第10回 創造的な仮説を考えるためのコツ 

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今回から3回は、仮説、しかも時代の一歩先を行く仮説を生み出すための具体的なコツとして、「常識を疑う」「新しい情報と組み合わせてみる」「発想を途中で止めず、『So What?』を繰り返す」の3つのポイントについて触れていきます。

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創造的な仮説を生み出すための具体的なコツとして、私は、以下の3つを挙げたいと思います。
・常識を疑う
・新しい情報と組み合わせてみる
・発想を途中で止めず、「So What?」を繰り返す

これらは、発想力やイノベーションを扱った書籍でよく指摘されるものではあります。たとえば、「水平思考」(もともとは1970年代にエドワード・デボノ博士が提唱)に関する著書で知られるポール・スローンは、その著書『イノベーション・シンキング』の中で、ユニークな発想を生み出すためのコツとして、
1)前提を疑う
2)探り出す質問をする
3)見方を変える
4)奇抜な組合せをしてみる
5)アイデアを採用し、応用し、さらに改良する
6)ルールを変える
7)アイデアの量を増やす
8)試してみて、評価する
9)失敗を歓迎する
10)チームを活用する
・・・という10カ条を紹介しています。

この連載で紹介するいくつかのコツも、これらとダブってくる部分は多くなります。今回は、私自身の経験、あるいは同僚との議論などで特に有効かつ重要と感じたものについて、私なりの解釈も付加しながら簡単に紹介していきます。これ以外にもたくさん挙げることはできるのですが、きりもありませんし、まずは基本を押さえることが重要ですから、この連載では3つに絞って紹介していきます。今回はその1つ目として「常識を疑う」について詳説します。

常識を疑い、先行者利益を取る

これは、我々が過去の経験や学習で身につけてきたルールをいったん忘れて考えるということです。ゼロベース発想、あるいはアンラーニングをすると言い換えることもできます。世の中の多くの人は常識にとらわれながら思考を行ないますから、その常識の外側で考えると、世の中の誰も思いつかないような新しい仮説が生まれてくることがあります。事実、それまでの常識を疑うことから、競合の機先を制するような新商品や新事業が生まれ、先行者利得を実現した例は枚挙に暇がありません。

たとえば、いまや当たり前のサービスとなった宅配便ですが、ヤマト運輸がこの事業を開始するまでは、「郵便に敵うわけがない」「小口配送は儲からない」という業界の常識がありました。当時ヤマト運輸の社長だった小倉昌男氏はその常識を疑い、どうすれば儲かるビジネスになるかを徹底的に考えていったのです。

デルの創始者であるマイケル・デルは、「パソコンはパソコンショップで買うものであり、電話販売には馴染まない」といった当時の常識を疑い、いわゆるデルモデルと呼ばれる、ダイレクト販売のビジネスモデルを構想しました。

P&Gが今から20年近く前、生理用ナプキンの「ウィスパー」を発売したとき、そのライバルメーカーの経営陣は、「生理中の女性はあまり活動しないものだという常識にとらわれていた。『やられた』と思った」と述べています。

検索サービスで圧倒的シェアを誇るグーグルは、それまでのウェブビジネスの常識である「滞留時間をなるべく長く」という常識を捨て、新しい収益モデルを作っていきました。

これらはすべて、今となってみれば、「なぜ、我々はそう思い込んでいたのだろう」という「思い込み」に気づき、それを捨て去ったところで新しい仮説を見出し、検証、実行していった例といえるでしょう。

常識をリセットする具体的なテクニック

次に、常識や前提をリセットするための具体的なテクニックについていくつか紹介していきましょう。これらは、前回ご紹介した情報のカルティベーションの段階で行なっても非常に有効です。

1)極端な仮定の質問をしてみる
1つのやり方として、「50%のコスト削減をするためには何が必要か」「価格を3分の1にすることは可能か」「1人あたりの売上げを3倍に増やすためには何が必要か」という、一見無理っぽい質問をあえてしてみるというやり方があります。こうした飛躍は「改善の積み重ね」で実現することはなかなかできません。何かしらのブレークスルー、飛躍が必要となり、必然的に、それまで当たり前だと思っていたことの見直しを迫ります。たとえば、散髪の価格は、かつては安くても2000円以上するのが当然でした。ここで、「散髪の価格を1000円にするためにはどうすればよいか?」と考えてみることで、「洗髪や髭剃りは不要なのではないか」という仮説が生まれてくるのです。せっかくですので、ぜひ「散髪の価格を500円にするためにはどうすればよいか」あるいは、「散髪で5000円以上の価格を実現するためにはどうすればよいか」を皆さんなりに考えてみてください。何かしらの常識を取り払う必要があるはずです。

また別のやり方としては、「もし何々がなかったら」「もし何々が手に入ったら」という「もし」の世界を想像してみるというやり方もあります。特に、そのビジネスの前提となっているような重要なポイントについて「もし」を考えてみるといいでしょう。たとえば広告代理店であれば、「もしテレビがなくなったら」を考えてみるのです。

2)ばかばかしい質問をしてみる
たとえば、「なぜこんな機能がついているんですか?」「なぜこの手順を踏まなくてはならないのですか?」「なぜこれである必要があるんですか?」といったタイプの質問です。往々にして、「皆がやっているから」「昔からそうだから」というだけで、顧客にとって意味のないことが多いものです。また、1回「なぜ」と聞いたところ、もっともらしい答えが返ってきたとしても、何回も繰り返して「なぜ」を掘り下げると、本質的な理由は実はつまらないものであった、ということも多いものです。

この質問は、自分自身、まったくの新人や素人になりきってすることが重要です。あるいは実際に、新人や素人の意見を聞いてみることも有効でしょう。企業がアウトサイダーであるコンサルタントの力を借りる1つの目的もこんなところにあります。

3)否定形を作る
これも思考法のテクニックとしてしばしば紹介されるものですが、うまく使うと非常に有効です。たとえば、アイスクリームの新商品企画について考えてみましょう。まずは、「アイスクリームは○○だ」という文章をいくつも作り、その否定形が成り立たないか考えてみるのです。すぐに思いつく属性を10個以上は上げ、その逆を考えるだけで、ユニークな仮説を生み出すきっかけとすることができます。ここでは7つの属性を挙げました。ぜひ、残り3つ以上は考えてみてください。

「アイスクリームは甘い」→甘くないアイスクリームは作れないか?/ニーズはないか?
「アイスクリームは果物味が多い」→野菜味のアイスクリームは作れないか?/ニーズはないか?
「アイスクリームは冷たい」→冷たくないアイスクリームは作れないか?/ニーズはないか?
「アイスクリームはカロリーが高い」→カロリーが低いアイスクリームは作れないか?/ニーズはないか?
「アイスクリームは夏に食べるものだ」→冬に食べたくなるアイスクリームは作れないか?/ニーズはないか?
「アイスクリームは寝る前には食べてはいけない」→寝る前に食べたくなるアイスクリームは作れないか?/ニーズはないか?
「アイスクリームには容器が必要だ」→容器不要のアイスクリームは作れないか?/ニーズはないか?
「アイスクリームは常温においておくと解けるものだ」→常温でも解けないアイスクリームは作れないか?/ニーズはないか?
「アイスクリームはダイエットの敵だ」→ダイエットに優しい(加速する)アイスクリームは作れないか?/ニーズはないか?

次回は、「新しい情報と組み合わせてみる」について検討します。

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