人間はロボットに近いのか?それとも動物に近いのか? 

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08年全米NO.1に輝いたコミカルな最先端学術書

本書は2008年、アマゾンコムにて読者が選ぶ経済書の第一位に輝いたベストセラーだ。内容は13章の素晴らしい論文からなるが、その中でももっとも魅力的な章の紹介を、著者自身の口調をまねて書くとしたら、こんな感じかもしれない。

——プラセボ(ニセ薬)効果というものをご存知の方も多いのではないか。お菓子のラムネを頭痛薬だと言って10人に渡すと8人ぐらいの頭痛が実際に治るというものだ。「騙して治したのか!」と単純に怒り出す人もいるかもしれない。中には賢い人もいて「騙される人はどうかしている。パブロフの犬じゃないんだから。本物の医者を呼べ」と言うかもしれないが、真実を話すと、ごく最近まで、医術の世界ではヒキガエルの目玉やミイラの粉などで万病を実際に治癒してきたのであり、日本ではイワシの頭を使った例もあるそうだ。とすれば、そのおかげで現在の私たちがあるのだ。さすがに現代ではそんなことはないだろうと一笑に付す人もいるだろうが、それは早計だ。ニセ薬などはかわいいほうで、ニセ手術だって現に行なわれている。では「今までに効果があった」という以外に、その治療を信じる理由を具体的に挙げられるだろうか。再び疑われることに怯えながらも思い切って言うと、ニセ薬の世界においてすら、「品質の差」はあるのだ。例えば、一粒五円のラムネと百円のラムネでは、百円のラムネのほうが、はるかに頭痛に効く。であるから、医者が不必要に高価な薬を処方するのは、不正に儲ける行為に見えて、実は「医の仁術」の可能性もある——

最新経済学で証明される「暗示の力」と「人間らしさ」

著者のダン・アリエリー氏は、この考察により、「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に贈られるイグ・ノーベル賞(ノーベル賞のパロディ版)を08年に受賞。この賞は、ノーベル賞受賞者も多数出席し、08年に本物のノーベル賞に輝いたポール・クルーグマン氏も過去に講演歴があるという骨太なものなのだが、経済学が「笑い」にもなり得る可能性を示した一方で、「心理と経済の関係の密接さ」を驚くべき洞察の深さで突き付ける。

旧来の経済学では、人はまるで計算が完璧なロボットのように常に賢く判断し選択する存在とされた。しかし著者は絶妙な実験を駆使し、「『2個を5割引』と『1個おまけ』は大違い」「3つあったら真ん中のものを選びやすい」「自分が持っているものは他人のより14倍価値がある」など、心理状況次第では大多数の人の合理的判断が歪んでしまうことを示し、そして自分自身もそうだと告白している。

「責任ある父親の私が、ミニバンを買おうと家を出たのに、結果的にはアウディの赤いスポーツカーを買ってしまった。後悔している」

賢い人なら気になってしまう無数の罠、それを指摘する怖い本ではある。が、やはり人間が長い歴史の中で同じようなことに引っかかり続けるのにはそれなりの理由もあるのだと考えると、この本は人間の性と、そしてかわいらしさの証明の書とも読めるのである。

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