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ダボス会議2016まとめ ~ キーワードは「内向き」「漂流」「テクノロジーへの期待」

投稿日:2016/01/26更新日:2019/04/10

今年のダボス会議は、中東問題、ヨーロッパの移民問題、市場の激動などが起こる中開催された。今回ほど、世界の政治・経済が激動する中、失望と期待が交錯した印象を持つことは無かった。今回のダボス会議の僕のキーワードは、「内向き」「漂流」、そして「テクノロジーへの期待」だ。

1. 内向き

国際政治は、完全な内向き状態だ。ヨーロッパはヨーロッパのことしか語らない。中東は中東のことしか語らない。アメリカはアメリカのことしか語らない。特にアメリカは、ジョー・バイデン副大統領、アシュトン・カーター国防長官、ジョン・ケリー国務長官、そしてジェイコブ・ルー財務長官と4閣僚が揃う凄い陣容だった。だが、ダボスで最も語られていたのが、その場に不在のドナルド・トランプ氏だ。まさに内向きの象徴だ。

2. 漂流

各国が内向きの姿勢を示した結果、国際的な問題はリーダー不在となり漂流し続ける結果となった。一番大きな国際問題は、中東の国家破綻とISISなどの台頭やイラン-サウジアラビア、そしてヨーロッパの安定だ。

ヨーロッパは「学級崩壊」状態だ。問題児だったギリシャは改心してクラスに残ったが、いまだに不満タラタラ状態だ。従い、果たすべき役割を果たしていない。オランダは学級委員長だが、委員長が毎年代わるのでリーダーシップを発揮できない。フランスはテロ対策を含む内政で手いっぱいだ。影の番長であるドイツは、原理原則を主張しているが誰も付いてこない。この学級崩壊状態をリーダーたちの一員として解決すべき英国は、クラスから離脱するかどうかを検討中だ。

そこに、大量の転校生が入ってきた。だが、その大量の転校生の受け入れ問題については、クラス全体としては解決策が見つからない。その結果、学級崩壊はさらに加速し、自らが自らを守るための個別の政策(国境管理の導入)を始める。ヨーロッパはバラバラになっていく可能性がある。まさにリーダー不在で「漂流」しているのだ。

一方の中東は、学校そのものが壊れてしまい転校者が続出している状態だ。僕は、質問をしてみた。「誰が、どの様にすれば、このISISの問題が解決できますか?米欧の役割は?」。ビックリしたのは、誰も明確なビジョンを持っていないのだ。誰が何をすべきか。そして全体としてのビジョンが出てこない。

米欧は意図的に中東の問題点から目をそらし、アラブは自らの地域に起こっている問題に全く対応できていない。まさに「漂流」しているのだ。

中東の崩壊、ヨーロッパの不安定の結果、中国の経済問題を起因として、年初来マーケットが大揺れ状態となっている。これだけマーケットが揺れている中で、ダボス会議が開催されるのは、初めてのことだ。IMFのクリスティーヌ・ラガルド氏が明確に問題を指摘していた。

1) 中国の問題

3つの変遷: 輸出から国内、製造からサービス、投資から消費へと向かう途上だ。だが、実態は、輸出が無くなり、製造が弱くなり、投資が落ち込んでいるのだ。そう簡単に変遷とはいかないだろう。

2) 原油を含む資源価格の下落

その結果、オイルマネーの還流が起こり、資源国の経済が打撃を受けている

3) 中央銀行の非同期的な政策

米国の金利を上げたことによって、資金が新興国から先進国、特に米国に還流している。その結果、新興国経済の資金枯渇問題が発生し始めている。

まさに、風景が変わったのだ。今年のダボス会議では、日本についてはあまり語られることが無かったが、それはマイナスなイメージを伴っていない。中国はよく語られるが「問題」として出てくる場合が多い。

上記3つの問題のうち、中国問題について詳述しよう。今回ビックリしたのが、「中国の沈黙」だ。かつて中国は批判されたら事前に示しあわされた共通のレトリックで反論してきた。今回は、問題点を指摘されても、反論も解決策を提示することもしなかった。「沈黙」だ。それも、戦略的な沈黙ではなくて、「答えるのが怖いから沈黙している」印象を与えていた。

なぜ怖いかと言うと、間違ったことを言った場合の国内の批判、そして言ったことができなかった場合の世界の批判。双方が怖いからであろう。これも「内向き」と「漂流」を意味する。

原油問題も、「自国の原油さえ売れれば良い」という「内向き」の発想と、OPECなどの力の低下による「漂流」だ。

3. テクノロジーへの期待

一方、テクノロジーは、今回のメインテーマのごとく「第4次産業革命」に相応しく、激動と期待感で溢れていた。大企業が強い危機意識を持って変わろうとしていた。HP CEOのメグ・ホイットマンは、「スピード」を最重要課題として上げ、AlcoaのCEOは3DプリンティングとiOTによる製造プロセスの革命を説明する。GEは、「2020年までに世界のトップ10ソフトウエア企業へと変身する」と宣言するなど既存企業の危機意識と変革への意欲に溢れていた。

「内向き」「漂流」「テクノロジーへの期待」という流れの中で、リーダーに求められる資質も変わっていく。今後は、トップは顔を見せないとならない。トップは決して隠れてはいけない。隠れていると、たちまち不信感を招くからだ。リーダーにとっては、SNSで発信し交流することが重要な責務になってきた。

「内向き」で「漂流」する世界を変えていくのは、「テクノロジー」の知見を持ったリーダーとなるであろう。そう強く感じたダボス会議だった。
2016年1月25日
ダボスからの帰りの機内にて執筆
堀義人

  • 堀 義人

    グロービス経営大学院 学長/グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー

    京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事を経て、1992年株式会社グロービス、1996年グロービス・キャピタル設立。2006年グロービス経営大学院を開学。2008年に「G1サミット」を創設。2011年には復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げる。2016年に茨城ロボッツ、2019年に茨城放送オーナー就任。2022年にLuckyFesを立ち上げ、現在総合プロデューサーを務める。2024年よりBARKSオーナー、世界最大のPR会社の米国エデルマン社 社外取締役。

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