食べるラー油戦争勃発!桃屋VSエスビー食品 

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桃屋が火をつけた食べるラー油ブーム

2009年8月に「食べられるラー油」をコンセプトに発売された、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」。今なお、店頭では品薄が続き人気沸騰中である。そんな商品に対抗してエスビー食品が参入してきた。「食べるラー油戦争」はどうなっていくのか?

2月末あたりからTwitterやSNS、または個人Blogで、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」の愛称である「桃ラー」というキーワードが激増している。書き込みの内容を見てみると、ようやく生産が追いつき始めているようで、購入して試すことができた人が感想を書いてさらに口コミが拡大しているようだ。依然、というより一層大人気になっている。

「桃ラー」はフライドオニオンとフライドガーリックを大量に用いて、そのまま食べてもサクサクとした食感で美味しいのが特徴だ。「ご飯にのせて食べた」「パンにも合う」「パスタに合わせると絶妙!」と、書き込みを見ると、様々な使用用途が開発されているのがわかる。

元来はラー油など餃子のたれを作る時ぐらいしか使わず台所の調味料入れに入っていない家庭も多かったはずだが、折しも、不景気で内食志向が高まっている中、絶妙なネーミングで登場し、「食べてみたら美味しかった!」というギャップ感が受けて大ヒットした格好だ。

食に対する嗜好の変化も追い風になっているようだ。2010年3月12日付日経MJの記事「辛味と旨みのヒット関数」が日経レストランが今年1月に行った調査を紹介、「辛味」について、「以前よりやや強く、あるいは強く好むようになった」と回答した人は全体の23.0%とほぼ4人に1人の割合となった。昨年の調査では15.3%だったので、7.7ポイントの増加となると辛みが好まれており、また、「旨み」も同じ回答が23.4%にのぼる。昨年の調査では15.3%だったので、7.7ポイントの増加となると、旨みも同時に嗜好されていることが示されている。

そんな桃屋の「辛旨」成功を見て猛追してきたのが、スパイス分野で長年トップの座を守り続けているエスビー食品である。3月23日発売予定の「ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛」。年間売上高3億5000万円を目指す(J-CASTニュース3月9日)と強気である。

エスビー食品の猛追

「ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛」の戦略を見てみよう。

まず、Product(製品)は、フライドガーリックやフライドオニオンが用いられているのは「桃ラー」と同様だが、差別化要素としてアーモンドが入っているのが特色(同)という。

Price(価格)は一つの勝負所のようだ。桃屋のラー油が110グラム400円前後で売られているのに対し、エスビーのラー油は同量で希望小売価格330円(同)だという。

ここまでで考えると、エスビーは桃屋に対して後発なので製品に少し特徴を持たせて価格を2割弱安く設定して対抗するように見えるが、もう少し考えると真の狙いが見えてくる。

3C分析的にCompetitor(競合)である桃屋と、Company(自社)エスビー食品を見比べてみよう。資本金こそ桃屋約19億円、エスビー約17億円だが、エスビーは上場会社である。売上高は桃屋約137億円、エスビー約1132億円、従業員数は桃屋308名、ヱスビー1179名と規模が大きく違う。

規模の違いはどこに出るか。例えば、エスビーには東京・板橋区に「スパイスセンター」施設があり、研究開発に注力している。「桃ラー」の大ヒットを見てからの開発であったのかは定かではないが、短期間での製品開発力が高いのは確かだろう。また、ラインを調整すれば、大量生産する力もある。

モノ作りだけではない。幅広い製品ラインナップを持っており、チャネルへ働きかける力も強い。記事にも流通側からも弊社への期待があったので、今回新たに発売することになりましたと広報担当者のコメントがある。

3CのCustomer(顧客)はエスビーにとってはPlace(チャネル・販路)と、そこで購入する消費者の両方を意味するが、まずチャネルからの要請もあり、大量に商品を店頭に供給して棚を確保することが可能である。そして、「桃ラー」の品薄で買えない消費者がいることから、商品を手に取らせることも可能であろう。

Promotion(コミュニケーション)はどうか。「桃ラー」はロックバンド・怒髪天の増子直純を起用したCMで注目を集め、それもヒットの大きな要因になった。しかし、店頭で品薄となって、「CMを見ても買えない!」という状況を回避するために自粛をしている。現在、増産が追いついてきたようだが、まだ、チャネルによってはまだら模様の状況だ。CM全面解禁にも踏み切れないだろう。エスビーのラー油は22日発売とのことなので、恐らく発売と同時に広告の大量投下が予想される。

規模に勝る企業がその体力を活かして「同質化」を仕掛けるのは戦略の定石だ。このままだと「桃ラー」はエスビーの追い上げでピンチに追い込まれることになる。

但し、FMA(FirstMoversAdvantage:先行者優位)は「桃ラー」にある。ネットを通じてしっかりブランディングができている。比較されても「元祖」を選ぶ消費者も多いはずだ。

価格面での不利はいずれ値下げか増量で調整するとしても、まずは本当に手に入らない「幻の商品」で終わってしまうのではなく、増産を進めて配荷を順調にするのが勝負の土俵に残る条件だろう。ここ、1〜2週間が勝負のしどころであることは間違いない。

練りに練った新商品で新たな市場を開拓したとしても、圧倒的規模を持つリーダーに模倣をされたとき、シェアを維持できるのか。対策はどうするのか。新規事業やベンチャー起業に携わる人にとっても、参考になる戦いだろう。

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