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食べても食べても太らない甘いケーキは存在するか—ザ・チョイス

投稿日:2009/04/03更新日:2019/04/09

シリーズ130万部のベストセラーの魅力とは

著名なベストセラーシリーズの最新作。その要諦を日常の事柄をモデルに翻案してみよう。

ダイエット中である甘党のあなたは、日々ものすごく我慢を重ねながら甘美な誘惑と闘い、週に一度だけならと言い訳して大好きなケーキを1個だけ食べる。食べた瞬間はえも言われない満足感に浸ることができる。だが、食べ終わった後には、来週までケーキを食べられないのかと惜しく寂しい気持ちになる。

そんな健気な人に、「食べても食べても太らないケーキがある。なぜそれを食べないのですか」と問い掛けたとしよう。果たして、どんな反応を示すだろうか。

「そんなものあるわけない」から始まり、ありとあらゆるネガティブなフィードバックが返ってくるだろう。でも、それも無理からぬことだ。彼らにとってはとても、場合によってはもっとも切実なことなのだから。

しかし、常識外れだとはいえ、そんなケーキは絶対にないと言い切れるだろうか。あるかもしれないとはどうして考えないのだろうか。そして実際、そのようなケーキはいくらでもある。

そう訴えかけるのが『ザ・ゴール』シリーズ『ザ・チョイス』の著者、ゴールドラット博士だ。中には「物理的にありえない、専門家を呼んでこい」と言い出す人もいるかもしれないが、どういたしまして、ゴールドラット博士は、物理学がご専門だ。

当たり前のことで皆を幸せに導く不思議な理論

博士は、誰もが対立を超えてハッピーになれる、真のソリューションが限りなくあることを力説する。そして「制約理論」と呼ばれ、各国でMBA科目として教えられている生産管理の理論から始まった、会計、思考方法、プロジェクトマネジメントを包括した非常にロジカルな考え方をベースに証明してしまう。ネガティブな思い込みを排し、極めて常識的なことを一つ一つ組み合わせれば、例えば売上高を4倍に、利益はそれ以上に伸びると提案し、実現してしまうことも可能なのだ。そんな博士の手法が魔術的に見えるのも無理はない。

しかしその“魔術”を“秘術”にするつもりは博士にはないようだ。時には論文で、時には講演で、時には本作のように誰もが読める小説の形で誰もが再現可能な形で「科学的」に教えてくれる。

博士はサイエンスでみんなを幸福にしたいのだという。確かにそんなケーキが食べられて、自分で作れるならば、幸せな気持ちにならないほうがどうかしている。ベストセラーになるのも当然なのだ。

みんなが幸せになる契機。そのことを博士がシリーズ中で最も直接的に語っているのがこの『ザ・チョイス』である。世界中を魅了してやまない制約理論の真髄に触れられる、最適の書ともいえよう。

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