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「廃県置道」②中央政府から地方へ権限と人材を移管せよ!

投稿日:2014/05/23更新日:2019/04/09

初稿執筆日:2014年5月23日
第二稿執筆日:2016年4月14日

 「100の行動」では、都道府県を廃止し、日本に新たな12の道(10の「道」と2の特別区)を置き、20万~40万人からなる300程度の基礎自治体に再編する「廃県置道」による日本の新しい国の形を提言した。

 今の日本の構造的な問題は、権限と財源の多くを国が持ち、地方は交付金・補助金依存の行政であるため、地方が主体的にダイナミックな政策を展開できない点だ。

 そのために、地方が適切な投資によって収入を増やす努力や、費用を削減して将来に備える施策など行われずに、補助金を頼りに費用対効果を考えない無駄な行政が延々と続いてきた。

 実際、各地で活躍する知事と話をしても、「経済振興策を講じようとしても財源も権限もないため、企業誘致くらいしか手が無い」「財源はほとんど交付金依存で、支出の大半は年金など社会保障費が占めている。高齢化の進展は財源の硬直化をさらに進めており、県としての自由度などほとんどない」といった嘆きの声が聞こえてくる。

 この現状を打破するには、我が国は「廃県置道」を断行し、地方政府を再編して行政地域・規模を拡大した上で、中央政府が持つ財源と権限を人材とともに地方政府に移管することが必要不可欠だ。

 十分な規模と財源・権限・人材を持った地方政府は、経済の強化や政治・行政の効率化などの政策を、主体的に展開することが可能になる。一方の中央政府は、外交・防衛などの専門分野に特化し、小さく強い政府に変わることができるのだ。

 今回の行動では、国、道政府、基礎自治体の役割分担を整理した上で、国から地方への権限委譲に関して論じることとする。

1. 中央政府・道・基礎自治体の役割分担をゼロベースで見直せ!

 道州制の導入にあたっては、現状の国と都道府県、市町村の役割分担の実態に縛られることなく、ゼロベースで中央政府・道政府・基礎自治体が担うべき業務を見直すことが必要だ。

 道州制における基本的な考え方は、「近接性の原則」・「補完性の原則」である。すなわち、市民に最も近接している基礎自治体が行政サービス全般を担当し(近接性の原則)、それを補完するために、広域による施策や効率的・合理的な業務を道政府が担当する(補完性の原則)。当然、道政府レベルでは戦略的な意思決定も求められる。そして、道政府でも担うことが困難な対外政策や防衛政策、通貨政策は中央政府が担当するという形態だ。

 基礎自治体への行政の権限集約には、一定の規模化が必要であり、そのために基礎自治体は20万~30万人規模の300強の市町村へ合併・集約されることが基本だ。基礎自治体への権限集約により、これまで都道府県が担ってきた役割が縮小し、道州制による広域行政が可能となり、新たな道政府は、中規模国家レベルの経済運営・行政運営を、グローバルな視点で進めることができるようになるわけだ。

 これによって、これまで様々な政治的・歴史的経緯によって重複してきた国、都道府県、市町村の行政を「重複型」から、「分割型」に改める。国から地方政府への直接・間接の関与を撤廃したうえで、効率性が担保された地方政府のガバナンスを確立するのだ(地方政府の議会のあり方は、100の行動71<基礎自治体議会は夜間土日開催の日当制を!道議会は、責任ある分権国家の経営を!>」で詳述する)。国の関与が無くなれば、地方政府の政策の透明性も向上し、意思決定の自由度も高まり、対外的な説明責任も強くなる。

 三重県の鈴木英敬知事は、次の通りコメントしている。「主権は国民にあり、国民自らができないことを基礎自治体に権限移譲し、基礎自治体でできないことを広域自治体に権限委譲し、広域自治体でできないことを国がやる、というのが本来の分権である。しかし、今は制度設計がそうなっておらず、国からの分権という形になっていることが残念である」

 だからこそ、「国からの分権」ではない、廃県置道が重要になる。では、次に中央政府、道政府、基礎自治体の具体的な役割分担を論じていきたい。

2. 基礎自治体による行政サービス、道政府による戦略的意思決定、中央政府による世界との競争・協調!

 以上の考え方に基づく、国と地方の具体的な役割分担は以下の通りだ。

「100の行動」廃県置道における国と地方の役割分担

(1)「地方にできるものは地方に」近接性原則と補完性原則により、以下の役割分担を基本とする。

①基礎自治体は行政全般を担当する

②道政府は広域行政が合理的である業務に関してスケールメリットを活かして担当する

③中央政府は、外交、通商、防衛、国境管理、国家戦略の策定、全国的に統-が必要な基準の制定・維持等に限定する

(2)「重複型から分割型へ」国と地方の重複型行政による無責任体制を徹底排除し、分割型行政で地方政府が自己責任で政策を遂行できるようにする。

政府の道州制ビジョン懇談会が2008年に取りまとめた中間報告においても、国の役割を大幅に縮小し、道州や基礎自治体の役割が充実強化される役割分担を公表している。だが、廃県置道「100の行動」では、さらに踏み込んで大胆に地方政府に権限を委譲している。

 「外交・防衛・安保・治安」分野に関しては、消防や救急を基礎自治体が担当する。警察は現状でも都道府県単位であるため、広域防災と併せて道政府の担当とした。ただし、国家安全保障やテロ・サイバー対策などは中央政府の任務であり、それと併せて、外交、防衛、国家安全保障は中央政府の本質的な任務であろう。

 「国土・交通・社会資本整備」分野は、ほぼ現在の国土交通省の所管分野である。この分野は道路や河川、国土保全など、広域行政に適した行政分野であるため、道政府の担当となる。都市計画や住宅・公園政策などは近接性の原則から基礎自治体に担当させる。

 「経済・労働」分野は、財務省、金融庁、日銀、経済産業省、総務省(旧郵政省)、農林水産省、厚生労働省(旧労働省)などの官庁の所管分野を想定している。地域経済全般、農政全般などを近接性の原則から基礎自治体の担当とした上で、広域行政が合理的な経済政策、雇用労働政策を道政府の担当とした。道政府は経済政策においては中程度の国家レベルでグローバルに政策を推進することとなる。

 財務省、金融庁、日銀の分野の通貨発行やマクロ経済政策、金利政策は中央政府の任務であろう。加えて、国家としてのエネルギー安全保障、電波管理は中央政府の役割として残すべきだと考えている。

 「社会保障」分野は、現在の厚生労働省(旧厚生省)所管業務のイメージだ。この分野はすべて地方政府に移管させる。年金、医療保険、医療制度、介護保険、生活保護などは、国家としてある程度のガイドラインを設けたうえで、地域ごとに制度設計の自由度を与え、人口構成や戦略的優先順位に応じた社会保障のレベルを決める権限を地方政府に持たせるべきだと考えている。社会保障分野のうち、年金、医療保険、介護保険などの社会保険に関してはスケールメリットを働かせることが合理的であるため、基礎自治体ではなく、道政府の担当とする。その他の生活保護、老人福祉、保育等は基礎自治体の担当となる。財源に関しては次回詳述するが、社会保障全般を担う新たな地方政府には、消費税が税源として移管される。地方政府は、高い税率で高い水準の社会保障を維持するか、経済活性化のために税率を低くして社会保障の水準を下げるか等の判断を自らの責任で行うことが出来るようになる。「道」をまたいだ人の移動、例えば引っ越しなどによって人が移動する際には、道政府間で制度のやり取りをする必要があるが、国民ID・共通番号制度によって対応可能であろう。

 「環境政策」分野に関しては、基本的に基礎自治体が担当し、大気汚染や水資源対策など広域行政が必要な環境政策のみを、道政府が担う。地球規模の環境政策に関しては中央政府の担当となる。

 「教育・科学技術・文化」分野に関しては、幼稚園、小中高校までは基礎自治体の担当にすることを提案する。大学に関しては、現在の国立大学も含めて道政府に移管する。東大偏重と言われる現状もこれによって改善されるだろう。その結果、各道の中核となる大学が生まれ(近畿道=京大、九州道=九大、東北道=東北大、北関東道=筑波大学、南関東道=横浜国大等)、地域ごとに学力・研究を競い合う、健全な競争が生まれよう。

 中央政府には、宇宙開発、国家戦略としての科学技術研究開発、文化政策やクールジャパン、国家としての教育の基本政策などを残すことになる。

 そして、これまで100の行動において民営化を提言してきた空港、港湾等は、道政府の責任で、民営化を行うことを想定している。

 以上が中央政府と地方政府の業務に関する「100の行動」の私案である。具体的な議論が大いに進むことを期待する。

3. 廃県置道と同時に中央政府の省庁再編・地方への人材移動を実施せよ!

 既述のように、「廃県置道」の最大のポイントは、基礎自治体や道政府を規模化し強化して、権限人材委譲により、地方政府の意思決定の自由度を上げ、地域を活性化させて、日本の競争力を強化することである。一方、その表裏として、地方政府に出来る業務はすべて、有能な人材とともに地方政府に移管することで、中央政府の業務と人材を外交防衛などに限定し、中央政府を小さくて強い政府に変えることでもある。

 地方政府に国の業務を大幅に移管する事で、国会議員が地元の陳情に明け暮れるような現状を改善し、中央政府の政治家と官僚は、国家戦略、外交、防衛などの業務に専念し、日本の競争力を強化することができるのである。

 したがって、道州制の導入に伴って、必然的に中央政府の省庁再編、人材移動が同時に行われなければならない。前述したような抜本的な地方政府への業務や人材の移管が行われれば、新しい役割分担に基づいて、中央省庁の機能や必要人員は大幅に縮小される。

 総務省関係に関しては、旧自治省の地方行政部分はそもそも道州制による地方自治の確立でその必要性がなくなり、旧郵政省業務を含むその他の部分は電波行政を除いて地方政府の役割となる。厚生労働省、農林水産省、国土交通省などの実業官庁に関しては、基本的に全て地方政府に移管される。文部科学省、経済産業省、環境省などの行政分野に関しても、一部を除き全て地方政府に移管されることになろう。現在、地方ごとにある国の省庁の出先機関も当然全廃し、地方政府に移管されなければならない。

 国の役割は、世界との競争を視野に、様々な分野の司令塔的役割になる。国家戦略や安全保障、更には司令塔的役割に限定することで、国家として対応すべき課題に対し、高い問題解決能力をもつ優れた政治家と官僚による小さくて強い政府を造ることができるのだ。したがって、道州制導入と同時に中央省庁再編・地方への人材の移動を断行しなければならない。

 このように「中央政府・道・基礎自治体の役割分担をゼロベースで見直せ!」「基礎自治体による行政サービス、道政府による戦略的意思決定、中央政府による世界との競争・協調!」「廃県置道と同時に中央政府の省庁再編・地方への人材移動を実施せよ!」と論じて来た。

 次の廃県置道③では、いよいよ財源つまり税収のあり方について論じることになろう。筆者は、この廃県置道の行動については、ワクワクしながら執筆している。明らかにこの廃県置道が実現すると、日本が地方から活性化されると思えるからだ。そのために一番重要なのは、財源となるお金、つまり税収面での役割分担である。その点を、次の行動にて詳述する予定だ。 


 

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