年末年始や新年度には落ち着いてこの1年を振り返り、次の1年の目標を考えたいものですね。しかし、目標と言ってもピンキリ。良い目標もあれば、残念ながら「書くだけムダ」という目標もあります。ではどういう目標が良い目標なのでしょうか。
ここで、「SMART」というキーワードが浮かんだ勉強熱心な人もいるかもしれません。SMARTとは、S:Specific-具体的に/M:Measurable-測定可能な/A:Achievable-達成可能な/R:Related-経営目標に即した/T:Time-bound-時間制約を意識した、の頭文字を取ったものです。もちろん、これらのキーワードも大事ですが、本コラムではそもそもの「目標の考え方」に着目して、2つのことをみなさんにお伝えしたいと思います。
1.環境変化を理解しよう
みなさんは目標を立てる時、何から考え始めるでしょうか。やらなきゃいけないこと、自分がやりたいこと、もしくは「何から考える」といったことも意識せず、直感的に頭に思い浮かんだことを目標に置き換えたりしてはいないでしょうか。
ここでお伝えしたいことは、そういったことに着手する前に、まず私たちを取り巻く環境について冷静に考えてみる、ということです。
言うまでもなく私たちを取り巻く環境は刻一刻と変化しています。特に最近はAIやテクノロジーの変化に伴い、仕事が変わる、もしくは仕事そのものがなくなってしまう、といった話は枚挙に暇がありません。一方で、広い視野で考えてみれば、私たちの労働人生というのは間違いなく長期化する前提で制度設計などがなされようとしています(この辺のことは、経済産業省の若手官僚のレポート「不安な個人、立ちすくむ国家」も参考までにご覧ください)。最近よく「人生100年時代」という言葉を聞きますが、変化が激しくなる中で、長期的に働く人生になるのは必至なのです。
こうした変化に対する考察を外して、これからの目標は立てられないでしょう。今の時代だからこそ、まずはこれからの世の中を考え、自分を取り巻く環境がどう変わっていくのか、変わっていこうとしているのか、ということを冷静に考えてみましょう。
どれだけ変化の緩い業界であっても、ここ数年の時間軸の中で、求められる能力には何らかの変化の兆しはあるはずです。その変化の兆しを今のうちに目標に取りこんでみましょう。「この環境下において、私が今達成すべきことは何なのか」という問いを胸に、今自分が考えるべき目標を立てることに意識を向けてみてください。これが1つ目のアドバイスです。
2.目標を構造化しよう
次に大切なポイントは、「目標の構造化」です。例えば、「毎週10km走る」という目標を立てた人がいるとしましょう。その目標はどういう構造になっているのでしょうか。
おそらく、最終的に「健康な状態で過ごしたい」というような「状態の目標」が頭にあったはずです。そして、そのためには10kg痩せている必要がある。そのために、カロリーを節制し、定期的に運動をする、という行動に思考が落ちていったわけです。つまり、目指すべき状態があり、その状態がさらに具体化され、その状態を実現するために行動が目標化される、という構造があるわけです。
この上位概念から下位概念に至るまでの「目標の構造」を理解しておく必要があります。なぜならば、上位概念である達成状態こそが重要なことであり、下位概念である行動目標は必ずしも重要ではないからです。
この達成目標と行動目標という構造を理解していないと、ややもすると行動目標を最優先に考えてしまい、達成目標が追いてけぼりになってしまいます。そう、いわゆる「手段の目的化」です。
行動目標なんて、状況に応じて柔軟に変えてしまえばいいんです。この事例でいうならば、本当に健康であることが目標であるならば、毎週10kmということは毎週5kmでもいいし、走らなくてもいいかもしれないのです。
3.思考のトレーニングを始めてみよう
さて、ここまで環境変化の理解と、構造化の理解、という2つのことを書きましたが、実際に頭を動かしてみると、これはそう簡単なことではないことに気づくはずです。環境変化を理解するって意外に大変です。いろいろ変化をしているのは分かるけど、そもそもどういう観点で変化を捉えたら良いか分からない。環境変化を認識することの重要性は分かっていたとしても、そこから思考が停止してしまう。2点目の構造化も、「分解」というスキルや、「言葉の抽象度を揃える」という思考技術が不可欠です。
つまり、分かっているけど、それ以上手が動かずに、結局は中途半端な目標になってしまう人が多いのです。これを解消するためには、「トレーニング」しかありません。そこで、この2つのアドバイスを踏まえた目標設定がうまく実践できそうにない人には、最後のアドバイスとして「思考のトレーニングを始めてみよう」という点を加えたいと思います。
こういった変化を理解することや、正しく脳みそを働かせるためのスキルは、本を読んだだけでは定着しません。一定のプレッシャーのもとに、アウトプットを出して、フィードバックをもらう。この反復を繰り返した者のみが獲得できるものなのです。
もちろん、身の回りにそういったトレーニングをOJTとしてやってくれる上司がいれば最高ですが、そうでない方には、グロービスの「クリティカル・シンキング」という科目を検討してみてはどうでしょうか。
本や動画では体験できない徹底的なトレーニングを通じて、3ヵ月で見違えるだけのスキルが手に入るはずです。そのスキルを手に入れながら、同時並行で目標を考えても遅くはないかも知れません。
「人生100年時代」において、一番大切なことは、学び続けること。学びを止めた瞬間、変化に追われる立場になります。ぜひ学びの第一歩を踏み出してみましょう。