ロンドンは、今回も小雨で僕を迎えてくれた。10月14日、木曜日の夕方にヒースロー空港に着いた。
翌日、金曜日のロンドンでの仕事は、投資家と2つの面談、提携先のエイパックス社の訪問とビジネススクール関係の面談が1つ入っているのみである。当初予定していた、ロンドン・ビジネス・スクール(LBS)でのスピーチと採用ディナーは、LBS側の校内イベントのため、キャンセルとなった。ロンドンでは、比較的ゆっくりできる日程となっていた。今回の出張は長いので、アポイントメントも必要最低限に絞り込むようにしていることも影響している。
翌日、金曜日の朝、いつものようにサウナを浴びてプールでひと泳ぎしてから、投資家との面談に向かった。バッキンガム宮殿の庭が見渡せる場所に、その投資家のオフィスがあった。1時間半程度、ファンドの現況を説明し意見交換した。感触は上々であった。 終わり次第、提携先のエイパックス社に向かった。次の投資家ミーティングは、エイパ ックス社の会議室にて行われた。予定より15分も早く着いたのに、投資家は既に会議室で待っていた。昼食をしながら、意見交換をした。ミーティングが1時間強で終わったので、エイパックス社のパートナー複数名と昨今の状況について意見交換した。
僕は、1999年1月から2月にかけて、エイパックス社のロンドン事務所で、6週間ほどトレーニングを受けていた。ヨーロッパにおけるベンチャーやMBO投資の実務を学ぶためである。その当時、同室で机を並べ働いていたプロフェッショナルが、今は出世してパートナークラスになっていた。懐かしい面々だ。ファンドの概況からファミリーのことまで、幅広く状況をアップデートし合った。短い時間であったがとても充実していた。次のファンドからは、エイパックス社との提携関係は解消されるが、今後ともお互い良い仲間として、良好な関係を持続することとなろう。エイパックス社には、本当に人間としてもいい人が多い。大切にしたい仲間である。
予定よりも早く、エイパックス社でのミーティングが終わったので、防寒着を買いに オックスフォード・ストリートに向かった。オスロほどではないが、ロンドンも比較的寒かった。この後の行程は、米国のニューヨーク、ボストン、シカゴと寒い都市が続く。コート・ダジュールのような暖かい気候は、最後のカリフォルニアのベイ・エリアまでお預けとなるのであろう。デパートで、コート・手袋・防寒用の下着などを仕入れて、次のミーティングに向かった。
次は、グロービスのビジネススクール部門の大学院化に絡むミーティングであった。 グロービスでは、2003年より独自のMBAプログラムを開始しており、優秀な受講生が、業務を続けながら学んでいる。
先日の日経産業新聞のビジネススクールランキングでは、グロービス・マネジメント・ スクール(GMS)は、早稲田大学や神戸大学を抑えて堂々3位に入っている。
グロービス・マネジメント・スクール(GMS)のプログラムは、現時点でグロービスのオリジナルMBAプログラムであって、文科省や海外の認証機関の認証を得ていない。僕らは、このグロービスのMBAプログラムを、2022年までには、アジアNo.1のビジネススクールにするというビジョンを持っている。そのビジョンに向け、大学院としての形をどうすべきかを、つい最近GMSの受講生や講師の方々を巻き込んで議論を始めたところであった。当然、文科省の特区を活用して、株式会社のまま大学院化するというオプションもあるし、海外の認証機関からグロービスのMBAの品質を認めてもらうというオプションもある。当然、両方を行うことも考えられる。
その議論の真っ只中で、僕はロンドンにあるMBA認証機関を訪問しにきたのである。デ ィレクターとコーディネーターと握手をして、面談が始まった。1時間半ほどの間、GMSの状況を説明し、質疑応答を行った。今までの面談は、投資家にグロービス・キャ ピタル・パートナーズ(GCP)を売り込んできたのだが、今回は、認証機関にGMSを売り込んでいるのである。海外でのセールス活動も板についてきた。新入社員の時から商社で鍛えられたことが良かったのかもしれない。
反応は上々であった。GMSが近い将来、海外の認証機関から、MBAカリキュラムとしての認証を受けられるという感触を得られた。来年から資料作成などの実作業に入ることになるであろう。良い感触を得たまま、ロンドンでの仕事を終えた。まだ夕方の4:30であった。1週間の欧州でのアポイントメントは全部終わったので、一息ついて、これからは週末のロンドンを楽しむことにした。
先ずは、その足でナショナル・ギャラリーに向かった。名画が溢れるほど展示されていた。ターナーの絵が素晴らしかった。そして、紳士服街で有名なジャーミー・スト リートにある行きつけの紳士服店に向かった。ロンドンに来るたびに必ず立ち寄る店である。タイミングよくバーゲンをしていたので、スーツを購入した。夕食は、ホテルの部屋で軽くすませ、翌日のサッカー観戦に備えることにした。
翌日、ハムステッドの地下鉄の駅で友達と待ち合わせした。この友達はロンドンで、あるプライベート・エクイティ・ファンドのパートナーとして活躍している。日本人で、ここまで海外で成功している人はちょっといない。非常に優秀な方である。2人で、カフェに入り、グローバルなファンドのトレンドなどを意見交換した。軽く食事を済ませ、友達の家族も合流して、アーセナルのサッカースタジアムに向かった。
本日のゲームは、アーセナル対アストン・ヴィラである。日本でもお馴染みの名将ベンゲル監督率いるアーセナルは、昨シーズンより負け無しで絶好調である。フランス代表のアンリなどの名選手も揃っている。アーセナル・スタジアムの中に入った。僕の座席は、選手の動きが見渡せる最上階にあった。横には、新しいドーム形式のサッカースタジアムが建築中であった。友達によると来シーズンには6万人ほど収容できる新スタジアムに移行するとのことだ。今の4万人収容のスタジアムでチケットは1万円以上するのに満席である。したがって、日商4億円以上。6万人収容できるスタジアムがあれば、最低でも50%以上収益が上がることになる。さすがに、サッカー発祥の地だけあって、十分にビジネスとして成り立っているようだ。
試合開始のホイッスルが鳴った。開始早々、アストン・ヴィラが先制した。その後、アーセナルがPKで1点を返し、前半終了間際にさらに1点を上げて逆転した。後半にも更に1点を加え、結局3-1とアーセナルがあぶなげない勝利で終わった。観客も皆満足であった。プレミア・リーグの観戦は初めてだが、観客が歌を歌っているのが印象的であった。
友達家族にお礼を言って別れを告げ、ホテルに戻った。明日は大西洋を横断して、ニューヨークに移動する。明日から2週間は、米国内の移動だ。投資家訪問、スピーチ、 リクルーティングディナーなど盛りだくさんだ。英気を養い、次の2週間に臨むことにした。
2004年10月16日
ロンドンのホテルにて
堀義人