観光立国で日本の魅力を高め、訪日外国人3000万人を実現せよ! 

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初稿執筆日:2014年3月28日
第二稿執筆日:2016年3月2日


 2013年、訪日外国人観光客は、初めて1000万人を突破した。東日本大震災により一度急速に落ち込んだ外国人観光客が回復し、過去最高を更新した形だ。政府は、2030年に訪日観光客3000万人を超えることを目標に据えている。2013年の3倍という意欲的な数字だ。

 2013年の世界の外国旅行者数ランキングをみると、1位のフランスが8300万人、2位のアメリカが6700万人、3位の中国が5800万人と、世界の主要国は観光で経済を支えているのだ。(トップ10は、4位スペイン5800万人、5位イタリア4600万人、その後、トルコ、イギリス、ドイツ、マレーシア、メキシコと続く)日本は世界で30位と香港や韓国にも劣っている。

 2020年の東京オリンピック開催が決まった日本も負けてはいられない。豊かな自然や独自の文化、洗練された都市、世界から高く評価される和食など、潜在的な観光資源でいえば、日本は世界トップクラスに入る可能性を持っているはずだ。

 観光客増の価値は、人口減少傾向にある日本にとって、非常に大きい。滞在人口が増えることは、国内消費が増えることそのものだ。だが、観光立国は、日本経済再生に資するだけではない。訪日外国人の数が増え、日本の文化・生活・食材などを体験してもらうことで日本のファンを増やし、日本のブランド力、世界における日本の存在感や発信力、ひいては外交力を高めるものだ。

 本稿の初稿を世に出してから2年が経過したが、この2年間で訪日外国人数は飛躍的に増加した。政府公表によると訪日外国人観光客数は、2014年には1341万3467人、2015年は前年比47.1%増の1973万7400人で3年連続で過去最高を更新、世界ランキングも2014年で22位と大きく順位を引き上げている。まさに「行動」の成果が出ていると言えよう。

 ぜひとも、3000万人目標を早期に達成し、さらなる高みを目指したい。


1. クールジャパンを推進し、日本ブランドを海外へ発信せよ!

 クールジャパンに関しては、<100の行動13 経済産業編7「COOL JAPANの推進を」>に記載するとともに、<100の行動 55文部科学編9「2020年東京五輪を目標に、日本文化のすそ野を広げ世界へ発信せよ!」>においても日本文化の世界への発信に関連して取り上げた。ゲーム・マンガ・アニメなどのコンテンツ、ファッション、日本食、デザイン、ロボット・環境技術などのハイテク製品まで含めて、国家戦略としてCOOLな日本文化を海外へ力強く発信するべきだと「100の行動」で取り上げて以降、政府はクールジャパン推進会議などで強力にこの政策を進めており、大いに評価したい。観光立国という観点においても、COOL JAPAN政策に注力することは重要だ。

 観光立国との連動におけるポイントは、「アジア」と「ローカライズ」だ。外国人観光客を増やすためには、近隣であり、成長の著しいアジア各国が最大の顧客となる。そういったターゲット国に対して、ドラマなどのテレビ番組、ゲーム・マンガ・アニメ、ファッション、日本食、デザイン、ハイテク製品などの日本関連コンテンツのローカライズ(字幕・吹き替え・現地規格への対応等)を進めることが日本ブランドの浸透を促す。政府はクールジャパン推進のため、(株)海外需要開拓支援機構を新たに設立している。官庁と民間企業が連携して、クールジャパンと連動した海外市場でのプロモーションを徹底してほしい。


2. 日本へのアクセスコストを下げよ!

 外国人観光客が抱く最大の不満のひとつは、日本へのアクセスコストの高さだ。訪日外国人3000万人を達成するには、日本を訪れる外国人にとって玄関となる「空」が自由で、安いことが必要だ。そのための「空」の参入自由化に関しては、<100 の行動57 国土交通編1「「『空』の参入を自由化し、民間活力を活かせ!~東京オリンピックに向け首都圏空港の整備を!」>において詳述した。羽田と成田のキャパシティがボトルネックになっていた首都圏空港に関しては、羽田、成田の発着枠は市場原理を導入し、参入を自由化し、茨城空港を含めた3つの首都圏空港を一体運営して競争力を強化する。首都圏の成田・羽田の処理能力は、2014年3月に大幅に増加され年間75万回となったが、羽田のさらなる処理能力を求めたい。そのためには安全、騒音、環境への配慮をすすめながら都民の理解を得る努力が必要である。

 空港の運営に関しても完全民間開放することで競争力を高める。オープンスカイの徹底とLCCの参入促進で航空企業間の競争を促す。ビジネスジェットの利用環境を整備するなど、「空」の自由化を徹底して進めるべきだ。


3. 日本の観光資源を外国人に発掘・発信させよ!

 日本には、各地域に魅力ある観光資源が多数存在する。しかし、外国人にとってなにが面白く、興味を引かれるかは、当の日本人にはなかなか分からない場合が多い。

 外国人観光客にとって東京での最大の観光名所は築地だ。だが、こういう感覚は我々日本人には分からない。同様に京都の俵屋や吉兆は、外国人観光客からの人気が近年非常に高まっている。吉兆の外国人客は以前10%程度だったものが、最近は25%、4人に1人まで増えているという。

 佐賀県にある樹齢1000年を超える楠の大木も、ドイツ人ブロガーがブログで取り上げて以来、ドイツ人観光客の観光名所になっている。

 ニセコにオーストラリアからの観光客が激増していることは有名だが、この事例も、日本人目線では分からないニセコの良さをオーストラリア人が発見し、投資が始まったものだ。スキー場としての質や規模だけでなく、彼らにとっては、時差も少なく、温泉もあり、日本食も食べられることが魅力的な観光資源に映り、人気に拍車がかかったのだ。オーストラリアから観光客が来るようになると、地元も英語化など勝手に対応していく。地元にとっては、1泊だけで帰ってしまう日本人よりも、一週間宿泊する外国人のほうが上客だからだ。

 こういった外国人観光客からの人気スポットは、口コミで広がってゆく。インターネット時代の今日、外国人観光客による口コミの効果は絶大だ。外国人観光客を増やすため、日本人が良いと思うものを一方通行で海外に発信するのではなく、外国人に日本の良さを発見してもらい、勝手に発信してもらうという発想が重要だ。御立尚資氏の提案は、やる気のある都道府県を募り、ASEANから観光大使100名を招致し、彼らに2週間ほど自由に見てもらって、SNS等で発信してもらう。そしてそれらをメディアで広めていくことにより効果を生みだすのだ。

 観光庁もブロガーなどの招聘や、日本への留学生に情報発信してもらうためのインセンティブ付与などの施策を実行している。

 日本を訪れた外国人に、彼らの目線で、日本人は知らない日本の新たな魅力を発掘し、発信してもらう。日本人には当たり前でも、外国人にとっては、他人と一緒に入る温泉や、浴衣、旅館での部屋食、畳の上で寝ることなどが斬新であったりするわけだ。


4. ビザ発給要件の緩和を徹底して進めよ!

 政府は2013年7月から、タイとマレーシアの訪日観光客のビザを免除する規制緩和策を導入した。フィリピンとベトナムについても数次ビザを発給し、インドネシアは数次ビザの期間を15日から30日に延長する措置をとった。ビザ緩和の効果は極めて分かりやすく出るものであり、同年7月のタイからの訪日観光客数は84.7%も増加し、年間でも2012年の26万人から2013年は45万人にまで増加している。

 日本政府がビザを免除している国は、世界66カ国・地域におよぶが、アジアで訪日ビザ免除の対象国は、現時点でタイ、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、韓国、台湾、香港、マカオのみだ。もちろん、安全保障上の問題等もクリアする必要があるが、訪日観光客増大のため、最大限ビザ発給要件の緩和を進めるべきだ。

 特に、中国に関しては、ビザ発給要件の緩和で近年訪日観光客が増えたと言われるが、急増する中国人の旅行需要を日本に呼び込むにはビザ発給要件のさらなる緩和が極めて有効であるはずだ。2013年の訪日中国人は131万人で、東日本大震災前の水準に戻りつつあるが、中国人の訪日ビザの発給要件には「一定の経済力を有する者」という条件があり、中国人観光客は、訪日ビザを取得する際、在職証明書や、銀行の預金残高が5万元(約80万円)以上であることを証明する通帳のコピーなどが必要になる。

 2013年、海外に出かけた中国人は延べ1億人を数えるといい、豊かになった中国人にとって、海外旅行は最大の娯楽となっている。近くて便利な日本は人気も高い。日本から中国への場合は15日以内であればビザは免除されており、訪日中国人へのビザ発給要件の更なる緩和に大いに期待したい。

 本稿の初稿時点からの2年間における訪日外国人観光客の急増は、ビザ発給要件緩和によるところが大きい。2014年以降も政府は立て続けに、ミャンマー、インド、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ブラジル、そして2015年には中国に対して、ビザ要件の緩和を進めている。その結果、「爆買い」で有名になっている訪日中国人観光客は、2013年に131万人だったものが、2014年には249万人、2015年499万人へと激増している。政府の行動を大いに評価したい。


5. 国際会議等MICE分野の国際競争力を強化せよ!

 日本の魅力を世界に広める上でMICEに力を入れることは極めて重要だ。高い発信力・経済力をもつ世界の要人を集められるからだ。例えば、フォーブス・グローバルCEO会議には、ビリオネアが10人、ハーフビリオネアが20人参加している。それだけでも、計り知れない経済効果があると言えよう。

 教科書的な説明を念のため付け加えれば、MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称だが、MICEの誘致・開催の推進は、経済波及効果、ビジネス機会創出・都市のブランド力向上などの意義を有すると一般的にも言われている。

 しかし、日本では一度もフォーブス・グローバルCEO会議は開かれたことはないし、ダボス会議の東アジア会議も、2006年以降日本での開催はない。国際会議協会(ICCA)統計をみると、2012年の日本の国際会議件数は341件であり、世界で第8位、アジアで1位だが、これはパブリックセクター主催の国際会議のみであり、MICEのうちのCのみで、ビジネスイベントが含まれていない。

 外国人観光客数が世界トップのフランスでは、パリにおける国際会議開催が世界一であり、政策的にMICEに力を入れているといえる。日本の政府は、「2030年にはアジアNO.1の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という目標を掲げ、2013年に「グローバルMICE戦略都市」として5つの都市(東京都、横浜市、京都市、神戸市、福岡市)、「グローバルMICE強化都市」として2つの市(大阪市、名古屋市)を選定、2015年には追加的に「グローバルMICE強化都市」として5自治体(札幌市、仙台市、千葉県千葉市、広島市、北九州市)を選定しているが、日本もMICE招致に本格的に取り組む必要がある。

 3つのポイントを挙げよう。

 1つめは、政府や自治体が大胆に助成金を出すことだ。マレーシアや香港、シンガポールでなぜMICE開催が多いかといえば、国が国策として助成金を出していることが大きい。日本でも東京都などでMICE開催に助成金をつけているところもあるが、機動性にかける。MICEの経済効果を考えれば、規模に応じて数千万~1億円程度の助成金を出しても十分ペイするだろう。より機動的な助成金制度を用意して、国際的なMICE獲得競争へ対処すべきだ。

 2つめは、トップリーダーの姿勢だ。MICEの日本開催を歓迎している姿勢を世界に向けて発信してほしい。国際会議の冒頭で、総理大臣が挨拶にきてくれるだけでいいのだ。韓国やシンガポールなどでは国のリーダーが出てくるのが普通だ。多忙であればビデオメッセージでもいいかもしれない。日本でも最近は、国際会議の誘致のために総理直筆サイン入りのレターを出して、それが成功していると聞いている。とにかく、海外の人を「おもてなし」する姿勢を政府・自治体のトップが共有してほしい。

 3つめは、外国人受け入れ環境の改善だ。日本でも英語化は以前と比べればだいぶ進んだが、他言語化はまだまだだ。また、訪日外国人が最も当惑するのは、日本では空港や駅、会議場などでのネット環境が悪いことだ。MICE招致に限ったことではないが、そういった公共施設における無料Wi-Fi環境を大幅に広げるべきだ。

 中国や韓国、シンガポールなど、アジアの競合他国はMICE誘致に積極的に取り組んでいる。日本においても、MICE招致に真剣に取り組むべきだ。


6. カジノを中心としたIR(統合型リゾート)の解禁を!

 シンガポール政府は、それまで禁止してきたカジノの合法化によるIR導入に向けた検討を2004年から開始し、国民的議論を経て、2005年にカジノを含んだIR の開発計画に踏み切った。その結果、2010年にはカジノ、高級ホテル、会議施設、商業施設を併せ持つ複合施設「マリーナ・ベイ・サンズ」などが開業し大いに賑わっていることは、日本でも有名だ。シンガポールでは、カジノの解禁によるIR導入が観光振興、雇用・経済に絶大な効果を発揮している。

 そのマリーナ・ベイ・サンズを開発した世界最大のカジノ運営企業ラスベガス・サンズが、2014年2月、日本進出のために事務所を開設した。日本に100億ドル(約1兆円)を投資する用意があることも明らかにしている。これは、東京が2020年オリンピックの開催都市に決定したことを受け、急速にカジノ合法化への期待が高まっているためだ。

 シンガポールの事例でも、ラスベガスやマカオでも、カジノはIRの一部に過ぎず、MICEやショッピング、ショーなどのカジノ以外の分野の経済効果が大きいのはよく知られている。カジノの負の面ばかり強調するのではなく、観光立国のため、ぜひともカジノ合法化とIRの導入を行うべきだ。

 海外からの観光客誘致を主眼としていることを明確化する意味で、シンガポールの事例に習って、当面は国内からの入場者にはカジノ入場料金を高めに設定することも検討に値する。シンガポールでは、外国人のカジノ入場料は無料だが、国内の人には100シンガポールドル(約6000円)が課される。そういった工夫も制度導入を円滑化するためには必要かもしれない。

 順調に手続きが進めば、東京オリンピックに間に合うだろう。東京、大阪、沖縄の3カ所でIR開発が進めば、投資効果も大きく、外国人観光客も大幅に増え、税収も上がる。この10年、日本におけるカジノ合法化は浮き沈みを繰り返してきたが、ぜひとも一刻も早く法案を成立させて欲しい。


7. 観光産業の生産性を上げよ!

 観光立国を実現し、観光を日本経済のけん引役のひとつにするには、「観光産業」の強化という視点が必要だ。

 日本の観光産業は生産性が低いといわれる。日本の旅館、ホテル業は、アメリカのホテル業などと比べ27%の労働生産性しかないというデータもある。自動車産業などでは人間の歩幅、歩数まで考えて生産性を向上させているにも関わらず、旅館では効率性がまるで重視されていないのだ。なぜかといえば、一つには日本の旅行業の事業規模が小さすぎるという点がある。アメリカでは、所有と運営を分離し、Westin、Hilton、Sheratonなどは運営に特化して規模化し、Inter Continental、Holiday Innのように所有も運営もせず、予約システムに特化して集客にスケールメリットを効かせる企業も出てきている。

 このため、旅行産業の規模化が必要だ。日本でも、星野リゾートはゴールドマン・サックス・グループとアセット・マネジメント会社を合弁で設立し、規模化を進めている。規模化して生産性を上げ、利益が出る体質ができれば、投資も拡大していく。投資が進めば、人材も集まり、競争力もさらに高まる。

 この「行動」で述べてきた通り、観光立国として日本の魅力を高め、訪日外国人3000万人を実現する有力な方策がいくつある。

 2013年10月より放映された番組である「ニッポン未来会議」の第10回目は、「海外から人を呼び込め!ニッポンのインフラ・観光」だった。活発な議論が繰り広げられたので、こちらの動画も、この100の行動に加えて参考にして欲しい。

まさに、「ニッポンの未来を決めるのは、あなたたちだー!」なのである。

 


 

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