サキコーポレーション 秋山氏×オリックス宮内氏 「既得権益を打ち破る -ドリルの刃が岩盤を打ち破るために必要なこと」 

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堀義人: いよいよ最後のセッションとなった。テーマは規制改革。皆さんは今日、安倍総理が今年のG1サミットに送ったビデオメッセージをご覧になったと思う。「一人ひとりが岩盤を打ち破るドリルとなり規制を打破することができたら、それほど心強いことはない」と。「岩盤を打ち破るドリル」というのは今年のダボス会議で総理が使った言葉だ。それと「女性の活躍推進」の2つが、ダボスで世界の人々が明確に受け取ったメッセージと言える。来年、もしかしたら総理が再びダボスへ行ったとき、「何も進んでいないじゃないか」と言われてはいけない。そこで規制改革に向けて僕らに何ができるかを考えていこう。(00:52)

今日は宮内さんにもお越しいただけたこと、嬉しく思う。以前、経済同友会で規制改革会議における奮闘のお話を宮内さんから聞く機会があったのだけれど、大変な努力を重ねていらして、まさに無私の精神だった。自分の会社に関係なく、経済そして日本のため、政治の世界に入って戦いながら改革に挑んできた。一方、秋山さんは産業競争力会議のメンバーとして、農業をはじめとしたさまざまな規制改革に挑んでおられる。本セッションはそんな御二方の経験と、会場にいらっしゃる皆様の声を基に進めたい。まずは宮内さんにお伺いしたい。そもそも「岩盤」とは何なのだろう。(01:52)

33182 宮内 義彦氏

宮内義彦氏(以下、敬称略): 日本にもいろいろな規制がある。国会で法律ができるたび、それが国民を縛る側面が非常に多いわけだ。近代社会は規制のなかで存在している。で、そのなかで経済活動を行うことに関し、「ここに規制がある」「ここは自由だ」といった議論が規制改革会議で行われている。拝見するに私は会場のなかで圧倒的に高齢だ。歳をとるとすぐ古い話をするので申し訳ないが、政府で規制改革会議がつくられたのは1994年だったと記憶している。細川元首相がその形をつくられた。ただ、実際にそれが動き出したのは次の村山内閣から。1995年だったと思う。(03:13)

そこから日本でも「規制だらけだ。なんとかしなければ」と、規制改革が政治アジェンダになっていった。私もそこから10数年関わることになるわけだけれど、当初の話は簡単だった。たとえば、「世界中どこでも自分の電話機を持てるのに、なぜ日本ではNTTに借りないとダメなのか」といった議論だったからだ。細川さんの問題意識も、たとえば「熊本県でバスの停留所を30メートル動かすのに運輸省の許可がいる。こんなバカバカしいことはない」という類の話が多かった。(04:34)

また、産業界にもいわゆる業法が数多くあった。それで、「誰々しか参入できない」「価格や需給調整は官庁が行う」といったふうに、業法に守られた経済活動がたくさんあったわけだ。それを我々は潰していった。これは、言わば民間事業のなかにあった規制だ。各種行政指導をはじめ、行政が日々手を染める部分が多かったのだけれど、「そういうものは時代に合わない」ということで外していった。(05:21)

そういう作業のなかで最後に出てきたのが「岩盤」という言葉で表現されるようになった。これは日本の社会システムや経済制度になってしまっている部分だ。だから、「そんなものは経済の問題じゃないじゃないか」と。「日本社会のシステムだから規制改革会議がいじるのはおかしい」「既にできあがったものだから、そんなものを動かす気はない」という話になってしまう。(06:11)

たとえば、今も問題になっているけれども、電力は完全に地域独占だ。この制度を自由化しようとしても、てんで動かず、「日本の制度だから動かしちゃいけない」という話になる。医療もそうだ。「非効率な制度がずいぶんある。もっと競争原理を取り入れたら、さらに高度な医療を実現できる」と言っても、「国民皆保険をいじることになるから絶対にダメ」と。教育についても、「文部省が大学から小学校まで整然と司っているのに、そこで規制改革会議が何か言うのはおかしい」となる。(06:46)

それで、もうテコでも動かないものが「岩盤」と呼ばれるようになった。従って、問題は日本の社会システムにある。典型的な例が農業だ。聖域とされ、なかなか触れることができない。今は民間競争で規制の壁がどんどん低くなっている一方、そうした社会制度的なものが厳然と残っている状態だ。これを変えるべきだと言っても岩盤が動かない。それがここ10年ほどの動向になる。(07:36)

で、小泉内閣の終了とともに私も規制改革会議の仕事を離れたわけだけれど、その後も「昔話をしてくれ」とのことで、時折こういうところに出させていただいている。ただ、そこで「最近どうなったんだ?」と聞くと、私としては昔話をしたつもりが今とまったく一緒で(会場笑)、昔話にならない。「当時からほとんど動いていない」と、今日まで格闘している方々に聞く。やはり今お話ししたような問題意識で変えていかないかぎり、日本の経済効率は絶対に上がらない。経済効率が上がらなければ日本の成長はない。従って、その岩盤をなんとかしようという安倍内閣のスローガンは素晴らしいと思う。内容についてはまた後ほどお話をさせていただきたい。(08:21)

堀: 秋山さんにも伺ってみたい。やはり昔話から変わっていないのだろうか。(09:37)

33183 秋山 咲恵氏

秋山咲恵氏(以下、敬称略): 両面あるように思う。まず、「おっしゃる通りです」という部分をお話ししたい。宮内さんは大先輩かつ神様のような方で、私自身は2年前に民間議員として産業競争力会議に参加させていただいた。そこで、構造改革や規制改革を進める1つのツールとして、竹中(平蔵氏:慶應義塾大学教授)先生が「国家戦略特区をぜひつくろう」という提唱をなさったわけだ。そこで、竹中先生に「お前行ってこい」と言われ、新しく立ち上がった国家戦略特区のワーキンググループに参加させていただいた。そこから国家戦略特区の制度設計と、初期メニューの規制改革項目について各省庁とセッションをやらせていただいた次第になる。(09:47)

だから経験値は本当に少ないけれども、まずはその経験から申し上げたい。私は現在、「こういう規制があるのでこういうふうに変えてはどうか」と、いろいろな項目について各省庁とセッションを行っている。ただ、そこで今リアルに話していることと、10年前またはそれ以前の、「昔こんな議論があってね」という当時の規制改革会議の議事録などに書いてあることが同じ。「あれ? 昨日喋ったことがここにも」と(笑)。そんな世界だと分かった。私自身が岩盤という言葉を意識したのは、それが最初だ。(10:47)

それともう1つ。リアルな体験から岩盤規制というものを実感したことがある。たとえば農業には農業生産法人という大変厳しい要件の法人があり、その法人でなければ農地を所有することができない。また、Aさんの農地をBさんに譲る、あるいは別の用途に変更する場合、農業委員会という組織の許可が必要になる。この農業委員会の意思決定が、たとえば新たな民間参入や農地のさらなる活用、あるいは農地の集約化・大規模化を進めるうえでボトルネックになっている。そこで、「それを見直しませんか」という話を農水省の方にしたとき、目の前にいらした官僚の方が激怒なさった。仕事で怒鳴られるという経験は私も久しぶりだったけれど(会場笑)、とにかく顔を真っ赤にして怒る。何を怒ってらっしゃるかというと、「農業委員会の委員は選挙で選ばれた人だ。その人たちが間違った意思決定をしているとでも言うのか」と。それは選挙で選ばれた国会議員の仕事を疑うのと同じことで、大変無礼であるとおっしゃる。そんなふうに叱られて、「あ、これが岩盤規制なのか」と(会場笑)、驚いた経験がある。(11:36)

ただ、この話にはオチがある。その議論をしたのが去年の6月前後。で、この手の話は各省庁セッションでいろいろあるけれど、農業分野に関しては当時の担当大臣や副大臣、あるいは官邸を含む政務側から政治的リーダーシップが発揮された。それで、先ほどお話しした農水省さんも、いつの間にか改革に協力的となって提案を受け入れてくださるようになった。まさに宮内さんがおっしゃっていた通りだ。これは単に法律を書き換えるというテクニカルな問題ではない。システムや価値観、あるいは長らく続いて習慣になったようなものを変えていくためには、やはり政治のリーダーシップが不可欠だと感じる。その意味で、安倍内閣のやる気は非常に高いと思う。(13:32)

堀: 岩盤の正体が見えてきたように思う。それは経済・社会システムであり、テコでも動かないと。当然、その岩盤によって利益を得る政治家や官僚、あるいは企業があるのだろう。それが変わることで彼らの存在が危ぶまれ、新たな参入によって既得権益が奪われると。しかし、僕は「省庁の数だけビッグインダストリーが眠っている」と、よく言っている。たとえば文科省の周りには教育インダストリーが、財務省の周りには金融インダストリーが眠っている。規制に守られている領域は弱い。そこに参入すれば勝ちやすいということもあり、たとえばヤマト運輸さんが参入したりしているわけだ。あるいは銀行業にコンシューマーファイナンスや商工ファイナンスが入っている。民間が規制に守られた業界に入っていくことで改革が次々進んでいくのも分かると思う。では、岩盤と言われる規制の改革でどんな成功事例があったのかを伺いたい。(14:40)

宮内: たくさんあると思う。情報通信の世界は規制改革で様変わりした。もし抵抗にあってそのまま止まっていたら、今日の情報通信産業となるまでにはさらに何年もかかっていたと思う。または金融部門。お金は世界中で流れているから、妙な規制をしていると日本だけ置いていかれる。この金融分野は橋本内閣時代、「規制改革会議でなく内閣がビッグバンをやるんだ」と、故・橋本元総理が率先して大きく自由化された。それに乗じて我々のほうでも課題だったものを一気に動かした記憶がある。(16:18)

たとえば株式売買の手数料はそれまで固定され、四大証券と言われる巨大な証券会社が株式売買で大きな利益を得ていたわけだ。そこで、「世界の趨勢を見ても売買手数料は自由化したほうが良いのでは?」と、我々は提案したのだけれど、そこで大変な抵抗に遭った。当時は友達だと思っていた証券会社トップの方々に、「宮内さん、あなたは何をするんだ」と(会場笑)、極めて真剣かつ深刻な抗議を受けながら進めていた。なかなかしんどかったけれども、それをやったおかげで、今はどうだろう。ネット証券の売買手数料は当時と比べたら数十分の一になった。それで証券流通は大変活性化したと思う。同様に、産業界でも多くの分野で私はずいぶん友達を失った感じがする(会場笑)。「あのことだけは許せん」と(笑)、今でも怒っている方がおられると思う。しかし、そこを突破していかないと物事は動かないという実感がある。(17:21)

堀: 恐らく失った友達よりもさらに多くの素晴らしい友達が…。(19:07)

宮内: 実はね、そうじゃないんです(会場笑)。当時、たとえば株式売買の手数料自由化は証券業界におられる個々の会社にとって死活問題だった。だから必死に、もう命がけで官庁や政治家とともに抵抗してくるわけだ。で、それに対して、「おかしいじゃないか。これは自由化すべきだ」という我々の主張が通ったとしたら、今度は何が起こるか。受益者は国民一般だ。「俺は株なんか買わないよ」という人もいる。だから受益者にとっては紙一枚、「あ、なんかちょっとマシになったな」という程度の話になる。命がけの賛成なんて絶対に出ない。「なんかやっとるな」という程度だ。(19:15)

すると、一般的には、「規制改革会議というのはなんか悪いことをしているんじゃないか?」といった受け取り方になる。そこでメディアもなかなか我々をバックアップしてくれないし、個人的には失うもののほうがずっと多い(会場笑)。私どもの会社でも同じだ。「お前んとこの社長は何をやっとるんだ」と、取引を止められたという話もずいぶん聞いた(笑)。社内では「ごめんなさい」としか言いようがない。でも、それをやらないと日本経済は動かない。従って、少しオーバーだけれども使命感のようなものでやっていたけれども、とにかく応援団はなかったというのが私の実感だ。(20:29)

33184 堀 義人

堀: 竹中さんもよくおっしゃっているが、既得権益を壊そうと思うと、少数ではあるが死に物狂いの抵抗がある。一方、賛成意見は薄く広がり過ぎているためにほぼ大きな声にならない。だからこそ、会場の皆さまをはじめとした経済界が声を挙げるべきなのだと思う。規制改革が遅れたらグローバルスタンダードの競争から遅れてしまうわけで、その業界が不幸になる。当時、もし証券業界の規制改革を行っていなければ証券会社は恐らく世界との競争に勝ち得なかったと思う。国鉄もJRに民営化されたことで強くなったのだと思う。だから農業改革も同じだ。「勝ち組と負け組みに分かれて格差が云々」といったことは言われると思うけれど、強くなるためには規制改革が不可欠だと思う。秋山さんは今のお話を伺ってどうお感じだろう。(21:16)

秋山: 宮内さんがおやりになっていたことは理想的だと思う。規制改革や成長戦略の議論に関して言うと、ある特定分野ではその業界にいらっしゃる方々のほうが精通していらっしゃる。だから、専門家としても具体的な案をお出しになれる。ただ、一方では利益相反の問題があり、そこで自社が利益を得るようになってしまう。場合によってはそうしたいと思っている方だっているかもしれないし、その意図がなくとも結果的に提言内容が外部からはそう見えてしまって、そこを批判されることもある。従って、可能であればそういう部分は専門委員のような形で提言していただいたうえで、利益相反のない方が強く主張することで改革していくことができたらいいなと思う。(22:31)

ただ、難しいのは、規制改革の分野にはすごくテクニカルな部分も多いという点だ。それで、「今までずっとこういうことになっていて、こういう制度改革でこういうことがあって、こういう条文があって、だから今はこうなんです」というふうに言われる。そこで対抗するには大変なエネルギーと知識がいる。だから、宮内さんもお1人でやっていらしたわけでなく、数多くのスタッフにサポートされていらしたのだと思う。従って、恐らく産業界や財界の方々ができる1つの方法は、スタッフという形も含めて対抗できるほど多くの知見を持つことだと思う。そのうえで、利益相反のない立場からとにかく正論を言い続けていくことが重要だと思っている。(23:37)

堀: 宮内さんのご尽力に大きな感謝の念が湧く一方、より一層システマチックにできることはないかなという気持ちもある。宮内さんがやってこられたことを僕らの世代は引き継いで、さらなる規制改革を進めて日本経済を成長させなければいけない。そこで、宮内さんのご経験から、「もっとこういうふうにやったほうが良いのでは?」といったご意見があればぜひお伺いしたい。(24:28)

宮内: 規制改革会議は審議会形式の一つ。物事を動かすにあたって在野の専門家を集めてどうしたらいいかという答申を受け、それで省庁が動いて法律を変えていく。日本の政治にはそれが蔓延しているのだけれど、私は規制改革に長らく携わって、「なぜ民間議員がこういうことをやらないといけないんだ?」と感じていた。‘Lawmaker’という英語があるけれど、「法律をつくる議員がいるのに、なぜ議員の仕事を我々がやらなければといけないんだ?」という気持ちがあった。(2459)

これに対し小泉元総理は以前、「議員は選挙で選ばれているから利害関係も多く、分かっていてもやれないんだ」とおっしゃっていた。「だから民間から声を挙げてもらって、それをうまくすくい上げて動かすしかない」と。で、そのときは私も「そうだな」と思ったのだけれど、今は「それ、本当なのかな?」と(会場笑)。議員はなんのためにいるのか。彼らの仕事を我々がやっているわけで。叩かれ役を引き受けながら議員を押して実現してもらうという、「そういう日本の政治システムはどこか変だ」という思いがある。では、議員に任せておけばできるのか。私が携わっていた頃、たとえば国会で規制改革について、何人が本当に理解したうえで賛成や反対を表明してくれていたか。同じレベルで議論できる方は両者とも片手で数える程度しかいなかった。(25:53)

族議員というのはいる。医療の規制改革には絶対反対という族議員は、そのときだけ出てきて圧倒的な力を発揮する。教育についても「何とか族」がいて、これまた圧倒的な力を持っている。しかし、規制改革や経済の活性化といった問題意識で議論できる議員の方があまりにも少なかった。私自身は議長やら委員長やらを拝命していたものの、それは名前だけ。審議会には他にも十数名におよぶ大変立派で献身的メンバーが揃っていた。ただ、国会議員が彼らのレベルで議論できない。(27:04)

だから僕は日本の政治家に、「もっと頑張ってもらいたい。自分たちのことじゃないか」と申し上げたい。「自分たちの国の経済なんだから自分たちでやる。規制改革会議は黙っておけ」という気持ちでいて欲しい。実際、その一部を橋本(龍太郎元首相、故人)さんが金融ビッグバンでなさったと僕は思っている。立派だと思う。ほかにも1~2人、「なぜこんなことを規制改革会議にやってもらわにゃいかんのだ」と、正面切って文句をおっしゃる議員もおられた。ただ、1~2人では動かない。日本の政治家が本当に‘Lawmaker’になり得ているのかという意味では、もっともっと国民の監視が必要だと思う。(27:48)

堀: 原発問題に関して、私は「原発が必要だ」ということを叫んでいたのだけれど、やはりそれを政治家の方が言えない。言ってしまうと原発に反対する有権者の票を失うから。政治家は意外と声を出しにくいと感じている。となると、財界人が言わない限り、メディアか評論家しか言わなくなってしまうという危機感がある。だから財界人がもっと声を出して、政治家が動きやすくなる環境をつくらなければいけないと最近は思っている、G1でもその声を挙げていくつもりだ。秋山さんはいかがだろうか。民間議員として、「もっとこうすればうまくいくのでは?」というお考えが何かあれば。(28:37)

秋山: 自身の経験から皆さんにお伝えしたいことが1つある。私自身も小泉内閣時代、「政府の審議会で女性を30%にしよう」という号令一下、当時最年少で政府税調に参加させていただいた。それをきっかけに、その後ずっと政府の仕事を細々と続けさせていただいている。それで今も、宮内さんがおっしゃったように審議会委員として会議に出て、そこで意見を申し上げるわけだ。すると、あとは事務方の皆さまや座長の皆さまが報告書をまとめてくださり、政策へつながるようにしてくださる。(29:36)

ということで、民間の方々からすると、そういう場で意見を言うのが1つのコミットメントというイメージがあると思う。私も以前はそうだった。当然、それも重要だ。ただ、それは千里の道のほんの一歩でしかないというのが、私が経験から学んだことになる。たとえば国家戦略特区法案のスキームをつくり、規制改革の初期メニューに関して省庁とセッションを行うわけだけれど、それを法案に盛り込む作業が審議会とまったく別の作業として行われる。で、それを官僚の方が取りまとめてくださったあと、それが形になるまでの政策決定プロセスでは、その先が大変重要になる。(30:19)

まず、与党のプロセスを通さなければならない。与党には、宮内さんがおっしゃったようにそれぞれ専門部会、または与党の意思決定プロセスがあり、そこを通過しないとそもそも国会に行かない。それで国会に行ったら次は与野党論戦も含めてさまざまな議論がある。ただ、そのプロセスで当事者になるのは政治家の方々だから、御二方からお話があったようなこともある。民間の感覚からすれば「それはそうだよね」という話が、与党と国会ではなかなか通らない。「やっぱりそういうことがあるんだ」と、私は思った。で、先ほど堀さんが言われたことだけれども、政策決定プロセスのそうした部分で、政治家の皆さんをよく言えば応援し、厳しく言えばプレッシャーを与えるということを民間がもう少しやらないと、プロセスの改善も進まないと思う。(31:09)

堀: たとえば政治家の友人に「社会保障改革をもっと進めてよ」と言っても、「それで我が党は政権を失ったんだぞ」と言われる。高齢者医療や年金問題に関しても同じ。実際、政治家の応援で演説会に行ってみると来ているのは高齢者ばかりだ。そこで「今から年金を減らすぞ」と言った瞬間(会場笑)、落選する。それなら政治家にプレッシャーをかけていくのと同時に世論を変える作業もしないと、政治も変わりようがないと感じる。そこで政治家が「そうだよね」と言えるような雰囲気にもっていく必要があるのではないか。今は世論に直接訴えることのできるインターネットというツールもあるわけで、財界人が世論を喚起し、僕らの力で世論を変えていくべきだと思う。政治家も社会保障改革をしなければ財政が破綻することはよく分かっている。農業改革だって進めたい。ただ、それで選挙に落ちてしまうかもしれないというジレンマがある。(32:21)

僕は「ポリティカルリソース」という言葉をよく使うのだけれど、それを岩盤打破に使うと支持率が落ちて政治的な力も失っていく。原発を再稼動させれば何%か支持率が落ちるし、集団的自衛権でも何%か支持率が落ちる。今は支持率が上がる改革メニューがほとんどなく、宮内さんがおっしゃった通り、敵ばかりつくってしまう状態だ。それで恨みを持った人たちが必死に抵抗し、邪魔をしてくるようになる。だから今後は財界人も皆で声を挙げるべきだと思う。その点、宮内さんはどうお考えだろう。(33:33)

宮内: その通りだけれど、現実は逆になる(会場笑)。やっぱり、黙っちゃう。声を挙げて欲しいときになかなか挙げていただけなかった、というのが私の経験だ。後でそっと来て、「宮内さん、あなたの言っていることはその通りだ」と、私に言うわけだ(会場笑)。後からそんなことを私に言ってこられても仕方がない。賛成であれば、経済人または財界人として発言の機会を持っている人には声を挙げていただきたい。でも、本当にそうならない。その意味ではすごく孤独で孤立した感じだ。(34:21)

 

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