第2回 ビジネス推進仮説を分類する 

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前回、仮説には2つの種類があるという話をしました。その後、「ビジネス推進仮説はもっといろいろブレークダウンできそう。いくつかタイプを教えてほしい」というご意見を複数いただきました。そこで今回は、ビジネス推進仮説について簡単なタイプ分けをしてみることとします。
実は、その気になれば今回ご紹介する以外にもさまざまなタイプ分けが考えられるのですが、それをやりすぎると博物学になってしまいますし、実用的でもありませんので、今回は主に2つの観点に絞って説明をします。

「結論の仮説」と「問題解決の仮説」

まずは、目的軸で分類してみましょう。ビジネスパーソンにとって重要な行動にはさまざまなものがありますが、その中でも論理思考や仮説思考が重要となるのが、コミュニケーション(特に他者を動かすためのコミュニケーション)と問題解決です。そして、それぞれに対応する仮説が、「結論の仮説」と「問題解決の仮説」です。

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なお、結論の仮説と問題解決の仮説は、上の図に示すとおり、いわゆるMECE(モレもダブりもない)のタイプ分けにはなっていません。分類というとMECEにこだわる方がいるのですが、それも時と場合によりけりです。ビジネスではこの二つの仮説をうまく使いこなすことが、生産性向上に大きく寄与します。

結論の仮説とは、ある論点について、「こういうことがいえるだろう」という仮の答えです。主張の仮説ともいえるでしょう。例えば、「A事業で勝つことは難しい」「B製品は売れるだろう」といった仮説であり、こうした仮説をさまざまな場面で持っておくことは非常に大きな意味があります(その意義については次回以降説明します)。

例えば、かつてヤマト運輸(現・ヤマトホールディング)の小倉昌男氏(元・会長)は、ヤマト運輸がまだ中堅のトラック輸送業者だった頃に、「家庭向けの小口配送は儲かる(商売になる)はずだ」「郵便に勝つことは可能だ」という仮説を持ちました。そしてこの仮説を検証しつつ、宅急便(宅配便)という事業を創出していったのです。もし当時、小倉氏が先のような仮説を持つことがなかったら、日本の宅配輸送事業の歴史は大きく変わったでしょうし、ヤマト運輸の社運は大きく変わっていたでしょう。さて、あなたは、あなたの携わっている事業や商品、市場に関して、どのような仮説を持っているでしょうか?

二つ目の問題解決のための仮説とは、具体的な問題解決を推進するための仮説であり、「WHERE?(どこに問題があるのか?)」「WHY?(なぜその問題が起きたのか?)」「HOW?(どうすればその問題を解決できるのか?)」という問題解決のプロセスにそった仮説です。

もう少し具体的に言い換えると、「ここに問題があるはずだ」「こういう分析をすれば問題の所在が見えるはずだ」という問題の所在の仮説、「おそらくこれが最大の原因だろう」「こういう分析をすれば原因は分かるだろう」という原因追求の仮説、「この打ち手が効くに違いない」「こうすれば効果的な打ち手を発見できるだろう」といった対策の仮説です。闇雲に分析をしてみたり、あるいはアクションをとったりしても、問題は解説しません。こうした仮説を持ちながら、検証をスピーディに行うことが、効果的な問題解決につながります。

現在、過去、未来という時間軸でのタイプ分け

仮説は、いつの時点のことに関する仮説か、という観点から、「過去のことに関する仮説」「現在のことに関する仮説」「将来のことに関する仮説」というように時間軸でタイプ分けすることも出来ます。そして、それぞれのタイプによって、検証方法や、求められる検証の精度などは変わってきます。なお、先の問題解決の仮説に対応させると、図表に示したように、WHEREは概ね現在、WHYは概ね過去から現在、そしてHOWは概ね将来に対応してきます。

まず、過去の出来事に関する仮説があります。具体的には、「こういうことが起こっていたに違いない」といったものです。これは、考古学者や犯罪捜査官にとっては最も重要な仮説ですが、ビジネスパーソンにとっての重要度は決して高くありません。ここでは、そうしたものもある、程度に理解しておけば十分でしょう。

次のタイプは、現在のことに関する仮説で、これは非常に重要です。例えば「消費者のニーズは○○から△△に変わりつつある」とか「わが社の競争力はもはや持続力があるとは言いがたい」といった仮説です。後者の例では、もしこの仮説が事実であったら大変なことですね。前者の例は、事業機会に結びつくかもしれませんし、逆に大きな脅威になるかもしれません。

現在のことに関する仮説は、事業への影響が大きく、なおかつ誰も気がついていないものを立て、いち早く検証できれば、大きなアドバンテージにつながります。先の小倉昌男氏の例で言えば、おそらく「郵便に対する不満は大きなものがある」「郵便でまかないきれていないニーズは大きい」といった仮説を持たれていたと思われます。

野球の大リーグでは、かつて、オークランド・アスレチックスのゼネラルマネジャー、ビリー・ビーン氏が、「安い人件費でよい成績を上げるためにどうすればいいか?」という問題意識の下に、さまざまな仮説を立て、検証しながらチーム作りや戦術に役立てました。一例を挙げると

「打者を評価する最高の基準は出塁率と長打率である」
「選球眼はなかなか向上しない」
「送りバント、ヒットエンドランは愚行である」
「守備が勝敗に及ぼす影響は高々5%である」
「攻守走そろった選手は年俸がかさみ、費用対効果が低い」

・・・などです。これらは、当時の米球界の常識を覆すもので、いち早くこうした事実に気づいたアスレチックスは、非常に安い人件費で素晴らしい成績を残しました。日本でもおなじみのニューヨーク・ヤンキースの数分の一の年俸で、ほぼ同じ成績を残したのです。残念ながら、書籍などを通して、これらの事実が知れ渡ってしまったため、いまではこうしたやり方の効果性はずいぶん下がってしまったようです。
そして最後は、将来のことに関する仮説です。具体的には、「この事業に参入すれば成功を収められるだろう」「このトラブルシューティングに最も効く打ち手は△△だろう」といったものです。これらの仮説は、まさにビジネスを推進させる仮の答えであり、最も重要な仮説なのですが、同時に、検証することが最も難しい仮説でもあります。

どうなるか分からない、不確実性の高い将来のことを言っているわけですから“鬼が笑う”のも当然で、あくまでも「・・・だろう」以上の言い方はできません。例えば、「この事業に参入すれば成功を収められるだろう」という仮説は、「市場は魅力的で、かつその中で持続的な競争優位性を築くことが可能」「事業プランは、ヒト・モノ・カネのすべての観点で実行可能」といったことが言えないと検証できないわけですが、そうした根拠にしても結局は将来の予測になってしまうため、どこまで行っても断言しきれないのです。ただし、言い切れない=やらないということではありませんから、どこかで見切りをつける必要があります。このあたりの話はまたおってご説明していきます。

いずれにせよ、先述したとおり、いま自分が持っている仮説がどの程度将来のことに関する仮説なのかを意識することは、その検証のステップや求められる検証の精度にも影響を与えるので非常に重要だと言う点は意識しておいてください。

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