社内政治の鉄則(3) 派閥や対立の現実から目をそむけるな 

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社内政治の傾向と対策を考える本連載。今回は、パターン3「意図せず戦いに巻き込まれてしまう」を考えてみよう。ケースの主人公はグロービス経営大学院生の椎名さん(仮名)だ。

パターン3: 意図せず戦いに巻き込まれてしまう(1)

【ケース】
椎名は、メーカーC社の素材開発部門マネージャである。この5年で大きな開発プロジェクトを成功に導き、開発体制も10倍以上の規模に拡大させた。C社の業績も順調だった。

しかし、その一方でCEO(最高経営責任者)の水口とCOO(最高執行責任者)の真田の確執が深刻化していた。水口の独裁的経営に危機感を覚えた真田は、ついに役員全員の承認を裏で取り付け、取締役会で緊急動議を発して水口を退陣させる事態にまで発展した。

クーデターはこれで終わらなかった。CEOとなった真田は専務の川上を平取に降格させ、関係会社に左遷させた。川上は、C社の傍流事業を大発展させた功労者であり、水口退陣にも賛同したにもかかわらずだ。真田にとっては、実績と影響力を持つ川上が邪魔だったのだ。

その川上の部下で、椎名の直属の上司であった執行役員の井口も海外に左遷させられた。井口は真田から「自分の傘下に入れ」という打診を受けたが、その申し出を断っていた。左遷はそれに対する制裁だった。

一連の真田の粛清を裏で支えたのが前田だった。かつて、井口によって左遷させられた経験を持ち、恨みを抱いていたため、真田の片棒をかつぐことになった。そして、その報償として執行役員に引き上げられた。

椎名は、川上と井口を心から尊敬していたので自分の身の振り方を悩んだ。「自分はこのままこの会社に留まるべきなのか。尊敬する2人がいなくなった今、私も去るべきではないか」と。しかし、川上から「ここまで成長させた事業をしっかり残してくれ」と頼まれ、別れ際、井口が涙ながらに発した「夢を形に!」という言葉で、椎名は腹を決めた。C社に残り、2人の先輩の意志を引き継ぐと。

社内政治の実態に対する理解が我が身を守る

【講師解説】
グロービス経営大学院の受講生に聞くと、「派閥やら社内政治やら、そんなドロドロとした世界には踏み込みたくない。志と論理さえ磨いていけば人はついてきてくれるはずだ」という答えがかなり多く返ってくる。ナイーブに過ぎる感がある。もちろん、志や論理思考力を鍛えることはとても大事だが、それは必要条件にすぎない。現実は、志とロジックで正論をぶつけるだけでは、人も組織も動いてくれない。計算や強かさ(したたかさ)も必要なのだ。

ある調査では、「マネージャの成功と密接に関係する行動」の上位に、「人脈作りと政治的駆け引き」が挙がっている(注1)。

社会心理学者のデービッド・マクレランドは人間の持つ根源的欲求の1つとして、権力追求の動機があると指摘している(注2)。

さらに「人間は社会的な動物」であり、仲間外れにされることを極度に恐れる。自分を仲間に入れてくれ、守ってくれる強力なリーダー(派閥のボスなど)のいる集団に所属しようとする習性を持つ生き物なのだ。

組織に属している限り、自分が望むと望まざるとにかかわらず、社内政治に巻き込まれることはある。その構図をしっかり理解しておくことが、自分自身でコントロールできる余地を広げる。

問題は、社内政治に巻き込まれ、自分の身の振り方を判断しなければならなくなった時にどうするかだ。合理的に考えれば勝ち組につくべし。ただし、自分の成し遂げたいことがそこで実現できる可能性がある、つまりそこで自分の「志」が生きるという条件付きだ。

こんな調査結果もある。「人々がある人を支持するかしないかは、その人の個人的な魅力や能力と同じぐらい“勝ち組”かどうかに左右される」(注3)。

次回は、椎名のさらなる試練を見ていこう。


(注1)Fred Luthans, Stuart A. Rosenkrantz, and Harry W. Hennessey, “What Do Successful Managers Really Do? An Observation Study of Managerial Activities,” Journal of Applied Behavioral Science 21, no.3 (July 1985):225.

(注2)David McClelland, "The Achieving Society" 1961

(注3)R. B. Cialdini, R. J. Borden, A Thorne, M. Walker, S. Freeman, and L. Sloan. "Basking in Reflected Glory: Three (Football) Field Studies." Journal of Personality and Social Psychology 34(1976):366-375
 

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