明るい宗教くらいミッションを語る――DMM亀山氏、メルカリ小泉氏が語るイノベーション論 

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“日本版ユニコーン”経営者たちが考えるイノベーションを生み出す組織のつくり方[3]

麻生: あと5分強あります。「これは言っておきたい」というお話はあります? 

小泉: そんなにないかもしれないです(笑)。

亀山: なんか言っときなよ。「ホリエモン2号」目指して喋れるようになんないと。

小泉: いやいやいや(笑)。ただ、たしかに社長になったとき、その辺について明確に役員のなかで言われたことはあります。「もっとテレビ出てけ」って、すごく言われたんですよ。「だから社長の肩書きをお前に付けるんだ」ぐらいのことを、ジョークみたいな感じでは言われていて。

亀山: たしかに(役員のなかでは)一番喋れるわ。

小泉: やっぱり情報発信は大事なので。うちは社員が増えてくる過程で全社定例のようなこともやるんですけど、亀山さんはそういうのやってます? 僕らは毎週やっていて、そこで全社員から質問を事前に募集してるんですね。何でも良いとしていて、それで1回の定例で数個は社内から質問があがって来たりしていて。

亀山: あ、うちも質問コーナーはある。で、2週間に1回、そこに書き込まれた質問をみんなで見るようにはしてる。一斉に集めるわけじゃなくて掲示板みたいにその都度書いてもらう形だけど。

小泉: 僕らはそこで集めた質問に対して経営陣が毎週説明してる感じです。

亀山: うちの場合、そこで新規プランの提案もあれば「自転車通勤にもお金出してください」みたいな要望もあったりするよ。

ツチノコがユニコーンに突きぬけるために必要なこと

麻生: お2人の立場から見て、たとえばユニコーンと言われるような領域まで辿り着かずに10億や100億のまま…、それでも十分大きいわけですけど、そのあたりで「ツチノコ」がユニコーンに突き抜けられない理由や違いって、どの辺にあると見てますか? 

亀山: 俺の場合は50年ぐらいツチノコで、5年ぐらい前からニョコニョコッと出た感じだから(笑)。それまではとにかく目立たず騒がず、ツチノコ状態っていうことだった。メルカリもCM打つまでは結構おとなしくしてたよね。ビジネスをパクられないようにしようと思ってのかもしれないけど、とにかく目立たないように密かに水面下で増やしてたよね。それで「ここだ!」っていうとき、一気にCMでガーッと出てきた。

小泉: 海外でも同じでしたけどバレないようにしてきたっていうのはたしかにあります。本当に‘Winner Takes All’だから「なるべく競合増やさないように」って。

亀山: そうそう。それでアクセル踏むときは一気にCMを打ったりしてたから、当時は俺も「わぁ、しまった。株もらっとけば良かったな」って(笑)。しょっちゅう一緒に飲んでたけど言わねーからさ。「儲かってます」とか言ってなかったじゃん。

小泉: (リソースを)使うタイミングはすごく重要視してますね。使うときは大胆に使わないと伸びないから。それで、なんというか、僕らはこれまでに何回か博打を打ったようなタイミングがあるんですけど、そこでいつも比較的良い結果が出ていたっていうのはあるかもしれないです。

亀山: 実際、ある程度のところまではひっそりやるのが得かなって思う。昔こういうところに登壇してる人たちを見て、いい話は真似しようとしたりしつつ、「なんでみんな喋ったりするのかな」なんて俺は思ってたりしてたよ。でも、歳をとったら喋りたがりになったから喋るようにはなった。たいした話はしてないし、やったことを話してるだけだけどね。来年やるような話はしてないというか。ただ、とにかくまずはひっそり目立たず、バレないように稼ぐのが俺も大事だと思う。だよね? 

小泉: ですね。あとは採用目線でどうしても話さなきゃいけないときがあるから、それでメディアに出るタイミングがあります。資金調達のときも。そういうときだけはちゃんと出て、あとはひっそりしてるという。

亀山: たしかに、俺も採用が良くなったから喋って良かったっていうのはある。それまで怪しすぎて誰も来なかったもん。(会場笑)「入ったら殺されるんじゃないか?」ぐらいのイメージがあって。でも、最近は採用が本当に良くなった。今、メルカリのやつに声掛けたら来る気になってくれるかもしれない。

小泉: やめてもらっていいですか(笑)。

麻生: では、ちょっと早いですが質疑応答に移りたいと思います。

会場: 会社をつくって半年以内で今の規模感は予想していましたか? 

亀山: 基本的にはそこまで考えたことがなくて。雀荘をやってた頃は「これをチェーン展開して10店舗にするにはどうすれば」なんて程度だったし、ビデオレンタルのときも同じ。「今後2~3年どうしよう」とか、長くてもせいぜい5年先かな。遠くの未来までは考えてなかったし、こつこつやりながら業種を変えていくうち、「あ、ラッキー」みたいな感じになった。でも、そう考えると4年でこれだけ成長したメルカリは珍しいよね。

小泉: うちは、いくならすごく大きくなると思ってました。で、いかないなら華麗に散るだろうなって。(会場笑)だから組織の制度もバリューもミッションも、社員10人ぐらいの頃から「拡大する組織に耐え得るものを」っていうことで考えてました。一方で負ける可能性はぜんぜんあったから、「もう、そのときは大きく“すろう”」とも。

亀山: ITはそういうとこあるよね。それで一気に一強になったりして。飲食店や地域のビデオレンタル店だとそんなに大きなビジョンはないわけよ。「どうやってこの8万人のエリアを獲ろうか」なんていう話だから。

小泉: たぶん山田と僕は1回事業をやって成功してることもあって、少し余裕があったのは良かったかなと思います。正直、自分の資金に関しては余裕があったから。

亀山: ぜんぶ張らなかったもんね。貯金は残しておいて、スッてもなんとか生き延びるようにはしてた。

小泉: スルのは投資家のお金だけでいいかなって。(会場笑)

亀山: 出た出た。(みんな)もっと出したほうがいいよ~。

ミッションやバリューをどう浸透させるか

会場: 皆さんは良い社員や良い仲間だと思える方々とやってこれているとお感じでしょうか。あるいはそのあたり、どんな風にジャッジしてきたのでしょうか。

小泉: 僕らはミッションとバリューは本当に気にしてます。人を見るときもミッションとバリューへの共感度合いをすごく見てますね。逆に、優秀であれば誰にでも声を掛けるということはしてないし、さっきお話しした通り、お金だけという人も採用しないようにしてます。だから評価軸についても透明性のあるOKR(※)ともうひとつ、バリューに関わる行動評価という軸もあって。それで行動が会社のミッションとバリューに合っていない人は評価されないようにしてます。こっちは半分感覚論みたいなところがありますけど。

亀山: 評価は分かるけどさ、信用するかしないかっていう話になると、もっと人格的な面が関わるんじゃない? 

小泉: その意味だと、当社は「陰」か「陽」かで言えば「陽」の社員が多いです。ポジティブに「世の中を変えたい」と思う社員が集まってるかなって。

亀山: 陽気っていうのも「信用できるかどうか」とはまた違うんじゃない? うちなんか陽気に笑いながら金盗んでったやつもいるよ。(会場笑)

小泉: それ、なんも言えないっすね(笑)。

亀山: その意味だと、まだ4年だしこれからいろいろ出てくると思う。うちなんてビデオレンタル店で半分ぐらいクビにしたこともあれば、金盗んで逃げたやつがいてマルサが入ってきたりしたこともある。そういう部分で良いやつか悪いやつかっていうのは、実際問題見抜けないわけよ。信用には時間ってものが必要だと思ってる。どんなに良いやつだと思ってても、やっぱり1年のやつと10年のやつだと違うじゃない? 

あと、信用も2通りあって、まず金を盗むか盗まないかっていう信用がひとつ。で、もうひとつは辞めるか辞めないか。どんな優秀なやつでもさ…、たとえば小泉さんがメルカリの顔としていろいろ売り込んでても、辞めてうちに来たらうちがその資産をもらうことになるじゃない。 それで「うちの新代表になった今売り出し中の小泉君です」ってなる。資産として持っている人脈とか、ぜんぶうちに移動する。だから、そういう風に辞められると会社の財産が失われるよね。そういう信用もある。その意味でも信用にはどうしても時間が必要だと思う。「ほかのやつはみんな盗んだのにこいつだけ何も盗まなかった。しかもビデオレンタルの頃から10~20年辞めずにいる」って。そういうのが結構大事なとこで。

麻生: 信用に関して事前になんとなく分かるような部分ってありますか? 

亀山: いやぁ、分かんないね。ニコニコ~っとした悪いやつもいるし。(会場笑)でも、うちは結構丸投げするから。今ならアフリカにぽんと行かせたりして、それでこっちから見にも行かなかったりする。だから向こうで何をやってるかについては信用するしかないんだ。だから、うちって誘惑に満ち溢れてる会社なのよ。管理がゆるいから。やりがいはあるんだけど誘惑もあって、チェックは甘い(笑)。

さっき「一応見てる」と言ったけど、そんなガチガチに見てるわけじゃない。これがコンビニなら防犯カメラとかあるわけじゃない? あれ、防犯目的もあるけど社員を見ておく面もあると思うんだよね。でも、俺はビデオレンタル店でもあれを付けたくなかったの、なんとなく。だから、あくまでお客さん側で見えない棚のところを見えるようなカメラは付けただけで、他には付けなかった。

でも、じゃあ俺は人を信用してるのかっていうと、たぶん90%信用してやらせてる。100%信じるとね、裏切られたときに人間不信で誰も雇えなくなっちゃう。そこで「どんなやつでも10%は(裏切る確率が)ある」と思えばさ。昔は裏切られたりすれば「ああ、もう俺はだめだ」なんて半年は立ち直れなかったの。でも2回目は1ヶ月で立ち直ったし、3回目は1週間。4回目は5分で立ち直ったね。「あ、そうか。じゃ、次」って。そんな風にしてタフになってった。任してくしかないから。仕事ってそれしかないから。だから、そういう感じで信用っていうものがあるし、辞めないっていう信用もある。

会場: メルカリさんはいろいろなところで「ミッションとバリューが大事」という話をしていますが、それを浸透させるために何をしているかのかな、と。評価に組み込むといったことは他社もやっていますが、メルカリさんはその徹底度合いが違うだけなんでしょうか。

小泉: とにかく本当に言いまくってます。経営陣が一番言いまくってますね。

亀山: なんて言ってんの? 

小泉: ミッションが大事だとか、バリューが大事だとか。

亀山: うわ、ウザい経営者だね。毎日言ってんのソレ?
 
小泉: もう宗教のぎりぎり手前のところです。「明るい宗教」みたいな。

亀山: 「明るい宗教」か、ヤバイじゃん。(会場笑)

小泉: 標語を飾ってそれを全員で唱和するとか、そういうことはまったくやらないんですけど、それ以外のやり方で。ミーティングでも「いや、これ、バリューに則って考えたらさ、もっとこうじゃない?」みたいなことをいつも言ってますね。

亀山: 「人の道」とかは説かないの? 「愛だよ」とか「夢だよ」とか。

小泉: そういうのはやんないですね(笑)。やります? 

亀山: 俺はときどき愛を説くよ。気が向いたときに(笑)。

小泉: とにかく‘Go Bold(大胆にやろう)’ということはずっと言ってます。みんな、ミーティングでも「ちょっと気持ち悪いな」っていうぐらい言ってますから。

会場: アメリカとイギリスにもオフィスがあって社員の方々は100人ほどいらっしゃると伺いましいたが、海外でもそうしたミッションとバリューは徹底されていて、アメリカ人やイギリス人スタッフの方々も皆で言っていたりするんですか? 

小泉: はい、その辺を前提にしてミッションとバリューをつくったので。それで今は「大胆にやろう」っていう日本語がプリントされたTシャツが、アメリカ人社員のあいだで流行っていたりするんです。あれ、向こうからすると文字的にカッコイイらしいんですよ。むしろ僕らがぜんぜん分かんないんですけど。とにかく、そういう感じで彼ら自身が「“大胆にやろう”Tシャツ」を着てたり、壁に「大胆にやろう。Go Bold」とか書いていたりして、海外でもすごく言われてますね。

そのあたり、言葉を決めるときに「日本人以外の人たちから見ても、ある程度意味が分かる表現にしよう」と思ってましたから。あと、たとえば‘All for One’という言葉もバリューに掲げてるんですけど、なんというか、ちょっと一般的じゃない言葉をわざと入れて覚えやすいようにしたりもしてます。

亀山: そういう風に分かりやすいミッションのほうがグローバルに受け入れられやすいのかもしれないね。俺なんかついついワビとかサビとか言っちゃうから(笑)、そういうのって伝わらない。そもそもうちのグローバルは「日本語をやれ」って言ってるからさ。日本語ができる外国人を入れて日本語でやるのがうちのグローバル戦略で。「武士道まで教えちゃおうか」って。(会場笑)無茶があるけど。

イノベーションとは?

会場: 今回のテーマにある「イノベーション」という部分については、御二方はどんな定義をしていて、なぜそれが生み出せているとお考えなんでしょうか。

小泉: 僕は「イノベーションというよりライフスタイル、生活様式を変えたい」ということをよく言ってます。「メルカリが出てくる前と後でモノの売り方と買い方が変わったよね」って言われるようにしたいというか。新規事業についても同じ目線です。「どれほど多くの人の生活を変えることができるか」という部分を見てます。

なので、たとえばAIをはじめとした技術の話もありますけど、僕らが考えてるのは「じゃあ、それで結局ユーザー行動の何が変わるの?」とか「生活の何が変わるの?」という点。技術のことばかり考えてる会社と思われがちですけども、実際には、人間の行動を変えたいとか、人間行動の裏側に何があるのかっていうことを考えてることが多いです。

亀山: なるほどね。うちは…、まあ、うちにないのがイノベーションだね。だから「うちに農業がなければ農業もイノベーション」みたいな。で、最近だとアフリカ人とかヤンキーとかいろん若いやつが入ってきてる。縦軸にも横軸にも、それまでいなかった新しい人間をどんどん入れる。その場所だけ用意しとくの。「それでアフリカ人と日本人のヤンキーが一緒に仕事してくれたらなんか勝手に生まれるんじゃねーの?」みたいな。

年寄りは無理だよ、イノベーションは。この会場にいる人たちはたいしたイノベーションを生み出せない。(会場笑)だから、場所を用意してあげて、そこに若いやつ放り込んだり、外国人を放り込んだりする。で、ときどき小遣いとか予算を出して、「ちょっとやってみろよ」ぐらいな感じでイノベーションは生まれるっていうところかな。自分らでつくるっていう発想がすでに年寄りの奢りじゃない? 俺ら、もう助けるしかできないよね。

小泉: 僕らも今は20カ国から人材が来てるって言いましたけど、やっぱり日本人以外のメンバーが入ってきてから組織や雰囲気が変わりました。やっぱり多様性っていい意味で大事だなって思います。

麻生: 亀山さんのところも相当に多様性がありそうですよね。

亀山: そうだね。うちはほとんど日本人で、ビデオレンタル店から上がってきたやつや中途採用したITエリートみたいなやつが混在してたけど、グローバルはほとんどいなかった。だから日本語ができる外国人を入れてコミュニケーションさせてる。そうするとグローバル側も結構変わってくるね。もともといた社員に今さら英語覚えさせるのもね。覚えるやつもいるけど、なかなか大変だから、まあ、それでいいかなー、みたいな。(笑)

麻生:では、時間になりましたのでセッションを終わりたいと思います。どうもありがとうございました(会場拍手)。

※Objective and Key Result/目標と主な結果

19歳で露天商に師事し、様々な地域でアクセサリー販売を手掛ける。その後、24歳の時に家族が経営する飲食店を手伝って欲しいと請われ石川に帰郷。雀荘やバーなどの経営を経て、1980年代後半レンタルビデオ店を開業。その後、卸売を通さないDVDの販売ルートの確保や、販売時点情報管理(POS)の開発/無料配布により事業を拡大。インターネット黎明期であった1998年には他社に先駆けてネット配信事業(現DMM.com)を開始し、動画配信、通販、レンタル、オンラインゲーム、英会話、FX、ソーラーパネル、3Dプリンターと多岐にわたり事業を手がけ現在に至る。

早稲田大学商学部卒業後、大和証券SMBCにてミクシィやDeNAなどのネット企業のIPOを担当。2007年よりミクシィにジョインし、取締役執行役員CFOとしてコーポレート部門全体を統轄する。2012年に退任後はいくつかのスタートアップを支援し、2013年12月株式会社メルカリに参画。2014年3月取締役就任。

1974年生まれ。福岡県飯塚市での生活を経て、慶応義塾幼稚舎入学。大学時代のHongkong Land, Colliers Jardineにおける香港でのトレーニー生活、慶應義塾大学法学部田村ゼミ、一橋大学商学部竹内ゼミを経て、97年慶應義塾大学経済学部卒業。同年株式会社日本長期信用銀行(現:新生銀行)入行、金融商品開発部配属。99年ケンブリッジ大学留学 国際関係論専攻。
2000年麻生セメント株式会社(現:株式会社麻生)監査役に就任、同社取締役、常務取締役、代表取締役専務取締役、代表取締役副社長を経て、2010年6月に代表取締役社長。2011年8月 グループ経営委員会委員長 就任。グループでの取締役、理事、評議員を務める他、2005年12月より株式会社ドワンゴ(現:株式会社カドカワ)、2006年3月より株式会社キャピタルメディカの社外取締役に就任。

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