世界を目指すなら異文化理解力を磨け 

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グローバルなキャリアを築きたい、あるいは自社のグローバル化を推進したいと考えている人にとって欠かせない異文化理解力。それはどういった力で、どうすれば身に付けることができるのか、グロービス経営大学院のコース「Cross Cultural Management」のエッセンスと共にお伝えします。(全2回)

「異文化理解力」で違いの分かるグローバルビジネスパーソンになる[1]

田岡: 今日は、グローバルなキャリアに欠かせない、異文化を理解するということについて、実際にビジネススクールで教えている内容にもちょっと触れながらお話ししたい。

まず私の自己紹介をしたい。今は東京麹町にあるグロービス経営大学院というビジネススクールで教鞭を執っている。その前は、20代後半からロンドンで3年半、その後にニューヨークで5年半、計9年ほど海外で働いていた。ロンドンでは、当時デビューしたばかりのデザイナー、アレキサンダー・マックイーンの店舗の運営に関わり、店舗の会計と日本の本社に対する財務報告を担当していた。その後ニューヨークに渡り、株式会社ポケモンの現地法人で、会計の仕事をした。日本人は私と社長とあと1名、2名いたかなというところで、現地の方にジョインいただき皆で会社を立ち上げた。その後現地のエージェントへの転職を経て、帰国後は、自分のキャリアの棚卸しをしたいなと思いMBAに入学した。そして、卒業後のキャリアを考えたときに、今までと同じことを繰り返すのではなく、違うことがしたいと考え、多彩なバックグラウンドの方々と一緒に学べる環境で、私の知識や経験を生かして会計を教える仕事に転進した。

グロービス経営大学院は日本最大のビジネススクールで、年間800名ほどが経営学修士を目指して勉強されている。そのうち約10分の1の方が、私が担当している英語でMBAを取得するプログラムで学んでいる。海外で働きいろんな文化に触れたという自負はあったが、実は今の環境が私の人生で一番ダイバーシティが高い。なんと、50カ国以上の学生さんが学んでいる。

グローバル人材が必要なワケ


さて、日本の人口減少が進んで市場が縮小していくと、多くの産業は海外市場に出ていくことが必然となる。そうした中、日本企業が海外市場で成功するための鍵は「グローバル人材」にあるのではないか。そのために異文化理解がますます必要になってきていると感じる。

私は大学院の仕事とは別に、バンコク、シンガポール、マレーシア、香港等アジアの都市で企業研修を担当している。そこで、企業の人事の方々にどういう人材が欲しいか尋ねると、「海外で事業を創造、拡大する人材を育成したい」と言う。そういったスキルを持った人を外から雇いつつ中でも育てて海外へ行かせたい。そして事業を創造、拡大してほしい。さらに、今後は現地人材にマネジメントを引き継いでいきたいそうだ。

一方、世界中にどんな人材がいるかを把握し活用したいと言う声も聞く。高度なスキルを持っている外国人に対する永住権の取得が簡単になるという、新しい法案のニュースをご存知だろうか。会計やITなど専門性の高い人材に関しては早くて1年ぐらいで永住権が取れると。つまり、企業側にとっては労働力として見られるプールがものすごく広がったということだ。今までは国内の日本人の労働市場にアプローチしていたところに、同じような、あるいはさらに高度な技術を持った外国人が入ってくる。企業にとっては非常に興味深い状況だと思うが、求職者にとっては競争が激化していくかもしれない。


これは、私どもが規定しているグローバルリーダーの人材要件を簡単にフレームワーク化した図だ。左側が普遍的にリーダーに必要な3つの能力。どこの国、どんな環境であってもこういった能力が必要だろう。右は世界で通用するリーダーに必要な3つの能力。言い換えると、異文化でも同様な、あるいはさらに強力なリーダーシップを発揮するための能力と解釈している。

普遍的な力は、我々のMBAプログラムでもコアとして教えている部分だ。ビジネスフレームワーク、戦略、マーケティング、組織論等々。それを概念化していろんなことに応用していくコンセプチャルスキル。そしてヒューマンスキルは対人関係だ。ソフトスキルとも言うが、そういったものをまずきちんと持っている人材。加えて、世界で通用するためには英語力。世界的視野、グローバルパースペクティブと我々の学校では呼んでいるが、いろいろな国の見方、政治の見方、経済の見方、そういったことを鍛えつつ、やはりコアとなるのは異文化におけるコミュニケーションのスキルであると思っている。

異文化の違いを読み解くカルチャーマップ

異文化理解力とは、一言で言うと「違いに関する能力」だ。まず、違いを知っているということ。そして、違いに対する感度や配慮があるということ。次はスキル。スキルとは実際にそれを行動に起こす能力だ。違いを踏まえたうえで正しい適切な振る舞いや行動が起こせるか。いわゆる文化的知性の話をするときは、この3つのエリアを押さえていく。私が監訳した『異文化理解力』という本は、いろんなエピソードからその違いに関する知識を補うことができ、また体系的に理解するのに非常に有益だ。

ちょうど1年前、ハムスター速報に「そういえば先週読んだ本でむっちゃ笑った箇所」というトピックスが上がり、ものすごい数のコメントがついた。その笑った箇所とは、『異文化理解力』の「英蘭翻訳ガイド」という表だった。イギリス人が「失礼ながら」と言ったときは、「あなたは間違っている」という暗黙の意味を込めているが、それをオランダ人が聞くと「ああ、この人は自分に賛成してくれているんだな」と理解するという。あるいは、イギリス人の「とても興味深いですね」には、「正直言ってそのアイデアを好きではありません」という意味が込められているにもかかわらず、率直なオランダ人は「おっ、やった。いい印象を与えたな」と感じるという。そういう事例を紹介した表だ。

つまり、我々が発するメッセージを他の国の他の文化の方々がどういうふうに受け取るかは分からない。私たちが正しい知識や感度を持っていないと、ものすごい誤解を生んだまま物事が進む可能性があるのだ。こうした違いを生む8つの局面を、『異文化理解力』では「カルチャー・マップ」というフレームワークで解説している。

1つ目は、コミュニケーションの部分で言うとローコンテクストとハイコンテクスト。これはさきほどのイギリス人とオランダ人の事例がまさにこれのフレームワークの一部だ。額面どおりに伝えるのがローコンテクスト。ハイコンテクストは言ったこととはちょっと違う意味が裏に込められている。日本は非常にハイコンテクストな文化で、行間を読む、空気を読むとはまさにそのことだ。

2つ目は、評価、特に職場でのネガティブ・フィードバック。相手のできてない点を伝えないといけないとき、直接的に伝えるのか間接的に伝えるのかという違い。「君これできてないよ」と言うのか「うん、すごいいいね。でもさあ、例えば……」と間接的なアプローチするのかという違い。

3つ目は説得の仕方。原理優先、あるいは応用優先。原理とは、そもそも論のこと。応用優先は「こういうケースがあるからこういうことなんじゃないの」と、取りあえず事例どおりに考えてみよう、というもの。

4番目はリード。平等主義と階層主義だ。日本は階層主義で、社長をトップにピラミッドがあって、社長の下に役員がいて部長がいて課長がいてという階層がある。そして一応一番上の人が偉いということになっている。平等主義はそういう階層が少なく、極端な場合全くない。みんなが同じチームメンバーですという形だ。

5つ目は決断。物事を決める際に、合意志向とトップダウンがある。みんなの意見を聞いて合意するまで延々練り上げるのが合意志向、一番偉い人が「これがいい」って言ったらすぐやることがトップダウンだ。

6つ目は、どうやって職場で信頼を築くか。タスクベースと関係ベースというのがあり、タスクベースはその人というよりは業務だけを見て「この仕事をきちんとやっているのであなたは信頼できる」「締切を守ってきちんとやってくれた。信頼できる」というもの。関係ベースは、「君はいい人だから信頼しています」という人ベースの話だ。

7つ目は、見解の相違。意見が違うときに、それをどのように表すかということで、対立をいとわない文化と、対立を徹底的に避ける文化がある。“I disagree.”と言う文化もあれば、そういう言葉を避けて何とかコミュニケーションを進めようとする文化もある。

最後は、スケジューリング。これは時間感覚で、直線的な時間と柔軟な時間がある。例えばプロジェクトでスケジュールを引くと、Aが終わったらB、Bが終わったらC、Cが終わったらDで、Dで完結と、決めたとおりに物事が進む感覚を持っているのが直線的。もう一方は、Aをやってみた、そこにXが発生した、じゃあYで考えようと、フレキシブルにその場その場に対応していく柔軟性を持っている。

これは非常に画期的なフレームワークだ。今までもいろんな文化の違いをビジネスに当てはめて説明しようとしてきた学問的なリサーチはあったけれど、こういう風に人々の行動ベースでそれを見やすく分けたものはなかった。だから、これが今世界で爆発的に使われている。


※この記事は、2017年2月9日に行われた、DODA転職フェア「『異文化理解力』で違いの分かるグローバルビジネスパーソンになる」を元に編集しました。

※後編は3/10に公開します。
 

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