「白ブリーフ」から次のヒットを読み解く 

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「白ブリーフ」から次のヒットを読み解く

男性なら子ども時代、多くの人がお世話になったであろう白いブリーフ。だが、オトナになって履くと「オヤジっぽい」「女性にモテない」とネガティブなイメージがついて回り敬遠される存在となる。

白ブリーフは1930年代にアメリカで生まれ、爆発的なヒット商品となり、日本には1950年代中ごろに広がった。汚れを吸着する実用性と締めつける着用感で長く男性用下着の王道だったが、80年代中ごろに入り、一気にトランクスに取って代わられた。

「お母さんに下着を買ってもらう未熟さの象徴」として女性の間で不人気も高まった結果、その地位は凋落し、90年代終わりにトランクス型のボクサーブリーフが登場すると、すっかりその姿を見なくなってしまった。

ところが、昨今復権の兆しがあるという。

「節電の影響もあり男性用白いブリーフの需要が徐々に増加中」(週刊ポスト2011年9月16・23日号)

上記記事では「見た目の涼やかさ」や「薄い色のパンツでも透けない」など、夏季限定で売れた要素とともに、恋愛コラムニストの菊池美佳子氏のコメント「シミや汚れが目立ちやすいからこそ、白いブリーフを履きこなすには、清潔さと絶対に汚さないという自信が求められます。逆に白いブリーフの汚れを気にしないというなら、きっとワイルドな魅力を持つ男性に違いありません。私は白ブリーフを穿きこなす男性に、雄々しさを感じます」を紹介、「白ブリーフブーム到来か」と結んでいる。

週刊誌の書くことだから、とも言い切れないデータがある。

白ブリーフが、「ファッションセンターしまむら」の肌着売り場で、前年比10%増のペースで売れ続ける隠れたヒット商品になっているというのだ。(日経MJ2011年10月7日)。同社担当者は、「業界が合成繊維一辺倒になった余波」だと指摘している。同記事のタイトルは「ヒートテック全盛時代に・・・あえて綿肌着を売る/中高年は肌触り重視“置き去り市場開拓”」とある。

ユニクロを傘下に持つファーストリテイリングは猛暑の続く8月25日に、2011年秋冬シーズンのヒートテックの販売目標を発表した。前シーズンの8000万枚から25%増とし、何と1億枚の大台に乗せるという。目標をクリアするため商品の魅力もさらに高めた。男性用には消臭、女性用には保湿と軽量化の新機能を加えたのである。

ヒートテックを追撃せんと、大手流通もこぞって機能性肌着を展開する。そんな中、上記記事では京王百貨店のヒット商品「天使の綿シフォン」を取り上げている。07年から扱う綿100%のカットソーで、1商品で30枚売れればヒットという相場の中、今年9月に200枚が売れたという。ヒートテックとは桁がいくつも違うが、口コミで人気が拡大し、いまでは衣料業界関係者が視察をかねて買いに来るほどだとある。

機能性だけが下着の価値じゃない?

モノゴトは、一方に振り切った時にはその反動が出る。「反動需要」だ。「メガフードブーム」が顕著な例である。2007年に「メガマック」が人気を集め、2008年頃には牛丼、コンビニ弁当、カップ麺など様々な食品に飛び火した「メガブーム」は、健康志向の高まりや2008年度から法制化された「メタボ検診」などへの反動的需要であるといえる。

その文脈からすると、「ファストファッションバブル」もそろそろ崩壊するのではとも考えられる。

10月5日付日経MJには、『スペンド・シフト—<希望>をもたらす消費—』の著者ジョン・ガーズマのインタビューが掲載されていた。「消費者が企業やブランドに求めるものとして、05年から09年までの間に減退したのが、神秘的で謎めいていること、自信に満ちていること、感性的、トレンディー、グラマラス(性的魅惑)などの要素。逆に大きく上昇したのが親切で思いやりがあること、高品質、フレンドリー、社会的責任などだ。特に親切さを期待する人は数倍にも増え、私たちも驚いた」といい、具体例として、「途上国や貧困層への支援をこつこつと続けてきたマイクロソフトへの評価はアップルよりも高い。政府の支援を受けず頑張るフォードも、GMなどより支持を広げている」ことを挙げた。

ガーズマ氏によると、スペンド・シフトを実践する消費者は、米国で54.5%、日本48%、英国44%、フランス53%、ドイツとイタリアは45%、シンガポール44%。消費者が今までの消費スタイルを見直し、内省モード(自分探し)に入っていることがうかがえる。

この社会や世界のシステムは、一国の市民が民主主義政治を通じて影響を及ばすには、巨大すぎるものとなってしまった。一方、消費の力は強い。一つ一つの買う行為が投票行動であり、私たちの住む社会の行く先を決める手綱となりうる。そのことを、消費者が理解し始めたとも解釈できる。

「身の丈消費」という点ではファストファッションはリーマンショック後の価値観に合致しているが、大量画一生産・消費=使い捨てという側面は支持され続けるか、大きく疑問だ。廉価であることが重要なのではなく、消費者が納得できる価格とストーリーのある中小ブランドが台頭してくる可能性が考えられる。例えば、「マザーハウス」。途上国の貧困克服のため、バングラデシュのジュート(麻)やレザーを用いて作った高品質なバッグを製造・販売する同社のような存在がもっと活躍するようになるかもしれない。

昨今の民主党と自民党のマニフェストではないが、世論=消費者のニーズに応えようとすれば、自ずから、その内容は似てくる。現に、ユニクロのヒートテックを模倣したPB製品が世の中を埋め尽くしている。そこに、新たなヒットの兆しは見えないだろうか。下着の楽しさ、身につける快楽は本当にどこにあるのだろうか。倫理的に、あるいは、美的に、良い製品とは何だろうか。機能的なだけが、価値だろうか。

ヒット商品を作りたければ、ヒットの「反対側」を見ることも重要だ。そして、「逆張り」をする。真逆の理念や美を訴求する。次のブームを読むには、まずは一つの方向に振り切った状態を見つけることから始めたい。

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