「だから何」が付加価値生む 

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前回までに様々なデータ分析法を考えてきた。今回は分析データから意味のあるメッセージを「解釈」することをみていこう。

会議に参加した際、配られた資料がそのまま読まれているという場面に遭遇したことはないだろうか。例えばプレゼンテーション資料に、グラフと共に「対昨年比5%成長」と書かれているものを、「昨年に比べると今年は5%の成長を実現しました」とそのまま読んでいるような状況だ。

私は「文学情報の音声化」と呼んでいる。書かれたものは目で追うほうが速く、音にしただけでは付加価値は生まれない。「見れば分かるよ」との感覚だけを参加者に残してしまう。

野球のテレビ中継を想定してみよう。「ピッチャー、1球目を投げました。高めインサイド140キロのストレートです」。このコメントは1球目がどのような球であったかの事実を伝えている。もちろん、球種まで明確に分からないこともあるので、付加価値はゼロではない。知ること自体が難しい事実を知らせてくれたら、それ自体が価値になることもある。しかし、中継を見ている人の多くが聞きたいのは、その球の意味合いではないだろうか。

つまり、なぜこの状況で1球目にこの球を投げたのかを知りたいのだ。定性情報、定量情報などから、「だから何」を考え、そこで起きていることの意味を語ることを「解釈する」という。これこそが付加価値の源泉なのだ。

あなたが勤務する会社と競合しているファストフード店が、グラフのようなペースで店を増やしていたとしよう。この数字から何を解釈するだろうか。

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「4年間で600店舗増えた」というかもしれない。しかしこれは単に引き算をしただけだ。「1年間に150店舗、つまり2〜3日で1店舗オープンしている」ということかもしれない。

これは引き算の後に割り算をした結果、出てきた数字にすぎない。何か他に考えられることはないだろうか。出店するとはどんな営みだろう。店を出すためには、おおむねどのあたりの地域に出すのかのあたりを付け、地域の交通量を調査し、具体的に不動産を探し、その上で契約、内装工事、外装工事、じゅう器設置、従業員トレーニングなどをしなければならない。

これらをコンスタントに、超高速に展開するために不可欠な要素はなんだろう。「高速店舗展開ノウハウ」「キャッシュ」「実行する人」、この3つの要素が欠かせない。競合他社は高い確率でそれらを備えているだろうということが解釈できてくる。自社の状況と比較しつつ、競合があなたの店の近くに出店してきたらどうやって戦うのか。こんなプロセスを踏みながら、段階的に考えを深めていくことが真の解釈だ。繰り返しになるが解釈こそが付加価値を生むのだ。

良い解釈をするためには今まで解説してきたような論理思考力に加えて、ビジネススクールで学ぶ一般的な知識、自分自身が携わっている仕事に関する業務知識も大切になる。一朝一夕にトレーニングできるものではない。日々の努力を積み重ねていくしかない。

新聞を読むたびに「ああ、そうなんだ」と流してしまわずに「ということは、自社にどんな影響があるのだろう。ということは自分にどんな影響があるのだろう」と問いかける癖をつけるだけでもだいぶ違ってくるはずだ。「日経平均株価が300円上がったということは?」「為替相場で5円、円安になったということは?」。ぜひ毎日考えてみていただきたい。

※この記事は日本経済新聞2013年9月25日に掲載されたものです。
(Coverphoto:shutterstock/Ismagilov)

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