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第3回 あなたが首長への転身を考えるなら

投稿日:2007/06/13更新日:2019/04/09

フジテレビ報道記者を経て、弱冠31歳で逗子市長の役に就き、数々の実績を上げてきた長島一由氏が、官民比較の視点で、行政・政治の実態を赤裸々に語る「フジテレビ vs 逗子市役所」。第3回目となる今回は、世相を踏まえながら、選挙に打ち勝つアプローチを活写していきます。

Nagashima 3

浮動票が選挙の勝敗を分かつ時代に

" ここまで、行政の仕事の本質は、利益追求ではなく、ひとのしあわせの追求にあること。そして、行政のトップは、民間企業が行なう友好的買収のように、外部から乗り込み、マネジメントをガラリと変革することが可能であることを紹介してきた。これを受けて今回は、市議会議員になる方法や市議会議員の仕事について具体的に言及してみたい。

なぜ「市議会議員」なのか。それは前回にも説明したとおり、市議会議員や市の職員からアプローチすることが、市長への近道であるからだ。政治や行政に経験がなくても首長にいきなりなることはできるが、統計的には市議会議員(33.4%)、市の職員(29.11%)を経験してから市長になるケースが多い。

ただ、これには統計のマジックもある。市長選への立候補者のうち、市議会議員の占める割合が、もともと多いのだ。実際には、私の感触としては、多くの人に顔が売れている県議会レベルの議員から市長への転身を図ったほうが、当選確率は高いように思う。しかし、その県議会議員への入口は多くの場合、市議会議員であるため、市長を目指すのであれば、まずは市議会議員から政治の世界に足を踏み入れるのが近道であることに間違いはない。

さて、本題の選挙に勝つ方法論に移ろう。昨今の特徴は、浮動票で勝てる時代になったことに尽きる。浮動票とは、選挙で支持する政党・候補者の一定していない有権者の票を指す。

かつて、「ジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄)」のいわゆる3バンがなければ、選挙には勝てないと言われてきた。地盤は、選挙区内における後援会などの支持組織、看板は知名度、鞄は選挙資金のことだ。今でも、もちろん、これらを持つ人が選挙でアドバンテージを持つという実態はある。

しかし、これらの一つも持たなくても、選挙には勝てる。

私自身のケースでいうと、1998年12月の逗子市長選挙では、マスコミが撮影した、初当選のバンザイ写真の中に写っているひとの中で、私の名前「長島一由」を書いたのは、横にいる妻だけだった。支援者のほとんどは市外在住で、私自身も逗子市長となる1カ月半前までは、隣町となる鎌倉市議会の議員をしていたため投票要件を満たさず、自分自身の名前を書くことすらできなかったのだ。

浮動票で選挙に勝つ――。こうした現象は、逗子市長選挙だけでなく、神奈川県横須賀市、同・藤沢市、大阪府阪南市など、他の自治体でも見られた。ごく最近では、横浜市港南区の県議会議員選挙の選挙対策本部長を任されたが、この選挙では、当選のバンザイのときに選挙事務所にいた約30人の関係者のうち、候補者の「塩坂源一郎」という名前を書いた人は、本人も含めてなんとゼロだった。塩坂氏は1万9693票を獲得して県議会議員に当選したが、選挙事務所で詳らかとなった事実は、2万票近い得票のほとんどが浮動票だったことを示す象徴的なものだった。

これが意味することは、「三バンがなくても選挙に勝てる」という以上に、とりわけ重要なのは、選挙区は生まれ育ったところや、今、住んでいるところなどに拘束されないということだ。

選挙は、どれほど本人に資質があっても、原則的には、現職議員の方が知名度や地盤の面で有利だ。つまり、どんなに選挙に強いひとでも、相手がそれ以上に強ければなかなか勝てないし、選挙が弱い人でも、相手がそれ以上に弱ければ勝つ。選挙は、得票数を競う以上、絶対評価ではなく、相対評価だということだ。

だから、現職が複数、引退したり、汚職で逮捕された、あるいは行政の失政によって市政に対する市民の不満が高まっているときなどの場合は、新規参入がしやすくなる。"

選挙区は出身地に縛られず自由に選んだほうが良い

"選挙区の情勢分析によって、新規参入がしやすい地域かどうか。自由に選挙区を選ぶ場合は、選挙区選び、このこと自体が大切な選挙戦術になる。

普通の発想では、愛郷心や土地勘に加えて、小・中・高校などの同級生、親戚など、地縁、血縁を頼りに、1票でも、10票でも、票を獲得できる見込みを立てるだろう。

もちろん、選挙の1票は大切で、現実に、1票差で落選というケースや、選挙によっては同数のため、抽選で当選者を決めるという場面をテレビで目にすることもある。

しかし、政令市の市議会議員なら1万票前後、人口5万レベルの市ならば1000票程度は獲得しなければならない選挙で、もともと知っている人の票なんて、クラスの人気者や地域のプチ有名人でさえ、たかが知れているものだ。

しかも、知り合いが全員投票所に足を運んでくれる保障も、まして自分の名前を書いてくれると自動的に考えるのは、勝手な見込みに過ぎない。

その土地で生まれ育ったひとでなければ、地域のことを考えられないということはなく、むしろ逆に、「そのまんま東現象」の引き金となった談合問題などでは、よそ者の方が、しがらみがなくて改革できるチャンスが多いと受け止められることもある。

極端な話、どうしても政治家になりたければ、全国どこからでも選挙には出馬できる、ということをまず念頭におくことである。

ただし、例えば村議会議員は約100票で当選でき、選挙の際に法務局に預ける供託金も不要になるが、小さくなりすぎると、個々人のつながりが強くなるため、全部浮動票で当選することは逆に難しくなる。それも例外があって、東京都・小笠原の村議会議員選挙は、長期滞在の若者や駐屯する自衛隊員など、そこにも浮動票があって、地元の商工会長が落選するくらい選挙が読みにくいケースもある。

(※2003年の村議会議員選挙で121票で落選した元商工会長だが、2007年の選挙では237票を獲得してトップ当選した。このように得票が変動する難しい選挙もある)

ところで、これもあまり知られていないが、議員報酬には人口比によって大きな幅がある。

人口約6万人の逗子市ならば、だいたい年収800万円程度で、報酬とは別に支給される政務調査費は年間約24万円。人口が約362万人の横浜市議では、年収が約1500万円で、別途ひとりあたり毎月55万円(年間660万円)の政務調査費が支給される。大体において、人口30万人を超える自治体であれば、市議の年収は本給だけで約1000万円を超えるところが多いようだ。

なお、首長になると政務調査費はないが、報酬はだいたい市議の倍程度になる。

これは職責の違いだけでなく、拘束時間が全く違うからだ。市議会議員は、年間約70日~80日の本会議や委員会など、議会開会中しか、市役所に拘束されないが、市長は職員と違って服務時間の規定はないものの、事実上、職員と同じように、月曜日から金曜日まで、役所の開庁時間は拘束される。

さらに、土日のイベントへの出席や、災害時の対応など、365日24時間拘束される。

そもそも政治の世界に足を踏み入れようとすること自体で、お金をもうけることはできないと腹をくくる必要があるが、選挙に出馬をするかどうかの相談を受ける際に、必ずといってよいほど待遇面を聞かれるので、ここでは説明した。

次回も引き続き、選挙の舞台裏についてご紹介します。"

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