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【日経コラム】オンライン教育がリアルな教育を超える時

投稿日:2017/05/31更新日:2019/04/09

5月中旬に開催した初めてのオンラインMBAプログラムの卒業式は、これまでのものとはまったく違うものだった。卒業する1期生30人近くのうち、シンガポールから来日した3人を含めて10人ほどがアカデミックガウンに身を包み、会場で参列していた。一方、パソコンの画面の向こうで「参列」している卒業生たちは、幼子を抱きながら参加するなど、オンラインプログラムならではのスタイルだった。

卒業証書授与の際、司会が卒業生の名前を読み上げた。「ハイ」と画面の向こうから力強い返事があり、学長の僕が「おめでとう」と声をかけた。充実感に満ちた表情に「オンライン教育には未来がある」と再認識した。

オンラインプログラムの構想は20年以上も前からあった。ブロードバンドの普及で実現した大規模公開オンライン講座「MOOCs(ムークス)」は一方通行で、MBA的な議論には適していなかった。最大30~40人を同時につなぐテレビ会議システムが開発され、技術的な問題がほぼ解決したと判断した2014年4月、オンライン講座を試験的に始めた。

学内では「まだ早いのではないか」という慎重な意見が支配的で、クラスを引き受ける講師がなかなか現れない。そこで学長の僕が最初の講師を務めることにした。科目は「企業家リーダーシップ」。1回3時間全6回の構成だ。

集まったのは12人。海外在住の日本人、出産したばかりで休職中の方、宮城県気仙沼市で復興支援に携わっている方などが含まれていた。教室に通うスタイルのコースには参加するのが難しい人たちばかりだった。講師を務めた僕も最初は戸惑った。通常は学生の前に立って議論を引っ張るが、オンラインでは座ったままパソコンの画面とカメラに向かって授業する。

オンラインの強みも実感した。発言したい人は画面に「挙手マーク」が表示され分かりやすい。大学院生が発言すると、その人の顔が画面いっぱいに映る。さらにチャット機能も使えるため、テキストベースで全員の意見が一目瞭然になる。グループ単位のディスカッションもできる。クラスの時間に参加できない場合は録画した動画を視聴できる。

授業後の懇親会もオンラインならではだ。通常なら近くの居酒屋でビールを片手に語り合うが、オンラインの場合は「エア乾杯」、つまり画面越しだ。意外にこれも楽しいものだ。

全6回のコースが終わった後、学生からは「リアルとほとんど変わらない」「オンラインの方がよい」と予想以上にポジティブな意見が返ってきた。そこで15年4月にはオンラインだけで卒業できる第1期生の受け入れを始めた。

シンガポールや米国、韓国などに在住する日本人のほか、国内でも育児で通学が難しい人、地方在住の人が30人以上集まってきた。全てのイベントやカリキュラムはオンラインで行う。僕も「学長セッション」という2時間の対話を1年次、2年次と2度実施した。

卒業式に遠方から来ていたオンライン生は答辞でこう語っていた。「父の会社を継ぎ、育児をしながら経営していた。オンラインMBAのニュースを聞き、私でも科学的な経営を学べる環境ができたと思い、受講を決めた」

「同窓生とイベントで会ったときは感動した。オンラインだからこそ、余計に強い絆が生まれていると感じた。今後はオンラインで初めて出会い、さらにリアルでも交流する『オンラインファースト』の時代がくるかもしれない」

卒業式後の懇親会で、オンライン生の2年間の思い出スライドが上映され、強い絆が結ばれているのが見て取れた。オンライン生がリアルな通学生の数を超えるときが来ることを予感した。今年9月からは英語のオンラインMBAプログラムが始まる。時空を超えて世界から人が集う。今からわくわくしている。

※この記事は日経産業新聞で2017年5月26日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

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