堀義人のダボス会議2017速報(1) Brexitやトランプ氏への不安蔓延、「対話」の重要性と「日本」の役割を痛感 

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ダボス会議(正式名称はWorld Economic Forum Annual Meeting)に参加しています。2004年の初参加以来10回目になりました。英国のEU離脱や米国トランプ大統領の誕生など想定外の事態が起こるVUCA(Volatile, Uncertain, Complex, Ambiguous)時代において、世界のリーダーたちがどのような議論を行うのか、その様子を速報的にお伝えしていきます。まずは、1日目と2日目をまとめて。

1月16日(月)、ダボス会議2017が始まった。正式には、17日(火)からだが、今日はWEF(World Economic Forum)のクラウス・シュワブさんのオープニング・スピーチがあった。今年のテーマは、「Responsive and Responsible Leadership」だ。

シュワブさんによれば、今年のダボス会議のテーマは4つ。
(1) グローバル経済の再活性化。インクルーシブ・グロースが肝要だ
(2) 資本市場の改良・改善
(3) 第4次産業革命
(4) 国際的協調の強化・再創造

SankeiBizが「気候変動が主要議題に」と書いていたが、そうした気配は感じられない。

この夜、インドネシアの大手財閥リッポー・グループのジェームズ・リアディCEOと共同開催した「アジアンフレンドディナー」でも、話題の中心はVUCA時代におけるアジアのリーダーシップだった。欧米が揺れ動く中、アジアの果たすべき役割と期待が大きくなっているのを実感する。写真はアジアンフレンドディナーのスナップ。

1月17日、ダボス会議2日目。朝5時半に起きて、メール返信、ツイッター・FB・ニューズピックス等のルーチンを終えた。さあて今から着替えて、朝7時からの朝食会に向かうことにしよう。今年は例年以上に寒い。僕にとっては10回目のダボス会議。頑張って日本の存在感を上げていきたい。(^^)/

7時からエデルマン社の朝食会に参加。毎年、エデルマンの「信頼度調査」が、ダボス会議全体のムードを作る。毎年、リチャード・エデルマンCEOが調査報告を発表し(写真)、パネルディスカッションが行われる。僕も、過去2回ほどパネリストとして登壇した。

エデルマン氏の要旨は以下の通り。

組織に対する信頼度は、NGO、ビジネス、政府、メディアの順番。メディアが最も信頼されていない。毎年落ちている。

ポジション的には、リーダー特にCEOへの信頼が落ちている。社会は、リーダーに対して不満を持っている。信頼度の低下は予期しないほどだ。

リーダーは、権威を持っているが、影響力を失っている。影響力は、友達や家族などの横のシェアの方が強い。縦のコミュニケーションが効かなくなっている。

Brexitとトランプ旋風で、システム全体が崩壊していることが証明された。全世界的にリーダーへの不満が強い。

メディアよりも“検索”の方が信頼されている。リーダーよりも“普通の人々”の方が信頼されている。“社員”がCEOよりも数倍信頼されている。コントロールの時代は終わった。全てシェアしなければならない。人々は、国際化やイノベーションも嫌っている。

市民活動的なオープンなプラットフォームを作るのが重要だ。不満や問題を全てシェアして、みんなで解決するのが最も良い方法だ。対話が必要だ。ビジネスが果たす役割が多い。

今年ほど悲観的なトーンの年はない・・・。対話、Dialogueがとても重要だ。

パネルディスカッションが始まった。フィナンシャル・タイムズのジュリアン・テート氏の「調査結果は衝撃的だ」という危機感を持ったコメントが皮切り。パネリストは、ドイツ銀行、UN、ペイパル、INSEAD、キャンベルスープ。各界代表。

僕は、手を上げて1つ質問してみた。「リーダーの信頼度が落ちていることの簡単な解決策がある。それは、オープンプラットフォームであるソーシャルメディアなどでリーダーが対話を進めることだ。ソーシャルメディアのフォロワー数が社会での信頼度と関係があるのでは?フォロワーが多いと言うのは信頼されている証拠で、影響力も高くなる。リーダー自身の直接的な対話が必要なのでは?」。

残念なことに、答えてくれたパネリストはソーシャルメディアを使っておらず、「オールドファッションかもしれないけど」と前置きしつつ、ソーシャルメディアに否定的だった。これはダメだと思った。この姿勢では、世界のリーダーと社会との断絶は埋まらないなと思った。対話しないとね。

コングレスセンターに戻って、セッションに参加している。最初のセッションは、「Strategic Update: The Future of Energy」。IEA長官などが登壇中。

エネルギーセッションに参加すると理想論と現実論とのぶつかり合い、CO2削減を政治的に活用するパフォーマンス等が錯綜していることを感じる。「今、中国・インドの70%以上、ドイツの45%以上が石炭火力という現実を直視しなければならない」という発言が、現実を示している。

ツイッターを見ていたらMeg Whitmanのツイッターが流れてきた。ダボス会議に参加する米国人リーダーの感覚がよくわかる発言だ。ダボス会議に参加している米国人のうち9割がトランプ氏を支持していない感じだ。やはり、社会とリーダーとの断絶があると思う。対話が必要だ。

ダボス会議に史上初めて中国国家主席が登場した。メディアに囲まれた習近平氏と奥様、そして壇上にはクラウス・シュワブ会長。これからスイス大統領の挨拶、その後、習近平主席が話す予定。

スイス大統領のスピーチ。プロンプターを使っているのが、よくわかる。右側に向いたら英語でスピーチして、左側に向くとドイツ語に変わった。おそらく違う言語でそれぞれ書かれているのであろうか。

習近平主席のダボス会議でのスピーチが始まった。(米国の孤立化・保護主義化が進む中で)経済の国際化の重要性を示し、中国が国際化のリーダーシップをとっている姿勢を示したい意図が見える。

習近平主席のスピーチは、プロンプターの棒読みで、概念的すぎて具体性を欠き、しかも情熱を感じられないものだった。周りを見てもスマホをいじっている人が多い。隣の人は眠っていた・・・。

中国が、保護主義を批判し、自由貿易を訴える。気候変動問題にもコミットして、環境問題を解決し、貧困問題を解決しインクルーシブ・グロースを実現すると宣言する。だが、拍手は主に中国人参加者が中心で、まばらだ。

米国のドナルド・トランプ氏、中国の習近平氏、そしてロシアのウラジーミル・プーチン氏が新たな世界秩序を作っていくのだろうか。何が普遍的な価値になるのだろうか。背筋が寒くなる思いだ。日本が、安倍総理がしっかりしないといけない、と強い危機意識を持った。

シュワブ代表が、習近平主席のスピーチを振り返り、感想を話し始められた。とても異例な対応だ。次について感銘を受けた、と話された。
(1) 中国が経済発展を続けること
(2) グローバリゼーションを続けること
質疑応答は無しだ。

習近平氏のスピーチは、冗長で、棒読みで、感情が入っていなかった。聴衆は中国人や国内なのであろう。外国人をConvinceする意図は感じられなかった。今まで李克強が来ていたダボスに国家主席が来るのは、李克強氏が9月の党大会で退任させるからではないかと、中国メディアは噂していた。

会場にて、水戸一高の後輩で、茨城ロボッツのスポンサーでもあるエニグモCEOの須田将啓さんと妻とでパチリ。妻は4年ぶり2回目のダボス会議参加となる。

ダボス会議2日目14時からは、AI(人工知能)のセッションだ。IBMのジニ・ロメッティCEO、マイクロソフトのサーティヤ・ナデラCEO、MITメディアラボのジョイ伊藤さん、そして起業家のロン・ガットマン氏だ。ワクワクするパネリストだ。

ダボスの夕暮れの景色。少し部屋で休んで、夕方からの5つのアポに備える。

ダボス会議の2日目の夜。5つのアポが入っている。食事の前に、ハーバードとWSJのイベントに顔を出して、僕が共同議長を務めるWEF主催ディナーへ(写真)。その後、ワインフォーラムとフォーブズのイベントに参加した。

ダボス会議は、昼間はセッションや会合が集中し、夜はネットワーキングイベントが主流となる。参加者がそれぞれ面白いので、ちょっとした会話がとても有意義になる。特に、今回は米国と英国の有識者の意見を意識して聞いているが、予想通りBrexitやトランプ氏に落胆する声がほとんどだ。ただ、米国・英国のリーダーの姿勢が断絶の原因になったとも言えるのだ。ある意味自業自得であると思えてくる。

トランプ氏は、ダボスでは予想通り評判が悪い。就任式を今週末に控えているのでトランプ陣営は当然来ていない。唯一来ているのが、トランプ氏の側近の1人であるアンソニー・スカラムチ氏だ。彼も残念ながら評判が良くなかった。世界の最大のリスクが、米国大統領であるトランプ氏になってきた。

日本では、欧米で起こっている断絶を決して起こさせてはならない。対話が今ほど必要な時は無いと思う。

世界の不確実性が高まっている。特に、米中関係が波乱要因である。日本の役割がとても重要になると痛感している。

明日(1月18日)の朝は7時過ぎから朝食会だ。明日もスケジュールがギッシリだ。もう寝ることにしよう。ダボス会議はまだ始まったばかり。体調管理をしっかりとしないとね。(^^)

2017年1月17日
ダボスにて
堀義人

堀義人のダボス会議2017速報(2) 「第二次世界大戦後に築きあげてきた世界秩序が崩壊し始めている」
堀義人のダボス会議2017速報(3) 世界を牽引するリーダーの不在を痛感
堀義人のダボス会議2017速報(4)完 ダボスで聞くトランプ就任演説、暗雲が世界を覆い始める

 

【昨年のダボス会議2016報告はこちら】
ダボス会議2016年~1)9回目のダボス会議、オーストリアからスイス入り
ダボス会議2016年~2)ダボスでは僕ら世代が日本代表だ!
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ダボス会議2016まとめ ~ キーワードは「内向き」「漂流」「テクノロジーへの期待」

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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