社会全体が平和で落ちついている時、まだ皆が浮かれている時、その時こそ、来るべき次の波を覚悟して真摯に生きることが大切ではないか――。イトーヨーカ堂の創業者である伊藤雅俊氏の著作、マイクロソフト幹部から社会起業家へと転身したジョン・ウッド氏の自叙伝を紹介する。1万冊読破を目標に掲げる田久保善彦による「タクボ文庫」第13回。
前回からの沖縄つながりで少し書きたいと思います。沖縄が生んだ芸術家に、ボクネン(名嘉睦稔)さんという人がいます。テレビなどにも時々出演されるのでご存知の方も多いかもしれませんね。ボクネンさんは基本的には版画家ですが、その作品が本当に素晴らしいのです。温かくて、温かくて。わたしも何年か前に、一目ぼれした小さい版画を購入し、自分の部屋に飾っています。ボクネンさんのホームページでは、オンラインミュージアムで作品を見ることもできます。
沖縄と東京にはボクネンさんの常設のギャラリーがあるのですが、先日東京で「島の旅」というテーマの期間中にのぞいてみました。花あり、海あり、シーサーありと、まさに沖縄一色。沖縄愛好家のわたしとしては、とても幸せな時間を過ごすことができました。沖縄好きの皆さん、是非一度のぞいてみてください。きっと気に入った作品に出会えるはずです。
それから、ボクネンさんは多彩な方でエッセイ『ボクネン―大自然の伝言(イアイ)を彫る』(サンマーク出版)も出されています。こちらもどうぞ。
『商いの道―経営の原点を考える』 伊藤雅俊・著 PHP研究所・刊 2001年
では、本の紹介を。イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊(セブン&アイ・ホールディングス名誉会長)氏の著作。「商いの道」という題名ですが、「商いをする人の道」または単に「人の道」という題名でも良かったのかもしれない、そんな読後感でした。
この本の最後はこんな言葉で締めくくられています。
会社にとって、一番大切な財産は、資産ではなく、売上げでもなく、実は人さまとの関係なのだと申し述べて、本書を締めくくりたいと思います。
商いをする上で、生きていく上で、一体何が大切なのかということが、ものすごく平易な言葉で、書かれています。さらっと読みすすめることもできますが、一つひとつ、「自分はどうかな?」と、問いを立てながら読むと、ものすごく時間がかかります。頭では分かっていても、実行することはきわめて難しいであろう事が沢山書かれているからだと思います。この本から何を学ぶかはまさに読み手次第だと思います。
是非、是非、お読みください。
心に残ったフレーズをいくつかご紹介します。
「お客さまとお取引を大切にする」「嘘をつかない」「感謝の心を忘れない」といった商いというよりも、人間としての基本を毎日毎日飽きずに繰り返してきただけと申し上げる意外にないのです。
社会全体が平和で落ちついている時、まだ皆が浮かれている時、その時こそ、来るべき次の波を覚悟して真摯に生きることが大切ではないかと思うのです。
商いだけでなく、もの作りの道でも、芸術の道でも、「人生に成功する早道を一つだけ挙げろ」と聞かれたら、私は、「どれだけ人間がすきか」ということを挙げます。
社是・信条を掲げていないと、商いの正しい道からそれてしまう恐れがあるという考えが、私の中にあるのです。社是・信条とは、常に「自分は何のために働いているのか?」という疑問に対する答えを与えてくれるものではないでしょうか?
『マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった』 ジョン・ウッド・著 矢羽野薫・訳 ランダムハウス講談社・刊 2007年
まず、このサイトをのぞいてみてください。
この本は、マイクロソフトの幹部をやめ、このRoom to Readを作ったジョン・ウッドという人の著作です。今回はこれだけで本のご紹介を終わってもよいぐらいですが、心に残ったフレーズをいくつかご紹介します。
ダライ・ラマは何かを与えれば、代わりに得るものがあると語る。-幸せだ。自分のお金で自分のために買い物ばかりしていれば、きりがない。取得は本物の幸せを生み出さない。だれよりも大きなボートもいちばん速い車も、けっして手に入れることはできず、物欲のサイクルの中を永遠に回りつづける。でも、自分より幸運でない人に何かを与えれば、心が温かくなって、世界をよりよくしたいという思いが刻み込まれる。
頭の片隅から声が聞こえた。「わかっているくせに。きみがいなくてもマイクロソフトが困るのは、せいぜい一ヶ月か二ヶ月のこと。すぐにだれかが穴を埋める。きみなど最初からいなかったみたいにね。でも、貧しい村に学校や図書館を建てる手助けを私用と思う人が、何千人もいると思うか?この仕事は誰もやっていない。きみが挑戦しなくてどうする
世界を変える手助けをするために自分の人生を少し変えてみようと思っているなら、僕の心からのアドバイスをひとつー考えることに時間をかけすぎず、飛び込んでみること
いまの自分以外になろうと望まず、完璧な自分であるように努めなさい
色々なことを考えさせられる本です。