「知のトライアスロン! ボードゲームの3種競技『トライボーディアン選手権』誕生!」
とのタイトルがマイナビの記事として掲載された。
「知のトライアスロン?」「トライボーディアン?」「聞いたこと無いよ。何それ?」と疑問に思う方も多いだろう。それは、普通の感覚である。なぜならば、その2つとも今年僕が創りだした言葉だからだ。その経緯を説明しよう。
僕が、日本棋院の理事として100周年ビジョンを描いていた時に、囲碁クエストが話題にあがった。囲碁クエストは、9路盤や13路盤をスマホで手軽に無料で対戦できると言うのだ。囲碁の普及で課題になっていたのが、「19路盤では時間がかかり過ぎるし、なかなか囲碁を楽しむハードルが高くて、手軽に取り掛かれない」という点だった。
まさに、その2つを解決するのが、スマホの9路盤囲碁アプリだと考えて、100周年ビジョン委員会の政光順二さんにお願いして、囲碁クエストの開発者である棚瀬寧さんをご紹介頂いた。
棚瀬さんと政光さんと一緒にグロービスで面談しているときに、次の通り、アドバイスを頂いた。
「囲碁のユーザーを増やす一番いい方法は、将棋のライトユーザーを取り込むことだ。将棋のライトユーザーは、囲碁の10倍はいる。将棋のユーザーが囲碁を初めて打つと、囲碁の面白さに引き込まれて行く。実際に私も将棋ファンだったが、囲碁を始めたら最近はもっぱら囲碁ばかりだ」
と言うのだ。確かに、僕も高校・大学と将棋ばかり打っていたが、40歳の時に囲碁を始めたら、もっぱら囲碁ばかりだ。さらに、
「将棋は人工知能に人類が勝てないところまで来たが、囲碁はまだまだだ。感覚的には、将棋の複雑性は、囲碁の9路盤と同じぐらいだ」と言うのだ。そして、
「囲碁クエスト、将棋クエスト、リバーシ大戦を使った三種競技を企画している。協力してもらえないか」と持ちかけられた。これは、何としてでもやろうと決めて、即座に「やります」と答えて、主催者のマイナビの編集部を紹介してもらい、メールでやりとりを始めた。僕は、ネーミングが大事だと思っていた。そこで、いろんなアイデアを考え始めた。3種競技だから「トライ」をどうしても使いたかった。
ゲームの3種競技だから「トライゲーマー」。ゲーマーっぽいからちょっと違うかな?ボードだから「トライボーダー」。ボーダーと言うと、スノーボードを思いだすから、違う。そこで、末尾をトライアスロンと合わせるために、ボードとかけて「トライボーディアン」という名称に行きついた。
最初は、言い慣れないが、「トライボーディアン」「トライボーディアン」と何度か繰り返すと妙にしっくりしてきた。そこで、早速商標を登録して、マイナビさんに「この名称で、グロービスが冠でスポンサーしますよ。その際のコピーは、「知のトライアスロン! ボードゲームの3種競技『トライボーディアン選手権』誕生!」で行きましょう」と伝えた。
グロービスの冠がつくことも決まり、日程は、2015年8月1日と定まった。
まずは、告知だ。将棋連盟が早々と了承し、告知してくれた。
知のトライアスロン!ボードゲームの3種競技『トライボーディアン』誕生!!
日本棋院からもOKをもらえた。
知のトライアスロン!ボードゲームの3種競技『トライボーディアン』誕生!!
将棋連盟と囲碁の日本棋院双方のバックアップをもらえたのだ。凄いことだ。そして、プロの参加OKとなった。プロ棋士がアマチュアと戦うことは基本的には許可されていないことだ。だが、将棋連盟そして日本棋院、双方でOKとなった。
そして、当日を迎えた。応募数は当初の想定を大幅に上回った。プロ棋士は、囲碁界からは、三村智保棋士、大橋拓文棋士が参戦した。将棋界からは、上野裕和五段、田中悠一五段が参加し、さらにオセロ界の世界ランカー、佐谷哲さんと山川高志さんも参戦。まさに各界のトッププレイヤーが覇権を競う大会となった。
僕が冒頭の挨拶をすることになっていたので、トライアスロンのことを調べてみた。Wikipediaには、以下の通り記載があった。
「1974年9月25日、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴで、世界初のトライアスロン大会が実施された。46人の選手が出場した。1977年、ハワイで、アメリカ海兵隊員達が宴会の席上、「マラソン・遠泳・サイクルロードレースのどれが最も過酷か」と議論、比較できず、「この際まとめてやってみよう」と、翌1978年、同地でアイアンマン・トライアスロンが行われた。」
そこで、僕の挨拶は、「本日記念すべき第1回目のトライボーディアン選手権が開催されます。50年前にマラソン、遠泳、ロードレースのどれが過酷かを競い、トライアスロンが始まった。2015年、囲碁、将棋、オセロ(リバーシ)のどれが頭脳ゲームとして相応しいかを競う知のトライアスロン、トライボーディアンが始まります。
トライアスロンは、当初は46人の選手が出場したが、現在では2000万人もの競技人口がいます。同じようにトライボーディアンは、当初64人で始まりますが、競技人口は数百万人に到達するでしょう。その記念すべき第1回目に参加された皆さんとともに、大いに本日は、楽しみたいと思います。」
簡単にアンケートをとったところ、もっぱら囲碁が5割、もっぱら将棋が4割、そしてもっぱらオセロ(リバーシ)が1割という感じだった。まさに、異業種の格闘技という感じだ。
そして、キックオフだ。僕も参戦したが、囲碁で負けても、将棋で挽回しようと思い、将棋で負けてもオセロ(リバーシ)で挽回しようと頑張った。3回戦が終わり、全ての種目で最低限1勝を得ることはできた。
やってみてわかったことは、とても楽しいということだ。負けてもあまり悔しく無く、ニコニコしながら次を狙えた。検討会も和気あいあいとしている。普段会わない人ばかりなので、新鮮だ。
途中で、万波奈穂プロ棋士や稲葉禄子さんが飛び入りで挨拶をされた。そして、5回戦まで終えて、結果発表があった。
優勝は、栗生直樹さんで、準優勝は石川輝さんだった。優勝者は、将棋の奨励会出身で大学囲碁部の二刀流だ。準優勝は、東大の囲碁部兼リバーシの大会出場実績がある方だ。まさに、日本の頭脳が結集した感じだった。僕は、散々な結果だったが、とても楽しめた。
数多くの人が和気あいあいとしているのが印象的だった。その模様は、プロ棋士や主催者のマイナビさんの記事からも読み取れる。
第1回 グロービス・トライボーディアン選手権を振り返ってみる(マイナビ)
これから、僕は、トライボーディアン協会の設立、オンライン型トライボーディアン、そして第2回トライボーディアン選手権の企画・準備にとりかかりたいと思う。
知のトライアスロンであるトライボーディアンの歴史の1ページ目が開かれたばかりだ。どこまで広がるかは、僕らの意思にかかっている。
2015年8月13日
山小屋にて執筆
堀義人