攻める!「ウィルキンソンジンジャエール」の深謀遠慮 

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オトナの味「ウィルキンソン」が本腰入れてペットボトルで登場

オトナの炭酸飲料の代表格を1つ挙げるとすれば、それは間違いなく「ウィルキンソン」だ。アルコールの「割り材」としての炭酸水やトニックもあるが、「なるほど!ジンジャーエールって、ショウガが辛いんだ!」と初めて飲むと驚く「ドライジンジャエール」は特にオススメだ。日本では圧倒的なシェアを占める「カナダドライジンシャーエール」の甘さに慣れた舌には強烈な刺激を感じるだろう。

ここで知らない読者も多いと思うので、ウィルキンソンの歴史をおさらいする。ウィルキンソンと聞いて、若い人は外国ブランドと思うかもしれないが、れっきとした国産なのだ。2007年9月5日付大阪読売新聞の記事『宝塚生まれ「ウィルキンソン」愛され103年、炭酸飲料』によると、『始まりは大日本帝国憲法が発布された1889年ごろにさかのぼる。英国の実業家クリフォード・ウィルキンソン(1852〜1923)が有馬郡塩瀬村生瀬(当時)で狩猟中、炭酸鉱泉を発見。ロンドンの試験場で分析したところ、「世界的に優良な鉱泉」とお墨付きをもらい、1904年、瓶詰にして「ウィルキンソンタンサン」と名付け、国内外で販売を始めた』とある。

以来、カクテルを作る際の炭酸水として、バーやホテルのラウンジで長く愛されてきた。現在はアサヒ飲料が製造、販売しており、炭酸水以外にも、ショウガの風味が濃いウィルキンソンブランドのジンジャエールが、“大人の味”として、渋いオトナの間で楽しまれてきた。

さて、飲料の主な販路(チャネル)は、消費者にとって目に付くところでは自動販売機とコンビニエンスストアだろう。各々の販売シェアは35%と25%。では、残りはどこのチャネルなのかといえば、量販店やスーパーだ。2リットル大型容器まで含めれば、総販売量でのシェアが大きくなる。そして、もう一つ忘れがちなのが、料飲店である。

冒頭の筆者のダンディーな友人のような下戸にノンアルコール飲料は欠かせない。いける口にはカクテルに早変わりだ。ジンジャーエールを用いるカクテルといえば、ウォッカとライムジュースを加えて「モスコミュール」が作れる。ジンとレモンジュースを加えれば「ジンバック」。ジンをラム酒に変えて、砂糖を加えれば「ボストンクーラー」のできあがりである。割り材としてカクテルに用いられる幅は広い。

そんな夜の街から明るい日の光の下に躍り出たのが、「ウィルキンソンジンジャエール辛口PET500ml」だ。6月14日に全国発売された。500ml以下の小型容器飲料の主要チャネルであるコンビニの店頭を狙っている。

料飲店で出される商品と何が違うのか。「ウィルキンソンジンジャエール」といえば、緑色の小瓶が有名だ。容量も190ml。しかし、容器・容量の違いだけではない。オトナにうれしい「カロリーゼロ」なのである。

しかし、商品のラベルを見ると「0」とか「ゼロ」の表示はない。成分表示を見なければわからない。なぜ、アピールしないのか。そこにはアサヒ飲料の戦略があるのだ。

ウィルキンソンが狙うミキサードリンクとしての棚

コンビニエンスストアの飲料の棚を見ると、ここ数年で変化を感じないだろうか。2007年3月27日に発売された「ペプシネックス」を皮切りに「カロリーゼロ炭酸飲料」ブームがわき起こった。しかし、今日、棚を見るとどうだろう。飲料のラインナップに最もコンサバティブなコンビニチェーンは、筆者はセブン-イレブンだと思うのだが、そこにあるカロリーゼロ炭酸飲料は定番の「ペプシネックス」「コカコーラゼロ」「C.C.レモンZERO」くらいだろう。つまり、一過性のブームで登場した商品の多くは消え去っている。

ブームに遅れて乗った商品と見られたくない。そんなアサヒ飲料の意志が感じられる。

アサヒ飲料はかつて、「大人炭酸シリーズ」として第1弾「アサヒグリーンコーラ」を発売した。CMに出ないことで有名な大ロックスターの氷室京介を起用し、大きな話題をさらった。続く第2弾ではジンジャーエール風の「アサヒドライスパークリング」を発売した。しかし、これは第1弾ほどの話題にはならなかった。「アサヒドライスパークリング」は「ハードでドライな刺激・大人の辛口炭酸」であると同時に「カロリーゼロ・糖質ゼロ」をウリにした。その商品との同一視を避けたいという意向もあるのだろう。

アサヒ飲料の「ウィルキンソンジンジャエール辛口」にかける意気込みは本気だ。

ニュースリリースを見ると、前出の「アサヒドライスパークリング」の販売目標数は30万ケースであった。その目標数字は、サントリー食品が昨年まで毎年、ブランドとしての話題喚起のために発売していた、「ペプシしそ」や「ペプシバオバブ」といった「変わり種ペプシ」とほぼ同数である。しかし、「ウィルキンソンジンジャエール辛口」の目標はおよそ200万ケース(NRをみると、目標「500万箱(ブランド全体)」とあるので、「2010年の販売数量は2007年比181%(291万箱)と大幅に拡大」との記述からすると、ペットボトルの目標値は約200万ケース)だ。

アサヒ飲料はどこで勝負をかけるのか。

飲料業界トップの日本コカ・コーラの力の源泉は、自販機の保有台数だ。日本に290万台あるといわれているうちの98万台を占める。サントリーは44万台。アサヒ飲料は大きく遅れて23万台である。今日、日本の自販機は完全に飽和状態にある。もはや好立地に設置することは難しい。しかし、自由に商品を展開でき、定価販売できて利益率が高いといううま味も捨てがたい。悩ましい選択である。

「ウィルキンソンジンジャエール辛口」はコンビニで勝負をかけるはずだ。自販機の台数で劣後しているからだけではない。理由がもう1つある。それは、コンビニの店内には飲料とアルコールが併売されているからだ。

実は、商品パッケージには「ゼロ」の表示が目立たない代わりに、裏面にしっかりと「割り材としても。」と書かれている。何も「モスコミュール」「ジンバック」「ボストンクーラー」などの「オシャレにカクテルを作ろう!」といっているワケではない。コンビニで安く手に入る「ホワイトリカー(焼酎甲類)」を割るだけでいい。もしくは、アルコール度数が8%以上の「ストロング系チューハイ」を割って軽くしてもいい。そんな飲み方を密かに推奨しているのだ。

アサヒ飲料のグループ会社であるアサヒビールには自社のウィスキー「ブラックニッカ」を使った缶入りの「ブラックニッカクリアハイボール」がある。しかし、ハイボールブームの火付け役であるサントリーの後塵を拝した状態であるのは否めない。世の中はビールのしっかりした飲み応えよりも、スッキリ系のハイボールやカクテル、チューハイがブームであるのは間違いない。その流れにしっかり乗りたいという意図が「割り材としても。」というひと言には込められているのである。自販機で購入して、家に持って帰ってカクテルを作るという消費者行動は考えがたい。故に、コンビニが主戦場なのである。

飲料がコンビニの棚に並ぶには、2段階のハードルがある。チェーン本部が扱いを決めることと、フランチャイズのオーナーが本部に発注することだ。初回ロットはメーカーと握った本部の押しと、メーカーがマージン率を通常より1割ほど高く設定することもあり、店頭に多めに並ぶ。事実、6月24日付日経MJに掲載された商品ヒットチャートでは、初登場で6位に入っている。

第2回発注分から通常のマージン率になるので、そこからが本当の勝負だ。今後、どのように健闘していくかウォッチしてみよう。まずは、その辛口を楽しみながら。

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