キャンペーン終了まで

割引情報をチェック!

第9回 『福原義春の講演―変化の時代と人間の力―』ほか

投稿日:2008/03/07更新日:2019/04/09

伝統は革新の積み重ねがあって初めて生まれる――。資生堂名誉会長、福原義春氏のメッセージを味わう講演録集のほか、システム思考の要諦を分かりやすく解説した一冊などを紹介。1万冊読破を目標に掲げる田久保善彦による「タクボ文庫」第9回。

367takubo9

江戸東京博物館で開催されていた特別展「北斎-ヨーロッパを魅了した江戸の絵師-」を見に行ってきました。評論家の中には、歴史上最高の芸術家として北斎の名前を挙げる人もいると聞きましたが、圧倒的な才能と、作品量はまさに驚愕。

個人的には、『北斎漫画』といわれる、3900余の膨大な図版を収めたスケッチ画集が強烈に印象に残りました。「天才」というのは、こういうことをなしえる人のことを言うのか・・・と、しばらくその展示場所から動けなくなってしまいました。その後、北斎漫画を集めた本を購入したのは言うまでもありません(^^)。

前書きですが、北斎に関するオススメ入門書、『もっと知りたい葛飾北斎―生涯と作品』(永田生慈・監修 東京美術・刊)から、すばらしい言葉を。

私は6歳から物の形を写生する癖があり

50歳の頃から数々の図面を本格的に発表してきたが

70歳以前に描いたものは、実に取るに足らないものばかりであった

73歳で鳥獣虫魚や草木の何たるかを、いくらは悟ることができた

ゆえに(精進し続ければ)80歳でますます向上し

90歳になれば、その奥意を極めて

100歳までに妙技の域を超えるのではないか

110歳となれば一点一格が生きているようになることだろう

願わくば、長寿を司る神よ、私の言葉が偽りでないことを見ていてください

ちなみに、有名な赤富士などの浮世絵版画は北斎が70代の時の作品です。

『福原義春の講演―変化の時代と人間の力―』 福原義春・著 慶応義塾大学出版会・刊 2001年

資生堂の名誉会長でいらっしゃる福原義春氏の講演録をご紹介します。福原氏の書かれたものは多数読みましたが、心に残るフレーズが最も多かったのがこの本です。福原氏が様々なシーンで語られた講演録を集めたものとなっているため、リーダーシップ論から美しく年を重ねるヒントまで、内容は多岐にわたっています。全ての話を貫いているのは、副題にもある、「人間の力」ということになります。

人間の力(人間力)という言葉を最近よく耳にしますし、私自身も人間力を高めたいと思って生きています。直接、間接に考えさせられるフレーズが詰まっています。色々なことを“感じながら”読んでいただきたい1冊です。

いつものように、素晴らしいフレーズをご紹介します。

藤原先生は、ほんのちょっと考えられて、こういわれたのです。「現実と理想に距離があるのは当たり前です。理想に支えられた現実と、理想なき現実のあいだにはどれだけ大きな差があるかわからない」

もう一つ、バリ島には愛とか美という言葉がないといいます。愛とはいってみれば、“人をおもいやる気持ち”ですし、美とは“感動すること”という概念で言い表されると思うのですが、愛も美も社会とか、人を含む環境のなかに取り込まれていて、人に説明する概念そのものがないし、したがって言葉にする必要がないものだと思います。

経営というのは、人間のことも哲学のことも、経済の問題も法律の問題も、すべて統合したところにあるのです。

ネパール人のシェルパが登山の途中で急に立ち止まって「ここらでひと休みしよう」というのだそうです。限られた日程で先を急ぐ登山家たちのパーティは何をいっているのだと焦るわけですが、シェルパがいうには「私たちがあまんり早く登るから、魂がついてこられない。魂がやってくるまで待とう」と、そういって梃子でも動こうとしないというのです。

「伝統」というものは決してそれまでのやり方を守ることではなく、革新の積み重ねがあって初めて生まれるものであって、それらのつながったものが伝統であるということです。

『入門!システム思考』 枝廣淳子、内藤耕・著 講談社現代新書・刊

私がグロービス経営大学院で講師を担当している「クリティカル・シンキング?」、「クリティカル・シンキング?」という科目の中で、物事の因果関係を考えるというセッションがあります。そのコンセプトを非常にわかりやすく解説した本が今回ご紹介する1冊です。

ちなみに今回この本に出会ったきっかけは、昨年の10月期に大阪で「ビジネス定量分析」という科目を担当していた時に、感心するほどよく本を読まれる1人の学生の方が、この本の感想をクラスのメーリングリストにあげられたことでした。

システム思考は、独立した事象に目を奪われずに、各要素間の相互依存性、相互関連性に着目し、全体像とその動きをとらえる思考方法です。つまり、「原因→結果(原因)→結果・・・」という因果の全体像を把握しようという試みで、クリティカル・シンキングのクラスでも問題分析の手法として取り上げています。

システム思考またはシステムズシンキングの本は、難しい本が多く、とっつきにくいのが多いのですが、この本は本当にわかりやすく重要なことが書かれています。なぜ、システム思考が必要で、何が良いのかと。

ここで問題になるのが、ちょっとしたことでも何かやろうとすれば、問題に対する視点の数が非常に多いということである。そして一つの問題に対し、ある視点からとった正しいであろう行動の帰結と、他の視点からとった行動の帰結は異なっている。

日ごろ抱えている問題は、多くの場合、一つひとつの個別の状況や現象といった要素の中にあるのではなく、要素と要素の間や、様々な要素の組み合わせの中にあるのである。

システム思考の重要な特徴は、できごとを単独でとらえるのではなく、時間の経過に伴うパターンとしてとらえることにある。

こんな話に興味のある方は是非手に取ってみてください。それから、著者から読者への最後のメッセージもとても印象的です^^

システム思考七か条

1. 人や状況を責めない、自分を責めない

2. 出来事でなく、パターンを見る

3. 「このままのパターン」と「望ましいパターン」のギャップを見る

4. パターンを引き起こしている構造(ループ)を見る

5. 目の前だけではなく、全体像とつながりを見る

6. 働きかけられるポイントをいくつも考える

7. システムの力を利用する

  • 田久保 善彦

    グロービス経営大学院 副学長

    慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修了。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業、中央省庁(経済産業省、文部科学省他)、自治体などを中心に調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院及びグロービス・マネジメント・スクールにて企画・運営業務・研究等を行なう傍ら、グロービス経営大学院及び企業研修におけるリーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。経済同友会幹事、経済同友会教育問題委員会副委員長(2012年)、経済同友会教育改革委員会副委員長(2013年度)、ベンチャー企業社外取締役、顧問、NPO法人の理事等も務める。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』(ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる』、『グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略』、『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』、『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(東洋経済新報社)、『日本型「無私」の経営力』(光文社)、『21世紀日本のデザイン』(日本経済新聞社)、『MBAクリティカル・シンキングコミュニケーション編』、『日本の営業2010』『全予測環境&ビジネス』(以上ダイヤモンド社)、『東北発10人の新リーダー 復興にかける志』(河北新報出版センター)、訳書に「信念に生きる~ネルソン・マンデラの行動哲学」(英治出版)等がある。

サブスクリプション

学ぶ習慣が、
あなたを強くする

スキマ時間を使った動画学習で、効率的に仕事スキルをアップデート。

17,800本以上の
ビジネス動画が見放題

7日間の無料体験へ もっと詳細を見る

※ 期間内に自動更新を停止いただければ
料金は一切かかりません

利用者の97%以上から
好評価をいただきました

スマホを眺める5分
学びの時間に。

まずは7日間無料
体験してみよう!!

7日間の無料体験へ もっと詳細を見る

※ 期間内に自動更新を停止いただければ
料金は一切かかりません

新着記事

新着動画コース

10分以内の動画コース

再生回数の多い動画コース

コメントの多い動画コース