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堀義人のダボス会議2017速報(4)完 ダボスで聞くトランプ就任演説、暗雲が世界を覆い始める

投稿日:2017/01/21更新日:2019/04/09

ダボス会議5日目、最終日の様子です。ダボスの地で、ドナルド・トランプ氏の米国大統領就任式を視ました。やはり、選挙キャンペーン中とほとんど変わらない演説内容でした。保護主義的、孤立主義的、内向きの政策が世界にどのような悪影響を及ぼすのか心配です。日本はいろいろな意味で、もっと強くなる必要がある、そのために尽力したいと決意を新たにしました。

ダボス会議5日目。今日は珍しく朝食ミーティングが入っていない。そこで、8時15分からのメディテーションのセッションに参加することにした。最近は、欧米でもマインドフルネスが注目されている。会場は満杯でした。

瞑想後に、「Global Science Outlook」のセッションに参加。たまには、地政学的な議題から離れて、全く違う分野を学びたいですよね。モデレータは、雑誌ネイチャーの編集長。パネリストは、CERNの理事長、米国の国立科学財団(NSF)と米国の民間企業と韓国KAISTの学長だ。ここに理研の松本理事長等が入ると日本の存在感が上がるのだけど・・・。

「アジアの安全保障の枠組み」(A New Security Framework for Asia)というホットなテーマに参加。日本からは、船橋洋一さんが参加している。トランプ政権の誕生、北朝鮮、中国。とても重要なテーマだ。

アジアのセッションで、韓国の教授が歴史問題に触れたので、僕は会場から手を挙げて意見を述べた上で、次の通り質問してみた。「日韓は一昨年に慰安婦問題を最終かつ不可逆的に解決すると合意した。だが、釜山の日本領事館の真ん前に銅像が建てられた。合意は最終的かつ不可逆的だったはずだ。なぜ韓国は未来を見られないのか?」

韓国の教授の答えは衝撃的だった。「朴大統領が、一貫して反日政策をとっていたのに、急遽覆して合意したので、あの合意には正当性が無い。日本政府から謝罪もない。韓国には、感情的な意見が多い」。僕が、顔を横に振っているのを見て、「考えが違うのは理解している」と付け加えられていた。

オープンな場で、アジアのパネリストは中国に対して強い意見を言わない。痺れを切らしたのか、聴衆から日本人が多く発言した。JICAの北岡伸一理事長総裁と国際協力銀行の前田匡史さんと僕とだ。やはり、世界の舞台では日本人も主張しないといけない。この場で国際世論が作られていくからだ。

ランチは、メイン会場の外で日本の戦略アドバイザリー会合が開催された。ジョージ・ソロス氏、FTのマーティン・ウルフ氏、キショール・マブバニ氏、チャタムハウス(英王立国際問題研究所)のロビン・二ブレット氏など錚々たる方々をお招きした。日本側は、黒田東彦日銀総裁、竹中平蔵さん、北岡伸一JICA理事長、佐藤康博 みずほフィナンシャルグループCEO、中西宏明 日立製作所会長等だ。

ジャパンランチは、チャタムハウス・ルールで運営されているので、写真を撮ることを控えることにした。詳細も書くことができない。世界の動きの中の日本の役割について感じたことは、最後にまとめて書くことにしたい。

シャトルに乗り、メイン会場へ。これから僕が登壇するセッションが始まる。テーマは、「Addressing Identity through Positive Narratives」だ。最近Narrativeという言葉をよく聞く。コミュニケーションの重要性が大きくなっているのだろう。

今日のダボスは、晴れていてとても気持ちが良い。太陽が眩しいぐらいだ。写真の下に見えるのが、メイン会場のコングレスセンターだ。本日でダボス会議が終わる。僕の登壇は、最後のセッションの1つ前だ。できるだけ多く発言するように心がけたい。

セッションのコントリビュータの仲間に、Yo-Yo Maさんがいた。自撮りでパチリしました。(^^)

僕が、登壇したセッションが終わりました。登壇とは言っても、グループ討議のリーダーシップを発揮して発言しただけだった。難しいテーマだったけど、僕自身学びが多かったです。社会的断絶や不信感を乗り越えるには、笑顔・愛・希望というポジティブな気持ちで、相手の心情への配慮をすることが大事だと思いました。

ダボス会議最終日の最後のセッションは、共同議長によるクロージングセッションだ。冒頭のみ参加して、すぐにホテルに戻り、トランプ氏の就任式をテレビで視ることにする。

トランプ大統領の就任演説を、ダボスのホテルで視聴した。印象は、選挙演説とほとんど変わらない内容で、極めてナショナリスト的なスピーチだった。「アメリカ・ファースト」「バイ・アメリカン、ハイアー・アメリカン」。同盟国に追加負担を求め、保護主義的、孤立主義的、内向きの政策が行われるであろう。

演説を聞いた後にホテルを後にして、夜8時からのミュージカルソワレに参加した。

ソワレに参加しながら、多くの人にドナルド・トランプ氏のスピーチに対する感想を聞いて回った。ニューヨークから来られた女性は、テレビで視ていて悲しくて涙が出てきたと言う。「何も建設的な話しはなかった。残念だ」と言うのだ。

ダボスでの反応を要約すると、「保護主義的政策と安全保障関係が心配だ」である。就任演説が選挙演説からほとんど変わっていない。即座にTPPからの離脱を表明し、NAFTAの見直しも示唆した。

まさに、激動のダボス会議を象徴する終わり方だった。今回のダボス会議では明るさが影を潜め、世界を暗雲が覆い始めていた。米欧における社会の断絶の拡大、英国のEU離脱、EUの分裂危機。自由貿易の危機と保護主義の台頭。メディアやリーダーへの信頼感の崩壊。気候変動対策への手詰まり感。雇用を奪う等テクノロジーの負の側面への不安感。アジアでは、中国の存在感が際立っていたが、韓国は迷走し、東南アジアの存在感が低下していた。そして、70年間かけて築いてきた世界秩序が崩壊し始めたことを実感した。背筋が寒くなる感覚を抱いた。

今回の統一テーマは、「Responsive and Responsible Leadership」だった。つまり、「対応する責任あるリーダーシップ」だ。そのようなリーダーが世界に欠如しているから、あえてこのテーマを設定したのだろう。

残念ながら、テーマ通りには世界は動かないだろう。トランプ大統領の就任演説は、米国民に対してのみ発せられたものだった。米国の孤立化・保護主義化を象徴しており、世界的問題を解決する意思は全く感じられなかった。いやむしろ、世界の問題解決よりも、「アメリカ・ファースト」という利己的で内向きなものだった。

今年のダボス会議で感じた諸問題が、来年までにポジティブに解決されている保証は無い。むしろ来年に向けてさらに悪化する可能性がある。「対応する責任あるリーダーシップ」を、英国も、独仏中心の欧州諸国も、アメリカも、中国も、ロシアも自ら進んで担う意思は無く、むしろ国内問題を解決することのみに終始することになるだろう。国際的な問題を解決する意思は、残念ながら感じられなかった。

日本は、先進諸国の中で、社会的にも政治的にも最も安定し、経済も好調である。珍しく模範的な立場にいる。だが、今後は米国の保護主義政策への対応、同盟関係の見直しへの対応などに追われることになるであろう。

今後、日本は経済的にも、安全保障的にも自立し、強くならなければならないであろう。独自の自由貿易体制を作り、同盟関係を維持しながらも独自の安全保障政策を打ち出さなければならなくなるだろう。日本は、強烈に強い意志で、自立し、強くなることを意識しなければならないだろう。

これにて、ダボス会議2017年の全てのプログラムが終了した。今から荷物をまとめて、ダボスの地を離れる準備をする。来年は、どういうダボス会議になるだろうか。僕は世界問題を解決するような力はまだまだ全く無い。だけど、少なくとも日本が今年よりも来年さらに良くなっていくために、微力ながらも全力を尽くすことはできる。

経営大学院で人材を育成し、ベンチャーキャピタルを通して新たな産業を創出し、オピニオンリーダーとして社会を啓蒙し、そしてG1仲間と共に確実な行動を起こすことはできる。「100の行動」という明確な日本のビジョンも描かれている。明るく、前向きに、目の前の諸問題を解決し、良い社会を築いていく努力をしたい。

来年のダボス会議で、「日本が世界の希望である」と言われるように、やるべきことを一歩一歩確実に仲間と共に実行していきたい。

2017年1月20日
暗雲垂れ込めるダボスにて
堀義人

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