リーダーの責任 真の自立に向けて(『自問力のリーダーシップ』再掲載・後編) 

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勤め先が倒産の危機。そのとき、リーダーとして、一人のビジネスパーソンとして、どのように自己を律し、振舞うべきか――。TV脚本家による「ドラマ仕立ての物語」と、模擬授業のような「ライブ解説」でリーダーシップを醸成する書籍『自問力のリーダーシップ(グロービスの実感するMBA)』(グロービス・著、鎌田英治・執筆)から、前回は、第5章「リーダーの責任 真の自立に向けて リーダーに求められる気構え、意識、姿勢」に収録の物語を特別に再掲載しました。これに続き今回は、執筆者が自らの経験を踏まえ、こうした苦難を乗り越える気構えについて説いた同章の解説部分を掲載します。書籍には、このほか様々なシチュエーションの物語と解説を掲載していますので、是非、そちらも手に取ってご覧ください。

(2. Lecture)ケース解説とリーダーの行動要件

第1章から第4章までは、リーダーの行動に着目し、「リーダーシップ発揮の行動プロセス」に則って要所となるリーダーの行動技術について解説してきました。

本章では、そうした行動技術のベースとなるリーダーの気構え、意識、姿勢について、第1章から第4章までのケースも再確認しながら、あるいは私自身の経験や思いも交えながらご説明したいと思います。

リーダーに必要な気構え

本章のケースはご想像の通り、私自身をモデルとして書かれています。関係者の言動や状況設定などに脚色を施してはいますが、私自身が当時考えたことは、ほぼそのまま主人公である高杉の言動に反映しています。

本章では、これまでの4章とはフォーマットを変え、まず、私自身の経験と、そこで感じたことについて書かせていただきます。

(1)自分自身の経験から感じたこと
私がグロービスに入社したのは1999年10月1日です。その前日まで私は、98年10月23日に破綻し国有化された日本長期信用銀行に勤務していました。

長銀では、入行以来さまざまな部署と業務を経験させてもらいました。数多くの先輩や上司、魅力的な人たちから、ビジネスの見方やものの考え方、ビジネスパーソンとしての生き方などを学ばせてもらいました。彼らの骨太な指導により、肉厚な人生訓を得ることができました。このコミュニティにはいまだに愛着がありますし、これからもこの人間関係を大切にしていきたいと思っています。

思えば、長銀という組織では、異なる業務経験に就くという成長の機会が定期的に用意されていました。また、自分で積極的にそれを求めなくても、手本になる多くの先輩が周囲に存在し、そしてよき上司が語ってくれるという環境が整っていました。

しかし、長銀はつぶれました。理由はどうあれ、破綻しました。体制を批判し、不良債権の経緯を憂いても、虚しい恨み節です。誰かのせいにしても、破綻の事実は変わりません。他責にしても、何の足しにもならないことを痛切に思い知ったのです。

同時に、破綻に至るまで体制批判に甘んじ、体を張ってでも体制を変えようとしなかった自分自身を悔いました。「自己責任の原則」という言葉の本当の厳しさを、身をもって痛感しました。
また、これからは自分の力で道を拓いていかなければならないという事実に直面し、自立とはどういうことかを痛感しました。生涯を通じて自らを鍛え続けなければならないと直感的に感じました。

さて、99年の時点で38歳だった私は、当時まだ50人前後の組織であったグロービスでは(いまもそうですが)年長の部類でした。年齢で仕事をする時代ではないとは言え、手本にする先輩の数は圧倒的に少なく、むしろ、自分自身が手本となるべき環境でした。そのことに気づいた私は「我以外、皆我が師」の精神で、さまざまな人から学び、自分を成長させ続けることが不可欠であることを強く再認識しました。同時に、組織基盤の整っていない成長企業で仕事をすることで、いかに長銀の環境が恵まれていたかを認識しました。

私が勤務先の破綻と転職の経験から得た気づきや学びは、言葉にしてみると、以下の通りどれも当たり前のことかもしれません。ただ、だからこそとても重要かつ根源的な考え方だとも言えるのです。

■自己責任
長銀の破綻から学んだ「自己責任」のニュアンスは、別な言葉で表現すると「当事者意識」です。すべては自分の問題であるという主体性を伴った思考が欠落すると、そもそも行動は起こせません。自らの使命や責任に対する認識が浅いものだと、一歩踏み込んだ行動につながらず半端なものになります。ときには、不作為の罪をもたらします。結果や事象に対しては他責になりがちです。環境に言い訳を求めてしまう、という傾向も強まるでしょう。

自責とノーエクスキューズ(言い訳はしない)の気構えを腹に持ちつつ、真の当事者意識から行動する重要性を、私は実感しました。同時に、こうした意識がなければ、成果を得られないばかりか、失敗から学ぶことすらできないのだと思います。

■自立
私が必要性を実感した自立とは、仕事をしていくうえでの真のプロフェッショナル意識に近い感覚です。誰かと比較し、競うのではなく、「自らが生み出す価値は何か」という問いに対して本当に自信を持てるようになるということです。甘い自己満足を捨て、冷徹に正しく自己認識できるかどうかです。相手や周囲が受け入れ、さらには社会にとっても役立つ、意味ある価値を生み出せるように、自らを高め続けようと志を立てることが必要なのです。

■謙虚さと学び続ける意思
自らを高め続ける重要性に気がつけば、おのずと学ぶことの必要性に意識が向きます。本当に学ぶ姿勢とは、現状に安易に満足しない気持ちから生まれるのだと思います。しかし、学ぶ姿勢をつい邪魔してしまうのが、自分の心の内側にあるくだらない見栄です。こだわる必要のない自尊心とも言えます。
また、辛抱強く学び続ける根気を持てるのか、という点もポイントです。堅忍不抜の向上心を持ち続けるカギは、ありたい姿に対する強烈な願望か、ありたい姿が実現できないことに対する強烈な危機感、あるいはその両方でしょう。

簡単なことではありませんが、謙虚に自らの現状を省み、あらゆるものから学び続けることに真剣に取り組むことが、何よりも大切だと痛感したのです。

実際にはこうした意識や気構えを常に高いレベルに維持し続けることは、容易ではないと思います。大きな組織で経験を積んでいくと、いつしか主体性を発揮して自ら動くというよりも、与えられた環境に安住するようになってしまう。人間が持つ弱さではないでしょうか。
忙しい日常の中で外に目が行かず、狭い範囲に意識が閉じてしまうこともあるでしょう。自らの存在価値や役割へのこだわりを忘れ、考え抜くことや健全な疑問を持つことをしなくなっているかもしれません。そこそこの成果をあげ、周囲からの評価も定着してくると、自らをより高みに引き上げる自覚的努力を払うことを忘れがちにもなります。奢りや慢心というつもりはなくとも、油断してしまうのです。

私の場合、身を置いていた会社が破綻する、という最悪の事態に直面してはじめて深い自覚と気づきを得るに至りました。本来であれば、もっと前に意識が覚醒されているべきだったと恥ずかしくなりますが、これが偽らざるところなのです。

それでは、第1章から第4章の主人公の体験を振り返りながら、リーダーの持つべき気構えについてみていきましょう。破綻という最悪の事態まで行かなくとも、私たちの日常にはたくさんの気づきのポイントがあるのではないでしょうか。

(2)リーダーに求められる気構え、意識、姿勢
よいリーダーとそうでないリーダーの根源的な差はどこにあるのでしょうか。誰の目にもわかる具体行動から両者の違いを掘り下げていくと、気構えや意識など、より内面的な部分に行き着くと私は考えています。そこで、各章の主人公の気構えや意識のあり方と変化を振り返りながら、より深いところでリーダーに求められるものは何かを考えていきましょう。

4人のリーダーは、多少の温度差はありますが、いずれも果たすべき使命を全うすべく、当事者意識を持ってことに当たっていたと言えるでしょう。リーダーであれば、高い当事者意識を発揮して、主体的に考え行動するのはできて当たり前です。逆に言えば、当事者意識が不十分では、そもそもリーダーは務まりません。ここでは、当事者意識の先にあるポイントは何か、リーダーとしてもつべき気構えについて考察していこうと思います。

■強い使命感と周囲に伝播する情熱
まず、第2章で芝原電産・携帯電話事業部の再生を託された小山田さんについて振り返ってみましょう。エリート社員として順調にキャリアを積み上げてきた小山田さんは、予期せぬ辞令に気乗りしないながらも、努めて前向きに受け止めようとしていました。ただ、現場の活力を最大限引き出すべき仕事を、自らのキャリア・アップのための道具、あるいはステップとしてとらえていた傾向があります。「結局、自分の立場しか頭になかった」という本人のコメントがありますが、再生の主役になるであろう現場の人々の気持ちやモチベーションに意識が向いていませんでした。リーダーの意識レベルがこの程度であれば、現場の社員は彼の言動から本気度や情熱を感じ取ることはできないでしょう。これでは、周囲を動かすことはまず無理です。私心がすべてに先んじて強く出てしまったと言える例でしょう。

企業人の多くは、小山田さんに限らず、辞令一つでまったく想定しない任務を担うことがままあります。「青天の霹靂」の辞令であれば、自分自身で事態を咀嚼するまでに一定の時間がかかるものです。そんなとき、「とりあえず、大過なく過ごせればいいか」と、やや消極的な当事者意識のまま現場に着任してしまうケースがないとは言えません。はたしてそれで、共に働くメンバーの意欲を鼓舞することは可能なのでしょうか。人の上に立つリーダーとして責任ある行動と言えるのでしょうか。強い使命感と周囲にも伝播するような情熱が備わってはじめて、「リーダーの持つべき気構え」を備えたと言えるのです。

■自己規律と利他
次に、第3章の池永さんのケースを思い出してください。ドリーム飲料のバリアフリーのイベントに関する話です。元来、実行力があり自信家の池永さんは、イベントの成功に向けて非常に高いモチベーションを持って動いています。しかし、強い当事者意識と、とにかく成功させたいという強烈な想いがかえって災いしました。あらゆる仕事において言えることですが、事を為すためには協働する関係者の利益と関心に注意深く配慮することが不可欠なのです。池永さんは、すべて自分たちを中心にして物事を判断してしまい、協働者や利害関係者への「利他」の発想が抜け落ちてしまっていたのです。

事業は継続することが重要です。協働、共生の基本は、特定の人間の一人勝ちを避けることです。自己の功を急ぐ態度は、不思議なものですぐに周囲に伝わります。そしてその瞬間、人心は離れます。まず「利他」を考え、その後に「自利」が来るという意識が大切なのです。

人は熱心になればなるほど、自分の視点でものを見てしまうものです。事象や状況を、自分に都合よく判断しがちです。成果へのこだわり、使命を全うしようとする責任感の裏側にある強引さ、傲慢さ──誰もが陥りがちな罠です──を冷静に認識し、自らをうまく制御し、律する。そうした意識もまた、「リーダーが持つべき気構え」と言えます。

では、自らを律するには、どうすればよいのでしょう。自己規律、自己管理の基本は、自分自身をいかに客観視できるかにあります。第1章の南雲さんを振り返ってみましょう。

キーマンズソフトで新プロジェクトを率いる南雲さんは、いくつかの具体的な躓きから大きな学びを得ました。要約すると、使命を果たす、結果を出すという大きなゴールの前で、謙虚にかつ柔軟に自らの一部を否定し、アウトプット志向の意思決定ができたということです。 一般的に、責任への意識が強ければ強いほど、「責任を果たす」ことを「自らが実行すること」と同義に捉えてしまいがちです。地位が上がれば、自らの弱点を認めづらくもなります。自分にできないことをはっきり認識し、その不足分を他者に支援してもらう、というのは大変勇気のいることと言えます。

本当に自信のある人というのは、非常に謙虚なことが多いものです。おそらく、常に自らを相対化し、何が足りていて何が足りていないかを確認することが習慣になっているのでしょう。謙虚さを伴わない自信は、単なる傲慢です。一方で、自信というものがいささかも感じられない謙虚さは、卑屈な印象を与えてしまいます。自立したプロフェッショナルが、自分とは異なる専門性を持ったプロフェッショナルに対してリスペクトの精神を忘れないのも、同じ理屈と言えるでしょう。自信と謙虚とは、実は表裏をなす関係にあるのだと思います。

■変化と挑戦を楽しむ
最後に、第4章の橋本さんに注目しましょう。ブライダル・エッジにおける社員の集団離脱を境に、橋本さんは自らの成長や仕事に向き合う基本姿勢に対して悩んでいました。

橋本さんこそ、当事者意識と高い責任感を持って事業の拡大を牽引してきたリーダーです。ところが、いつのまにか事業の拡大そのものが目的化してしまったようでした。事業に対する「責任」のみが強調され、「ねばならない」という意識が橋本さんの日常を支配していったのでしょう。

たしかにきっちりと責任を果たしてくれるリーダーは、メンバーから見ても頼り甲斐のある存在です。しかし、リーダーとは一方で「そうなりたい目標」や「憧れの存在」でもあって欲しいものです。リーダーの周りに「ねばならない」という空気が充満していると、周囲はどう感じるでしょうか。目標に追われるリーダーの下で、組織やメンバーが伸び伸びと成長することはできるでしょうか。

与えられた使命を達成しようと突っ走ってきた企業戦士は多いことでしょう。それは極めて尊いものです。ただ、今後ますます重要になってくるのは、自己の成長と変化、新たな挑戦を心底楽しむリーダーの存在です。橋本さん自身にも、もっと成長しようとする意志と、変化を楽しむ姿勢が求められたのでしょう。それが、組織に揺らぎを与えるリーダーなのです。

では、こうした気構えや意識、姿勢はどうすれば持てるようになるのでしょうか。「立場が人をつくる」という言い方もありますが、どんな地位や仕事を用意しようと、本人にその気がなければ、こうした気構えを持つことは難しいでしょう。私は、リーダーがこれらを身につけるためのカギは「自問力」にあると感じています。詳しくは終章で述べることとしましょう。

ここで、関連する理論について簡単に紹介しておきましょう。

(3. Theory)第五水準のリーダーシップ/EQリーダーシップ

第五水準のリーダーシップ
ジェームズ・コリンズらの調査によると、よい企業を偉大な企業に飛躍させた経営者は全員、同じ性格を持っていることがわかりました。それが、「第五水準」すなわち、謙虚さと不屈の精神を併せ持ったリーダーシップです(下の図を参照)。第五水準の経営者は驚くほど謙虚であり、控えめで飾りません。成功したときは自分以外に成功要因を見つけ、結果が悪かったときは自分に責任があると考えます。謙虚さを装っているのではありません。周囲からも無口、内気、丁寧、穏やか、目立たない、飾らないと評されています。

さらに、謙虚ながら意志が強く、控えめながら大胆という二面性を持っています。野心的であるのは確かですが、野心は何よりも会社に向けられており、自分個人には向けられていません。後継者を選ぶときも、次の世代でさらに偉大な成功を収められることを考えて選びます。

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EQリーダーシップ
「EQリーダーシップ」は、ダニエル・ゴールマンが提唱したリーダーシップ行動モデルです。2002年に翻訳された『EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方』も、ベストセラーとなりました。  多くのリーダーシップ理論が、外面的な行動特性に基づくのに対し、EQ理論では内面的な、「リーダー自身の感情の認識とコントロール」に注目しています。自らの感情を制御しつつ、「前向きなプラス感情」を発信することが、リーダーには求められます。ポジティブな感情が部下の気持ちに訴えかけ、よい雰囲気を醸成して集団を共鳴させれば、最高の結果を引き出せるからです。

さらにゴールマンは、組織に共鳴を起こすリーダーシップ・スタイルを6つに分類しました。優れたリーダーは、TPOに応じて、これら6つのスタイルを使い分けているのです(下の表を参照)。

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本稿の著作権は著者・グロービスに帰属しています。内容の無断転載、無断コピーなどはおやめください。また、私的利用の範囲を超えるご使用の場合は、グロービスおよび出版社の承諾書と使用料が必要な場合があります。

はじめに

「あなたは成長したいですか?」という問いに対して、NOと言いきるビジネスパーソンは、はたしてどれほどいるだろうか。弊部門(グロービス・オーガニゼーション・ラーニング)の企業研修で、リーダーシップのクラスを担当している私の現場感覚で言えば、受講者の皆さんそれぞれに表出する意欲に差はあっても、実は全員が明確に成長願望を持っている。同時に、ビジネスは個人よりも組織で勝負をする時代だからこそ、人を巻き込むリーダーシップを高めたいという関心が、一様に高い。これは若手、ミドル、シニアなどといった、ポジションや年齢にかかわらず共通する事実である。

一方で、企業経営者は、社員に何を望んでいるのだろう。組織を成長させることを使命とする経営者が、社員の成長や当事者としてのリーダーシップの発揮を望まないわけはない。そして、優れた経営者は、実は彼(彼女)自身が誰よりもよく勉強しているものだ。自らが成長し続け、組織に刺激を与えることが、重要なリーダーシップと心得ているのである。

トヨタ自動車の方から、「新幹線経営」という考え方を伺った。普通の列車は、時速80~100キロメートル程度で走るが、新幹線は300キロで走れる。それはなぜか。列車は先頭車両が全体を牽引しているのに対し、新幹線は各車両に動力源(モーター)を積んでいる。これがスピードの差を生む理屈だ。

現代の企業経営も、変化への対応スピードを速め、質の高い経営を実践するには、限られたリーダーが全体を引っ張るモデルではなく、組織のあらゆる階層の人々によってリーダーシップが発揮され、社員一人ひとりが自律的に動ける組織を追求する必要があるのだ。

これらの話からもわかるように、リーダーシップ開発に対する必要性と意欲は、昨今、著しく高まっている。しかしながら、どうすればリーダーシップを高めることができるのか、何をどうすればよいか頭ではわかっているがなかなかうまくいかない、よいリーダーと並みのリーダーの差はどこにあるのだろうか、といった声を現場で耳にする。

本書では、こうしたニーズに、少しでも応えたいと考えている。できるだけ、具体的な動画イメージがわき、ビジネス実感にあった考え方を伝えられればと思っている。

■氷山モデルによる層別認識
「理想のリーダーとは、どのような人なのか。まず、理想のリーダー像を描写(言語化)してみてほしい」。私が講師を務めるクラスで、このような問いかけをすると、返ってくる意見は、以下の三つに集約される。

(1)リーダーは何をやっているかの行動を表現したもの(例:ビジョンを語る)
(2)リーダーは何を知っているかの知識・保有能力を言い表すもの(例:分析力がある)
(3)リーダーはどんな人かの気構え、意識を述べたもの(例:克己心が強い)

図表A(氷山モデル)にある通り、「行動」「能力」「気構え、意識」は、あたかも階層をなしているようである。能力および気構え、意識は、水面上の(周囲の目に見える)行動を下支えしているととらえることができる。

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つまり、保有能力が発揮され、顕在化した段階で行動になる。そして、よい行動と月並みな行動の差は、氷山の深層部にある気構えや意識の持ち方によって変わると言えるだろう。

ピーター・F・ドラッカーは、「そもそもリーダーについての唯一の定義は、つき従う者(フォロアー)がいることである」と指摘している。フォロアーから見えるのは、実際になされた行動(言動)のみである。そして、見聞きした行動を通じて、リーダーが持つ能力や人間性(資質)を推し量るのである。

氷山モデルは、表に見える行動の重要性に力点を置きつつ、下層にある能力を高めることに意識を集中することの大切さを示唆している。こうした層別の認識を持ちつつ、自分自身はどこを強化すべきかを意識化していきたい。本書では、この層別構造を基本に、行動・能力=SKILL面と、気構え・意識=WILL面の双方から考えを深めていきたい。

■プロセスで見るリーダー行動(リーダー・ウェイ)
行動の重要性は「氷山モデル」の通りだが、より大切なことは、あるべき行動をいかに具体的に認識するかにある。もちろん、唯一普遍のリーダー行動があるわけではない。状況に応じて、発揮すべきリーダーシップは異なってくるものだ。

とはいえ、リーダーの任務を「成果を出すこと」と定義すれば、成果創出に不可欠な基本行動の原型があるのも事実である。リーダー行動の基本流儀とでもいうべきものだ。これは、心得箇条のように各々が独立した概念ではない。行動の流れ、プロセスとして押さえることに価値がある。なぜなら、プロセスとして理解することで、リーダー行動として体得しやすく、かつ、自己チェックしやすいからである。

本書の構成の骨組みとなっているのが図表Bの「プロセスで見るリーダー行動」(リーダー・ウェイ)である。ちなみにこの考え方は、トヨタ自動車の木村俊一氏(グローバル人事部人材開発室長=当時)との、あるプロジェクトでの濃密な議論が原型になっている。木村氏はじめトヨタ自動車の皆さんとの接点がなければ、形になっていなかった考え方である。

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本書では、5つのショートケースを下敷きに、具体的なリーダー行動の陥穽や難所、あるべき行動のHPWや勘所、リーダーとして持つべき骨太な気構え、そして関連する理論やセオリーを5章にわたって順次展開する構成になっている。そして最終章では、リーダーが自らをセルフマネージすることの重要性を、「自問力」というコンセプトで再整理した。

ショートケースの五人の主人公として、37歳から49歳までのミドル層、シニア層を描写したが、読んでいただきたい読者は必ずしもこの層に限定してはいない。自らのリーダーシップを強化したい、リーダーとして組織を引っ張って大きな成果を上げたい、という意欲に満ちた多くのビジネスパーソンにとって、何らかの発見や気づきにつながることが、何よりの目的だからである。一人でも多くの読者に私たちの想いが伝わることを願ってやまない。

本稿の著作権は著者・グロービスに帰属しています。内容の無断転載、無断コピーなどはおやめください。また、私的利用の範囲を超えるご使用の場合は、グロービスおよび出版社の承諾書と使用料が必要な場合があります。

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