSPC登記)の株を持つ件に関しても、あまり浮かれ顔をすると勘ぐられますので、あわせて気をつけてください。
では、後ほど。

松浦恭也@イチローとか取れないかなぁ。(^^)/

その日は、子供の春休み中ということもあり、休みをとっていた。グロービスでは新卒採用をしていないので、4月の初日であっても入社式などの儀式も特に無いし、日曜日にグロービスのMBAプログラムGDBAの入学式も控えていたので、振替休日を取ることにしたのだ。当初は、山小屋で過ごす予定だったが、スキー場は雪解けが進んでいてスキーには適していないし、キャッチボールやサッカーをやりたくても、庭には中途半端に雪が残っているのでできない。そこで、久し振りに東京で過ごすことにした。

子供が、「おもちゃ屋さんに行きたい」、というので、昼前に家族で新宿にある大型複合店に向かった。そこに行けば、おもちゃ屋、本屋、電気屋などが入っていて、何でも手に入るので重宝している。ただ、僕は休みを取っているが、世間的には仕事をしている平日なので、お構いなしでメールがガンガンに入ってくる。

グロービスには、「24時間ルール」なるものが存在する。「24営業時間以内にメールで返答が無ければ、そのメールに賛同したものとみなす」、という怖いルールなのである。従い、トップの僕は、常にスピーディに返答をすることを心掛けている。そのスピーディなメールのやりとりによって、重要な競争優位の源泉である、意思決定のスピード感が生まれてくるのだが、平日に休みをとっている立場からするとたまらない。休んでいる気がしないのだ。でも、これはこれで慣れてきていた。メールをした後に頭と気持ちの切り替えがすばやくできるようになってきているのだ。

百貨店に着きおもちゃ売り場で、子供達が楽しそうにおもちゃを物色している最中に、僕は同じフロアの喫茶店に入り、アイスティーを注文して、パソコンを開き、仕事を始めた。そこで、30分強ほどで、午前中に入ってきたメール処理を完了させる。子供達が楽しそうにおもちゃを片手に、喫茶店にいる僕を呼びに来たので、パソコンをパタと閉じて、上階のレストラン街に向かい、家族でランチをともにした。

午後は、子供達の希望で、ボーリング場へ向かった。そこでも、パソコンを開いて、仕事をすることにした。そして、その時受け取ったメールのひとつが、上記の内容のものであった。僕は、頭の中がクエスチョン・マークでいっぱいなった。「九州独立リーグの球団買収?」「買収価格はおそらく5億円程度?」「知名度を一気に上げる絶好のチャンス?」「グループ経営執行会議を含め、本件は超極秘で進めている?」「英国領マン島にSPC登記?」、、、しかもそれが間違って全社メーリングリストに流れていたのだ。

その後、差出人の松浦氏からは、「申し訳ない。間違って流してしまったので、本件内密にしておいてくれ」、との念押しのメールが即座にアップされていた。僕も、以前二回ほど間違って全社メーリングリストに送信してしまったことがあるので、その類のミスなのかと思った。「このメールが社外に流出しなくて良かった」、と安堵しながらも、どうすべきか思案にくれた。このメールを全社員が見ているのである。「球団買収」など、検討したことも無いし、考えられないことだ。しかも九州独立リーグなど聞いたこともない。でも、差出人が大阪オフィス代表で、グループの経営執行会議のメンバーだから、社内への影響も大きい。何らかのアクションをとるべきではないかと悩んだ。

僕が、そのメールを見たときには、既に1件返答がついていた。あの、ハチャメチャで合コン好きの松林講師からだ。内容は、「その構想に賛成である」。そして、「イチローと今週中に合コンをするので、ちょっと聞いてみる」「イチローは、ストライクゾーンが広いよ」、とまで書いてあった。

「イチローと合コン・・・?」さらに、よくわからなくなりながらも、さすが、松林講師、イチローとも親しいのか・・・、と妙に感心をした。子供達がボーリングをしているのを見守りながら、ちょっとジャブ的に一本メールを入れることにしてみた。


松浦さん

本件、内容も前後の脈絡も全く理解していないですが、グロービスが球団経営などを行うことは考えにくいので、その点は念頭に置いておいてください。
スポーツは基本的に自らやるか、観戦するのが一番でしょう。(^^)

合コンも、観戦するよりも、自らやるのが一番でしょう。
ということで、僕も合コンに参加したいな。(^^)
打率は高いかも!?


という訳のわからないメールを全社員参加のメーリングリストに流した。「文法もロジックも滅茶苦茶な訳のわからないメールを出してしまったな〜」、と思いながらも、他にも多くのメールが来ていたので、他メールの処理に専念していった。全てのメールチェックが終わった頃、子供達もボーリングを終え、ボールを重そうに抱えて戻ってきた。それからは、一緒に遊べなかったちょっとした罪悪感から、もうパソコンを開かずに子供達と遊ぼうと決めた。子供達とサッカーゲームをして、声を出しながら体を動かして遊んだ。やっと休みっぽくなってきた感じがしていた。

駐車場で車を出す前に、チラッと携帯で転送されてきたメールを確認すると、本件に一件レスが付いていた。グロービスの知恵袋が集まるグロービス・マネジメント・インスティテュート(GMI)の若手ホープの川上さんからだ。


ほりえもんさんによると、西武ですら「タダなら買ってもいい」だそうです。
http://www.tamakimasayuki.com/sport_bn_34.htm

地方独立リーグの球団に5億円はさすがに高すぎるのでは…。
再度デューデリをご検討いただければ

「そりゃあそうだよね」、と安心して、自宅に戻った。ソファに横になりながらも、気になったので携帯でメールをチェックしてみた。夕方までに本件に関して、二件ほどメールが続いていた。

僕が代表を務めている、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)のプロフェッショナルの秦さんからだ。


内緒にして頂きたいのですが、実はGCPでは西武ライオンズを1億円で買う最終段階まで来ています。こないだ、その関連で松坂、カブレラ、清原、秋山等に会ってきました。なかなかナイスガイでした。

僕は、「え、ちょっと待てよ、そんなこと聞いていないぞ」、と思いながら、読み進めた。


↑APRIL FOOLS!!(4月バカ)真っ赤なうそです。ごめんなさい。(清原・秋山って いつの時代だ?)
九州ネタもおそらくそうでしょう。という訳でこのネタはこれで終わりにしましょう!!Cheers ;- )

そして、もう一件、本件の最初のメールをだした張本人である松浦氏が、即座にレスしていた。


グロービス 創造と変革の志士ーズを夢見た皆さんへ

どーもー!! 4月1日男、うそつき松浦デース!
お楽しみいただけましたでしょーか? バシ!(*o*)\(--)

松林さん、堀さん、川上さん、秦さん、ご登場どうもありがとうございました。
特に堀さんと川上さんの“迫真の演技”には脱帽です。

では、また来年お会いしましょう! (^o^)/

松浦恭也

「もしかして、ダ・マ・サ・レ・タ!?そうか、今日は4月1日・・・・エイプリル・フールだった」。
僕は、このメールを読み終わった後に、どっと疲れてソファの中に埋もれて数分動けなくなってしまったのだ。
その日は、結局を仕事をする気になれず、ひたすら子供達と一緒にテレビを観ながら、ぼ〜としていた。

このコラムを最後まで読んでいただいた読者の皆さん、4月1日のエイプリル・フールには気をつけましょう。
4月の最初の日のグロービスでのちょっとした風景でした。ジャンジャン。


2005年4月2日
自宅にて
堀義人

 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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