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3週間の世界一周出張(その7-ボストン編)

投稿日:2004/11/01更新日:2019/09/04

ボストンに着いた。天気は曇りだが、人々の心は晴れやかであった。タクシーの運転手も街中を歩く人も、ボストン・レッドソックスのことばかり語っていた。無理もない。今までレッドソックスは、リーグ優勝決定戦でニューヨーク・ヤンキースにコテンパンに負かされ続けていたのである。そのヤンキースに3連敗した後、4連勝して逆転優勝したのだ。しかも、 ヤンキースを破ったのは、何十年ぶりかのことである。

ただ、その優勝に沸くボストンで悲劇があった。優勝を喜び、盛り上がったファンが暴徒化し、車をひっくり返したり暴れ始めたのである。そこに警察隊が出動して、エアライフルのようなもので威嚇発砲した。本来は死に至らせるようなものを銃の中に入れていない筈なのだが、銃の中にあった細かい粒子が目に当たり、死亡してしまったのである。また違う場所では、ヤンキースファンがレッドソックスファンを銃で撃ち殺すという悲劇もあった。

優勝に水を差すような悲劇である。タクシーの運転手との会話を思い出した。「喜ぶのはわかるが、ある一定の限度がある。それを超えるレベルに達するのに大きな問題がある。どの国の若者でもそれを抑制する自制心がある筈だけど、米国人に無いのはのは残念だ。私は可能な限り感情移入しすぎないようにしている。唯一心情的にのめりこむのは、家族と友達だけだ。それだけで十分だ」、と言葉を選びながらゆっくりと喋っていたのが印象的であった。

金曜日の朝、いつものようにサウナを浴び、プールで泳いだのちに、朝食に向かった。今まで1人旅だったが、ボストンからは仲間が増えたのである。本日から始まるボストン・キャリア・フォーラム(BCF)に展示するために、グロービス・マネジメ ント・バンク(GMB)の面々が来ていたのだ。久し振りにホッとした気分になった。

ただ、ミーティングは基本的に1人でこなすことになっていた。今日のミーティングは4件も入っていた。行く先々で、レッドソックスの話題が出たので、トーンは非常に前向きであった。ランチは、今回も移動の車中で食べた。投資家とのミーティングは、基本的に同じことを繰り返し説明することになる。そして様々な質問を受け、ひとつひとつ答えていくことになる。

『投資家訪問は決して1人で行かずに、2人以上で行くように』とエイパックス社のIR担当者に教わった。理由は簡単である。1人が喋っている間にもう1人が考えたり、水を飲んだりして、休むことができるからだ。ところが、今回の場合は長いので1人旅である。1人で訪問し、英語で説明し、質疑応答の対応をすると、正直言ってクタクタになる。1日3件が限度じゃないかと思っているのだが、今日のように3件以上入ることもある。毎日連続して同じ事をし続けると、気分転換が重要になってくる。

これだけ長い期間の出張になると、健康管理とともに、精神状態の管理、特に気力の維持がとても重要になる。
※健康管理に関しては、コラム「海外出張の過ごし方」をご参照下さい。

そこで気力を充実させるために、様々な楽しいことを考え出すのである。ヤンキースの応援に行ったり、プレミアリーグを観に行ったりである。ホテルの部屋では、CDプレイヤーを借りて、持参したクラシック音楽のCDをかけることにしている。昼間に時間があれば、可能な限り美術館を訪問したりする。夜は、オペラやバレエ、ミュージカルなどを機会があれば観たいと思っている。でも今回は、もっぱらスポーツ観戦が主体となっている。

翌日のキャリアフォーラムでスピーチをした際、学生から1つの面白い質問を受けた。「堀さんは、『この分野であれば誰にも絶対に負けない』、というものがありますか?」、と。僕は少し考えてこう答えた。「僕は、楽しさを見つけることに関しては、誰にも負けないと思う。そして、ものごとを前向きに捉えることに関しても、相当いい線いっていると思いますよ」、と。

そうなのだ。僕は、昔から楽しみを見つける事に関しては、たまに自分でも天才(?)かと思うほどのひらめきと行動力があるのだ。常に、どこに行っても、楽しいことを見つけてしまうのである。食事に関してもしかりだ。カンヌでは、美味しいフランス料理を堪能し、オスロではサーモンなどのシーフードである。ロンドンでは、インド料理を食べ、ニューヨークではタイ料理とイタリアンだ。中華街の飲茶も美味しいので、ミーティングの合間に堪能した。ボストンでは、クラムチャウダーやロブスターだ。昨晩は、メキシカン料理だ。お陰で2キロほど太ってしまった。

本当は、1人で出張すると飽きてしまうし、同じ事ばかりしていると嫌になるものである。それを、持ち前のポジティブ・シンキングと、楽しむことの天才性を発揮し、各地で友達と交流することによって、楽しい1人旅に変えてしまっているのである。今回も既に2週間経つが、その点では結構、順調に行っている。

気力も充実して、明るい雰囲気でミーティングに臨むと必ずうまくいく。投資家やパートナーも皆、明るく、楽しく、前向きな人に好感を持つものである。キャリアフ ォーラムでも優秀な人材を採用しなけらばならない。トップが真面目くさってつまらなさそうにしているのと、明るく楽しそうにしているのとでは、学生側の印象も違う。当然、明るく楽しい会社で、「働きたい」と思うものであろう。

土曜日のキャリアフォーラムのスピーチを明るく行い、その後10人近くの面談も楽しいまま終えた。さすがに、翌日曜日のキャリアフォーラムは、グロービスの他メンバーに全面的にお任せすることにして、僕は1日お休みをもらうことした。

そして、友達とアメリカンフットボールの観戦に行くこととした。ニューイングランド・ペイトリオッツの試合だった。ニューイングランド・ペイトリオッツは今シーズン5連勝中の負け無しで、同じく5連勝負け無しのニューヨーク・ジェッツとの対戦だ。野球に続き、アメフトでもボストン対ニューヨークの試合だ。今回は、松井選手のような日本人選手がいないので、ボストンを応援することにした。

考えてみたら、今回が僕にとって初めてのアメリカンフットボール観戦だ。理由は簡単で、僕がハーバード・ビジネス・スクール(HBS)に留学していた当時、ペイトリオッツはとても弱いチームだったのだ。負けてばかりいたので、応援に行く人も少なかった。当然、僕も負けるのは観たくないので、行った事がなかったのである。しかし、そのペイトリオッツは、94年にオーナーが代わってから、相当力を入れて勝てるチームになってきていたのだ。何と、あの弱小チームが2001年、2003年のスーパーボウルで勝ち、ペイトリオッツは、ここ3年間で2回も優勝しているのだ。負けつづけていたあの当時を知る人間からみると考えられないことだ。

しかも現在、プレイオフを含めて20戦負けなしのAFL記録を更新中である。それだけ強いのだ。会場は、6万4千人収容できる最新の会場だ。マクドナルドからピザまで、何でも売っている、とても楽しい空間だ。<110試合連続、満員御礼>という電光掲示板の表示があった。チケットは1万円以上するのに、6万4千人を110試合連続で動員しているのだ。

しかし、コマーシャリズムも凄い。スタジアムの名前は、『ジレット・スタジアム』で、ゲートの名前は『バンク・オブ・アメリカン・ゲート』である。プレーの合間には必ずコマーシャルが流れるし、電光掲示板は見渡す限り、広告になっていた。駐車場代も1万5千円以上もする。新しいオーナーの親子は、HBSの卒業生で、COOもHBSだ。スポーツマネジメントに徹底した経営の科学を導入し、スタジアムを新築して、マーケティングを強化し、広告スポンサーを多数募り、生まれたキャッシュフローをチーム増強に振り向けて、グッドサイクルをつくりあげてきたのである。

前半を13-7でペイトリオッツがリードしてる時に、会場を後にした。夜にはグロービスの仲間を、美味しいシーフードレストランに招待する約束をしていたので途中までしか見れなかったが十分に堪能した。ちょうどスタジアムを出た頃に雨が降ってきた。ホテルに戻ってペイトリオッツの勝利を確認し、グロービスの仲間との食事に、中華街へと向かった。

明るく、楽しいまま、ボストンでの滞在が終わろうとしていた。

2004年10月24日
ボストンのホテルにて
堀義人

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