論点を把握する(17)〜最終的に創りたいファシリテーターの頭の中の状態とは〜 

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ここまで「仕込み」の核である、「論点の把握」を見てきました。こんなにたくさんのことを考えるのか!と、びっくりされた方、とてもそこまでは考えられないと感じた方、もしくは、このように考えすぎると、実際の会議でそれらを再現することに力が入ってしまい、かえって自然な対応ができなくなるのではないか、などと感じられた方もいると思います。

そこで、これまで考えてきた仕込みを踏まえ、最終的にファシリテーターがどのようなことを意識して議論の場に臨むべきか?を、簡略にまとめ、お伝えしたいと思います。

「大事なことだけ」を頭に刻む

仕込みにおいて幅広く丁寧に論点を洗い出していても、それをそのまま記憶することは無理ですし、必要でもありません。頭の中にたくさんのことを詰め込んで、それを会議の中で全て扱おう、これまでご説明してきたような考え方通り、詳細な流れ通りに進めようすると、臨機応変に対応することができなくなると同時に、参加者の話をしっかり聴くというファシリテーターにとって最も重要なことができなくなってしまう懸念もあります。

仕込みで詳細に論点を検討しても、そのままの状態で会議の場に臨むのではなく、自分の頭の中を一旦整理し、現場での対応ができる状態にしておく必要があります。より具体的には、頭の中に置いておくのは、「絶対に忘れてはならない大事なことだけ」に絞り込み、それだけは絶対に忘れないように強烈に頭に焼き付けておくようにします。

では、「絶対に忘れてはならない大事なこと」とは何でしょうか?それは、「議論の到達点」「重要な論点とその関係」です。

「到達点」の重要性は改めて繰り返す必要は無いでしょう。議論の最初から最後まで、ファシリテーターは到達点、つまり「この会議の様々な議論は結局何を実現するためのものなのか?」を常に意識し、決して見失わないようにすべきです。

「重要な論点」とは、合意形成をする上で必ず考えなければならない点、特に意見が分かれる論点です。こうした論点を「論点相互の関係を構造的に、地図のようなイメージで捉えておく」ことが重要です。

「論点の地図」を拡大・縮小しながら議論の位置を把握する

論点相互の関係には、「上下の関係」と「前後の関係」とがあります。「上下」とは、大きな(抽象度の高い)論点と、それを具体化・細分化した論点という関係です。これは前に詳しく説明しましたので、ここでは主に「前後の関係」について説明しましょう。「前後」とは、考え、議論する順番のことです。この「順番」には、(1)段階的に議論する(Aの論点を議論し合意を導いたうえで、Bの論点を議論する)必要がある場合と、(2)順番には拘らなくて(A・Bどちらの論点を先に議論しても)よい場合があります。

たとえば、「ある部品の調達先をどこにするか?」を議論するとしましょう。「その部品が備えるべきスペックは何か?」と「どの会社から調達するか?」という二つの論点は、どのようなスペックかがまず決まらなければ、どの会社から調達すべきか?(どこが候補となり得るのか?何を重視して選択するか?)が決められないので、これは「前後の関係」にあります。

実際の議論では、話の順番が逆になることもありますが、本来前後の関係にある論点を逆に議論していると、結果的に結論が出せなくなるので、適当な時点で前に戻るよう順番を修正することになります。こうした判断をする上でも、「前後の関係」を把握しておくことは不可欠です。

一方で、具体的に調達先を決定する上での判断ポイントになる「品質はどうか?価格はどうか?納期等の条件はどうか?」といった論点については、議論の順番はある程度の自由度があります。

これらを考えながら、最終的には、横軸に「論点の前後関係」、縦軸に「論点の上下関係」をとる二次元の「論点の地図」のような形で論点を構造化して捉え、この骨格だけは絶対に忘れないように頭に入れておく、手元のメモとして持っておくなどするとよいでしょう。この地図を持つことで、会議の現場で、今話し合われている議論はどの段階なのか?どのレベルの議論をしているのか?がイメージとして理解でき、迷子になって行き先を見失ってしまう事態を避けることができます。

「論点の地図」を描き、頭に入れておくと、議論の場で様々なことができるようになります。

まず、様々に出てくる意見が、そこで議論すべき様々な論点のどこに該当するのか「位置づけ」をしやすくなります。それにより、今どこにいて、これからどこに行くべきかが把握でき、ファシリテーター自身が「迷子になる」ことを避けることができます。

次に、仕込みにおいて考えた様々な詳細な論点を、この「論点の地図」をインデックスとして、記憶の倉庫から引き出せるようになります。事前に一度、広く、深く、具体的に論点を考えていれば、全て記憶していなくても、「論点の地図」をきっかけに、詳細な論点を想起しやすくなります。こうした状態を頭の中につくっておくと、ちょうどWeb上の地図のように、縮尺を変えながら、全体を俯瞰しつつ、必要に応じ特定の部分にズームして論点の詳細を捉える、そしてまた高い視点に戻って全体を見渡すことができます。こうした頭の状態をつくること。これが仕込みのゴールです。

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