社会とどう折り合いをつけるのか―『シェアリング・エコノミー~Uber,Airbnbが変えた世界』 

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「シェアリング・エコノミー」という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないか。あるいは実際に利用したことがある方もいるだろう。具体例として、古くはeBayやヤフオクなどのネットオークション、最近ではカーシェアリング、Uberなどのライドシェア、Airbnbなどの民泊等のサービスが該当する。

本書は、シェアリング・エコノミーを「インターネット上の“プラットフォーム”で個人同士によって、モノやスペース、サービスなどが共有される経済活動」と定義した上で、「なぜ普及が加速しているのか?」「どのようなサービスが、どのような仕組みで展開されているのか?」「社会全体にもたらす影響とは?」等について、豊富な事例を織り交ぜながらわかりやすく解説している。そのため、シェアリング・エコノミーを理解するための入門書としてうってつけの一冊だ。

しかし、私が本書をおすすめする理由はそれだけではない。シェアリング・エコノミーの普及に伴い世界的に提起されているさまざまな問題についても紹介されており、「社会がこの新しい経済圏出現にどうやって向き合っていくべきか?」について大いに考えさせられるためである。シェアリング・エコノミーは消費者の立場からは利便性も高い一方で、社会全体でみると諸手を挙げて歓迎、とは簡単にはいかないことがよく分かるのだ。
 
具体的には、「需要の減少」、「労働者の搾取」及び「既存法規制との軋轢」等が挙げられている。需要の減少とは、カーシェアリングやライドサービス普及による新車購入需要の減少などが該当する。労働者の搾取とは、Uberを例に挙げると、ドライバーはあくまで個人事業主の扱いであるため、Uberは社会保険費など本来企業が支払うべきコストを負担しておらず、最低賃金など労働者としての権利も保障していないとの批判である。法規制との軋轢とは、例えば民泊のAirbnb等は既存のホテル等宿泊業、Uber等はタクシー等旅客運送業について、それぞれの営業ルールを定めた法律に抵触しており実質的にグレーゾーンの状態となっているとの批判である。

これらの問題点についは、世界的にも急ピッチで検討が進んでいるが、肝となるのは「既存法規制との軋轢」であろう。民泊もライドシェアも、需要は確実に存在する。ならばサービスを合法化してどんどん普及させればいいのではないか、と思うかもしれないが、一筋縄ではいかない。合法化には「従来の法規制にサービス内容を適応させる」と「サービス内容にもとづく新たな法規制をつくる」の2パターンあるいはその折衷案が考えられるが、落としどころが難しい。なぜなら、既存プレイヤーと新規プレイヤーそれぞれの主張が異なるためである。

私自身も、グロービス経営大学院の「テクノベートMBA」の開発に携わる中で、「ITテクノロジーの進化により誕生する新しいビジネスモデルと、法規制との折り合いをどう付けるべきなのか?」という点が気になっていた。シェアリング・エコノミーに限らず、既存の法規制の制定時は想像されていなかったようなビジネスモデルが今後も生まれてくるだろう。そこでは、何が論点となり、どう考えていくべきなのだろうか。

本書では、既存業界の規制をシェアリング・エコノミーのビジネスに適応させるべきではない、とのスタンスに立った上で、あらゆるステークホルダーの利害を調整しつつ「試行錯誤を経て規制の枠組みを作っていく」ことの必要性が述べられている。これは私も同感であり、直視すべきなのは「需要が確実に、しかも軽視できない大きさで存在する」という事実だ。日本について見てみると、民泊についてはホテルの逼迫状況は周知の通りで、2020年東京オリンピックに向けてますます深刻化することが予想される。ライドシェアについては、地方の過疎地域で高齢者の病院やスーパー等への移動手段確保が問題となっている。これらの需要を満たす、換言すれば社会的課題の解決のために、ITテクノロジーによるビジネスモデルが新たな可能性を提示している。であれば、その可能性をいかに活かすべきかの方向性にまず立って、ステークホルダーとの調整をしつつ法規制の整備を考えていくべきではないかと思うのだ。

本書を読んで、皆さんもぜひ考えてみてはどうだろうか。

『シェアリング・エコノミー ~Uber,Airbnbが変えた世界~』
宮崎 康二 (著)
日本経済新聞出版社
1,600円(税込1,728円)

 

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