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テクノベートを実行する姿勢が個人と組織を成長させる

投稿日:2019/06/12更新日:2019/06/24

前編に続き、『テクノベートMBA 基本キーワード70』の発売に合わせ、執筆者の嶋田毅とグロービスでテクノベート科目の開発にかかわっている君島朋子、鈴木健一、梶井麻未に、グロービスが提唱・推進している「テクノベート」の現状や進化について聞きました。(全2回)

数年後にテクノベートはどう変わる?

――これから3年後くらいはどう変わっていきそうでしょうか? 嶋田:テクノベートの基本的な知識の「大衆化」はもっと進むでしょう。まさに25年くらい前くらいから、グロービスがMBAの知識や考え方を大衆化していったのと同様です。ただ、進化の早い分野ですし、パラダイムの変化についていくのは大変ですから、今よりもさらに二極化が進むかもしれません。 君島:先日、著者の方を招いて『アフターデジタル』という書籍についてご講演いただきました。そのお話によれば、今まではオフラインにあったものをオンラインに乗せようという発想でした。しかし、これからは「何でもオンラインで」が当たり前の時代になります。オフラインのリアルな行動も、オンライン上にデータがあって、トラックして、という状態がデフォルトになる。あらゆる行動がオンライン化してデータ化されている中で、それをいかに読み取って、もっと顧客にいいものを出すかという発想をしなければならなくなるというお話でした。それには非常に共感しますね。 実は昔マッキンゼーにいたときに、今の「スマホで皆がつながる社会」みたいなものを構想して、よく提案書に書いていたのです。その時点では読まれても懐疑的な方が多かったのですが、見事に現実化しました。 同様に、いつか、消費者の行動が一貫してオンラインで見える時代になるでしょう。先ほどパラダイムの変化という話がありましたが、これもそうですね。今までは心理的なデータをアンケートでとって考えるという形で見ていました。因果関係を重視していたからです。しかし、行動データがすべて取れれば、因果関係がなくてもいいわけです。相関関係が見えれば十分という世界観ですね。「こういう行動をしたら、次こうだろうね」って予測ができれば、だいたいニーズの予測ができる、それで十分なのです。企業同士の情報共有をどうするか、個人情報の保護をどう考えるかといったハードルなどは確かにありますが。 鈴木:僕は、今はすごくいい時代だと思っています。何かをやろうとすると、それほど投資をしなくても、オープンソースなどを使って比較的安価にいろんなことができる。「できない理由」が大幅に減ってきて、あとはやるかやらないか、という話になる。「こんなことをやりたい」とか「何をやりたい」という妄想力みたいなものがより大事になると思います。 嶋田:最近「妄想力」という言葉をよく聞くようになりましたが、まさにどれだけ大きな絵を描けるかが差になる感じはありますね。 鈴木:3年では難しいかもしれませんが、10年たったら、言い訳ができないというか、「それ、要するにやらなかっただけだよね?」という感じになると思います。「データの数が足りなくて」なんていう人もいますが、それはそれでやりようはありますし。 梶井:どこかでティッピングポイントを超えれば一気に変わるかもしれません。今は予想以上にゆっくり進んでいる気がします。キャッシュレスなんかもそうですね。ただ、2年先か10年先かは分かりませんが、あるポイントを超えると日本の企業や社会も一気に変わっていく気がします。 鈴木:インターネットが入ってきてからの変化を考えると、同じようなマグニチュードで変わっていきそうな気がします。それに対応できた企業は生き残るし、対応できなければ、長い目で見たら、やはりジリ貧になっていく。 嶋田:事実としては、当初想定していたほど変化してないというのは、確かにその通りかもしれません。しかし、逆に考えたらチャンスとも言えるわけです。この数年間の企業の取り組みで、大きな差がつきそうな気はしますね。

デジタルトランスフォーメーション実現への課題は?

――企業がデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)を遂げる上での課題は何でしょう? 君島:やはり、新しい事業が既存の事業と一見カニバリゼーションを起こしたり、あるいはディスラプト(破壊)したりするような場合、どう世に出すかが難しいですね。これについては先ほど述べた『デジタル・シフト戦略』にヒントはあるのですが、日本企業ではまだ解が見えていないと思います。というのは、この本はアメリカの研究がベースなので、通底してトップダウンで変えていく方法論を説く。一方、多くの日本企業はそこまでトップダウンでは変えていかないし、受講生の方々の悩みを聞いても、ああはならないのです。 梶井:やはり既存のビジネスモデルと違うことをやる、違う仕組みとか価値を提案して実行しようとすると、どうしてもカニバるとか、いまのビジネスモデルに影響があるということを無視できなくて、反対されるケースが多いですよね。個人的には世の中の大きな変化は結局いつかはやってくるのだから、早く準備したほうがよいだろうし、新しいことと既存の経営を「両利き」でやっていくべきだと思いますが、今までのビジネスモデルでやってきている人にとっては、それは脅威なんだろうなと思います。 ――手伝わないだけではなくて、場合によっては邪魔することも多いですね。 鈴木:できない理由を考えるほうが楽ですしね。頭のいい人ほど、できない理由に走りがちかもしれません。 梶井:「やらなくても、いま死なないから、やらない」っていうのはありますよね。 君島:取り組もうとされている企業にうかがうと、セオリーどおりの戦略はきっちりと考えておられるのです。「プラットフォームはこうなるだろう。サービスもサブスクリプションになって、こうなるだろう」といった姿までは、リーズナブルな想定があるんですよ。 にもかかわらず、実行はできていないのです。できていないか、少なくとも途上にあって、3年も4年も取り組まれているけど実現していない。経営トップも担当部署のトップの方も絵を描いて、「自分の部門ではこうだよ」というのは広められているんですが、既存の他部門に波及できていないんです。会社として本当にビジネスモデルを変えるには、そちらの協力が不可欠なのですが、そこには食い込めていないんです。 嶋田:特にそうした他部門がものすごく稼いでいる場合、会社として優先順位の高い課題にしにくいというのもありますね。そちらはそちらでやってくれという感じで。 君島:日本は『デジタル・シフト戦略』で取り上げられた海外の企業に比較すると5年以上は遅れている感じがあります。これはもどかしいですね。業態にもよりますが、なまじ国内市場が大きいから何とかなってしまう。先ほど話があったように、こうした状況は本来はチャンスなのですが、なかなかそうならない。 鈴木:最後は経営者のリーダーシップという話になるのかもしれませんが、それは「ないものねだり」かなという気がします。変革の話になると、そりゃあリーダーがそういう行動をとってくれればいいに決まっていますが、そうならないからみんな苦労してる。でも、ミドルからでもできることはある。問題意識があってできる人が頑張ってやってくしかないんじゃないかなとは思います。 一方で、頭のいい人であればあるほど、「この波が大きな波だ」と分かった瞬間にバンドワゴンのように飛び乗る。だから、「これが大きな波だ」ってことを痛感させるまで頑張るしかないと思います。 梶井:「変化を楽しく取り入れよう」みたいな姿勢も必要だと思います。新しいものがやって来ると自然と拒絶したくなっちゃうものですが、そこをグッと飲み込んで取り入れてみると世界が広がってくるので。 嶋田:危機感で、というよりは、ワクワク感で動く方がいいですよね。 鈴木:僕もそう思います。日本人は修行が好きだから、何でもかんでも修行っぽくしちゃうんだけど、どうせやるんだったら楽しくやれたほうがいいでしょう。その方が一瞬だけではなく、長続きもします。

まずはテクノベートを実行してみる

――最後に一言お願いします。 君島:今はもはや「先端的な話を聞いておけばいい」という時代ではありません。いかに自分がテクノベートを用いた創造と変革の当事者になるかが大事です。正直、まだ当事者としてそれに立ち向かっている人は1割、2割もいないと思います。特に起業を目指すような人の場合、テクノベートの素養や考え方は必須ですから、ぜひしっかり学ぶとともに、意識も変革していく必要がありますね。 鈴木:Just Do It.ですね。MITメディアラボの伊藤穰一さんが「フューチャリストじゃなくて、ナウイストだ」という言い方をされますが、まったく同感です。いまの現実として考える必要があります。だから、「どんどんやってみよう、体感してみよう」ということです。「楽しんでやりながら考えよう」ということですね。 梶井:管理職やリーダーが若い人の邪魔をせずに新しいチャレンジをさせてあげる、ということがこれから大変化を迎える世の中では本当に重要になってくると思います。既存の判断軸だけでジャッジするのではなく、ある程度リスクもとって任せ、新しいチャレンジをやっていかないと、大きい変化の波がきたときに立ち行かなくなるでしょう。また、チャレンジは自分たちだけで全部やるんじゃなくて、外部パートナーと連携して一緒にやっていく、ということもどんどん必要になってくるでしょう。そういう意味でもフットワークを軽くして、新しいことにチャレンジさせてあげてほしいなと思います。 嶋田:今回の書籍は主に知識の伝達、テクノベートの入口への招待がメインの目的でしたが、次は日本企業の実践編ともいえる書籍を書いてみたいと思います。そのためにも、グロービスがどんどんテクノベート人材を育成し、また当事者化していくお手伝いができたら嬉しいですね。 グロービスのテクノベート科目についてもっと知りたい方はこちら>>

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