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第5回 『木のいのち 木のこころ』ほか

投稿日:2007/12/03更新日:2019/04/09

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第5回目は書店、いわゆる本屋さんについて少し書いてみようと思います。

Amazonなどのオンライン書店で買い物をするのが世の中で当たり前になったことにより、本屋さんの数がだいぶ減ってきているという話を日経新聞で読んだことがあります。

ただその記事には、一方で売り場面積が増えている、という話も紹介されていました。つまり、書店も二極化し、小規模店が減少、大規模店が増えているということなのでしょう。

私は東京に住んでいるので、大型の書店へのアクセスは非常によく、いろいろなところに足を運びます。人と待ち合わせをするときなどは、30分ぐらい前に待ち合わせ場所におもむき、近くのできるだけ大きな書店に行き、ブラブラしています。

さて、一口に「大型書店」といってもいろいろなものがあります。代表的なところでは、神田の三省堂書店、新宿の紀伊國屋書店、八重洲の八重洲ブックセンター、同じく東京駅近くでは丸善などでしょうか。そんななかで最近の私のお気に入りは、新宿の三越の建物に入っているジュンク堂書店です。多くの本が、表紙が見えるよう平積みなどにして並べられており、欲しい本を探しやすい・見つけやすいのです。それが、個人的にはなんとも心地よく、多くの発見があるので、ついいろいろな本に手を伸ばしてしまいます。

感性の問題ですから、そういうスタイルは好きではないという人もいるでしょうね。なので、是非、ご自身の感性に合う、お気に入りの書店を探していただきたいと思います。

いずれにせよ、行きつけの大型の本屋さんを持つと、今までまったく気に留めたこともない分野の本が目に入ってきたり、それが新たな世界への扉を開くきっかけとなる可能性が増えると思います。

ちなみにジュンク堂書店について、もう一つ書くと、ちょっとしたコーナーに椅子があり、少し落ち着いて本の内容を吟味できることも気に入っています。新宿にアクセスのよい方は、足を運んでみてください。

では、今回の本の紹介を・・・。

『木のいのち 木のこころ』 西岡常一 草思社・刊

法隆寺金堂の復元や法輪寺三重塔、薬師寺金堂、同・西塔などの再建を棟梁として手掛けた西岡常一氏の著書。いわゆる宮大工の方の手による本です。

本を開くと、まず西岡氏のなんともいえない、よい表情をされた大きな顔写真からはじまります。中身はというと、西岡氏が語ったことをライターさんが文章に起こすという方法で作られているため、独特の語り口がそのまま残され、温かさの感じられる本になっています。温かみを感じながら読み進めた読後感は、「生きていくうえで大切なことが沢山書かれた本」というもの。氏の人間観、自然観、仕事観などに是非、触れていただきたいと思います。いわく・・・

「ものや技術は教えて教われるものやおまへんのや。その人が覚えたいと思って、やる気にさせて、個性に合わせて伸びるように助けてやるんですな。」

「大工は木の性質、癖を生かして耐用年数一杯は持たせな自然の命の無駄遣いですわ。まして癖があるからというて、その木をはじいて使わんというのは、もってのほかでんな。人間と同じです。癖は生かして使うてやるのは勤めですわ」

「私ら檜を使って塔を造るときは、少なくても三百年後の姿を思い浮かべて造っていますのや。三百年後には設計図どおりの姿になるやろうと思って、考えて隅木をいれてますのや」

「なにしろ私らの仕事は、材料が自然に育てられた木でしょう。それも千年以上も命を永らえてきた木ですわ。その千年以上も永らえてきた木を使って、自然の土地の上に建物を建てるんですな。私の仕事なんてちっぽけなもんでっせ。この自然の流れの中で、木を伐って建物に変えるのやから、できるだけ命を永くせな、私の意味がありませんわな。それが仕事ですわ。だから自然を無視して仕事はできません。大袈裟なようですが、大工にも自然観が必要なんです」

やはり、一つのことを長年続けられ、それを極められた方の言葉は重いです。一つひとつ考えさせられてしまいますが、まずは手に取り、日々の生活で忘れがちな大切なことを「感じて」みてください。

この本の最後のくだりです。

「時代に生かさせてもらっているんですから、自分のできる精一杯のことをするのが勤めですわ」

『指導者の条件』 松下幸之助・著 PHP研究所・刊

"数多あるリーダーシップの本から今回はこの本をお勧めしたいと思います。言わずもがな、日本を代表する経営者であった松下幸之助氏の著著です。個人的にはこの本は3回は読んだでしょうか。今回のこの書評を書くにあたり、再度手に取りましたが、いろいろな色の線が引かれていました(^^)。

指導者という言葉に少し違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的にリーダーという言葉に置き換えて読んでいただければよいのではないかと思います。

この本には、見開きで一つのトピックスについて、松下幸之助氏が指導者にとって大切であると考えていたことが、さまざまな事例や事象を引用しながら、極めて平易な言葉で102カ条にわたって記されています。手元にある本のほとんどのページに線が引かれているのですが、特に印象に残っているところは、

「あるがままにみとめる」

「謙虚である」

「使命感を持つ」

「自問自答」

「人間観を持つ」

・・・・といったところです。この印象も読んだときに自分が置かれている状況でころころ変わるのですが。

強烈な説得力とわかりやすさゆえに、短時間で読み流してしまいそうになりますが、一つひとつ、今、自分はどの程度できているのか?またはやろうとしているのか?という問いを立てながら読んだとき、ある意味、非常に厳しい本ということができるかもしれません。

ご本人も、あとがきの最後にこんなことを書かれています。

「世の各層の指導者の人びとは、まずこの素直な心になることをみずから念じ、これを養い高めていくことが大事ではないかと思います。素直な心こそ、指導者にとって、またこれから指導者たらんとする人びとにとって、さらには人間として一番大切な基本の心がまえだといえましょう。私自身もそういうことを考えつつ、日々素直な心になるようにつとめ、自分なりに本書の一条一条について勉強し、少しでもそれを生かしていければと思っております。」

「素直な心」。以前、松下資料館に見学に行ったときも、ご本人直筆の書が大きな額に入れられ、飾られていました。見て、読んで、感じるだけではなく、少しでも、素直な心を育んでいきたいと思います。"

『理科系の作文技術』 木下是雄・著 中央公論新社・刊

わかりやすい文章を書きたい、説得力のある文章を書きたいという想いを持っているビジネスパーソンは多いと思います。そんな方に是非、読んでいただきたいのがこの本です。1981年に初版が出て以来、20年以上にわたり版を重ねている、「日本語を書く考え方、やり方を示した」名著です。

私は大学院に在籍していたときに初めてこの本を手にしました。修士論文を書くときに何度も読み返しました。そして、前職の三菱総合研究所という会社の新人研修で同じ本が配られ、驚いたことを今でも覚えています。以来、グロービスの仕事においても文章を書くことは多いですが、1〜2年に一度は読み直すようにしています。

この本の最大の特徴は、文章を書くときのテクニックはもとより、基本的な姿勢、つまり心得が書かれているということに尽きるでしょう。いわく・・・

理科系の仕事の文書を書くときの心得は、(このときの「理科系の仕事の文書」という言葉は、ビジネス文書と読み換えていただいてよいと私は思います)

●内容の精選 必要なことは洩れなく記述し、必要でないことは一つも書かないのが文章を書くときの第一原則である。

●事実と意見の区別 仕事の文書を書くときには、事実と意見(判断)との区別を明確にすることがとくに重要である

●記述の順序 一つは文章ぜんたいが論理的な順序にしたがって組み立てられていなければならないということだ。もう一つは相手(読者)はまっさきに何を知りたがるのか、情報をどういう順序にならべれば読者の期待にそえるのか、ということに対する配慮だ

●明快・簡潔な文章

(a)一文を書くたびに、その表現が一義的に読めるかどうか −ほかの意味にとられる心配はないか− を吟味すること

(b)はっきり言えることはスパリと言い切り、ぼやかした表現(・・・・といったふうな、月曜日ぐらいに、・・・・ではないかと思われる、等々)を避けること

(c)できるだけ普通の用語、日常用語を使い、またなるべく短い文章で構成すること

きわめて当たり前の話ですが、実践するとなるとなかなか難しいですね。これを実践していくための心構え、方法論などが沢山書かれていますが、印象に残り、何度も線を引いたフレーズにはこんなものもあります。

「不要な言葉を一語でも削ろうと努力するうちに、言いたいことが明確に浮き彫りになってくるのである」

「私はこの章を『はっきり言い切る姿勢』と題した。事実、私がここまで書いてきたのは、もっぱらものを書き、または言うときの姿勢―精神的な態度、心の持ち方―についての議論であって、具体的・文章技術的な裏打ちが欠けている。これは、私の考えでは、この問題に関するかぎり、必要なのは基本的な姿勢を確立することであって、<はっきり言い切る>ための特別な表現技術の勉強がいるわけではないからである。明確に言う、はっきり書く、ぼやかした表現を逃げずに明言する−−にはたしかに覚悟がいる。しかし、「そうすべきだ」という理由に得心がいき、踏ん張りがつきさえすれば、あとは実行力の問題であろう」

是非ぜひ、ご一読あれ。

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