前回は、オンラインMBAプログラム第1期生の3人に、なぜオンラインで学ぼうと思ったのか、どうやって学びの効率を高めているのかを伺った。今回は、オンラインの学びがどう実務に役立っているのかお伝えする。
「ブレない考え方」を得たからこそ、限られた時間で価値を高められる
知見録: 学びの成果や手ごたえを教えてください。
道畑: 何事にも目的を明確にしてから取り組む習慣がつきました。どんな些細なことでも、「どういうアウトプットを出すのか」「どれくらいの時間を掛けるのか」ということを事前に考えるようになったと思います。例えば本を読むときも、今までは何となく手にとって、何となく読み終えていたのですが、今は目的を持って読むようになりました。このことが、時間創出にもつながっていると思います。おそらく時間が限られている生活だからこそ、「目的志向の行動」が鍛えられたんでしょうね。
あと、周囲から「仕事の話を楽しそうにするようになった」と言われる機会が増えました。自分でできることの範囲が広がったからこそだと思いますが、これは嬉しいことですね。
久保: 「クリティカル・シンキング」のクラスで、結論を出す際には決め打ちではいけない、ということを叩き込まれました。具体的には、オプションを全て洗い出して、評価軸を定めて、結論を出す。私はこの思考法の原理原則を全ての科目で何度も繰り返しやってきたのですが、今になってその反復がすごく効いている気がします。例えば、会社の大きなプロジェクトで資料を作成する際、今まではいろいろな情報に左右されてしまって、身動きが取れなくなっていたと思うんです。でも今は、徹底的に叩き込まれた「ブレない考え方」が私にあります。私にとっては、この考え方こそが大きな財産です。
長谷部: 同じく、短い時間で価値のあるアウトプットが出せるようになったことですね。相手は誰か、目的は何か、そのために必要なアウトプットは何で、優先的に考えるべきことは何か…といった具合に、逆算で物事が考えられるようになりました。今までは全てのパーツにおいて全力で取り組んでいたものが、目的から考えれば手を抜いていいところ、決して手を抜いてはならないところがすぐに分かるんです。実はちょうど今、自分たちで立てた事業計画を事業部長にプレゼンする段階なんですが、3時間で資料を作って上司から即OKがもらえましたよ。
あと、「人事・組織」や「志」の科目領域では、あるべき方向に向けてリーダーとしてどう行動し、周囲のメンバーに対してどう働きかけていくべきか、ということを学びました。この領域は、理屈では語れない部分があります。その割り切れない人の「情」のようなものを徹底的に語り合い、深めてきたことがとても役に立っているように感じます。筋道が通ってないと人はついてきてくれないけれど、それだけでは絶対無理なんですよね。そういう意味では、私にとっては「パワーと影響力」「組織行動とリーダーシップ」「企業家リーダーシップ」といった科目での学びが特に活きていると感じます。
画像・音声・文字をミックスした「ワイワイ感」の中で学ぶ
知見録: 実際にオンラインMBAではどのような学び方をしているんでしょうか?
久保: 授業では、常に先生から問いかけられ、それに対して生徒が答える、という双方向のやり取りが発生します。これはオンラインならではだと思うのですが、先生が全体に向けて問いを投げかける際、先生の目が自分に向けられていて、バーチャルで目が合ってしまう(笑)。そうすると、先生からの問いはクラスの30人全体に向けられたものではなくて、私個人に向けられたものという感覚になるんです。目を見られて問いかけられたら、やはり真剣に考えざるを得ない。だから、自然とクラス中の問いに対しては、常に頭フル回転で、真剣に考えるクセが付いた気がします。
これが仕事でも活きていて、お客さんとミーティングしている時も、以前は誰かが問いに答えてくれると思っていたんですが、今は常に自分で考えていつでも発言できるように頭を整理しておくようになりました。
長谷部: ちょっと話は変わりますが、オンラインって女性にすごく向いている気がします。実際にオンラインMBAでは、女性の発言比率が高い気がするんです。あくまで仮説ですが、通学クラスだと、体の大きさとか声の大きさとかから生じる威圧感で、女性を中心に萎縮してしまう人がいると思うんです。でも、オンラインでは、本当に言葉の力だけの勝負なんですよね。だから、普段控えめな人にとっても、自然体で参加できる空間になるんだと思います。
道畑: そういう観点ではチャット機能の効果も大きいですよね。こんな質問をわざわざ手を挙げてはできないよなぁ、というものはチャットに入れるんです。「これってどういう意味ですか」みたいな感じで。そうすると、「あ、オレもそれわかんなかった」という反応があったり、先生や仲間が「こういう意味だよ」って答えてくれたり。そんな感じでワイワイ学んでいる感じなんですよね。画像と音声と文字をミックスしたワイワイ感(笑)。
オンラインというと、何か仲間との距離感があるような印象があるかもしれないですが、それは全くの誤解で、むしろすごい至近距離で語り合っている感覚です。相手は実際には地球の裏側とかにいるんですが(笑)。ちなみに、チャットはテキストログとして後から見返すこともできるので、自分に対するフィードバックコメントとかは振り返りの材料としてもとても貴重です。
「魂と魂との会話」で生まれる深いつながり
知見録: ネットワークは広がりましたか?
久保: やはり地理的なネットワークが広がります。「タイで事業部を立ち上げています」とか、「出張でインドネシアにいます」とか、そういう話がよく飛び交っています。私にとって、そういった環境の中でのディスカッションそのものが、グローバルのトレンドや物の見方を得るための一つの機会になりました。
道畑: 物理的に離れているからこそ、時差や場所も超えてつながりたいという気持ちが強くなっている気がします。自分から情報を出していかないと分かってもらえないから、積極的に参加しよう、コミュニケーションを濃くしようと思うのかもしれません。オンラインの仲間が一時帰国する時などはみんながリアルに集まり、その場に来れない人は当然のようにオンラインでつないで参加して、二次元と三次元を組み合わせた不思議な懇親会が行われています(笑)
長谷部: オンラインって、その人が発言する音声やテキストが全てなんです。非言語のメッセージも多く含む対話に対して、圧倒的に情報量が少ない。だからこそ、限られた情報から「この人は何を訴えたいんだろう」ということをお互いが必死に掴みあう対話スタイルに自然となっていきました。私は、これを「魂と魂の会話」と銘打っています。伝わりにくいからこそ魂で伝えようとするんです。こういう対話を繰り返しているから、一度もリアルに会ったことのない仲間でも、古くからの知人のような関係性になるんですよね。
MBAを学んだその先にあるもの
知見録: MBAを取った今、将来的に何を目指していますか?
長谷部: 最終的には実家の家業を継ぐかもしれないので、会社の経営に携わることを視野に入れています。ただ、そこに至るまでの道のりはまだまだあります。当面は今いる組織の中で、リーダーとしていかに周りを巻き込み、いかに部下を育てていくか、という課題に向き合っていきます。日々、一筋縄では行かないことばかりです。そこにMBAで得た学びを総動員して挑戦し、力を高めていきたいです。
道畑: 現在マーケティングを担当していますが、
あと、グロービスで学んだ人材育成のノウハウは子育てに通じるものがあると感じています。人事・組織系の領域で学んだ「自発的な行動を促し方」、「自己肯定感を育み方」といったことを、子育てにも生かしていきたいです。
久保: 人と人、企業と企業を結び付ける仕事のプロフェッショナルになりたいです。今、大企業とベンチャーを組み合わせて新しいビジネスを作るという仕事を経験していますが、ここに大きな可能性を感じています。まず当面はこの業務における泥臭いところまで全て経験して、その学びを糧にもっとたくさんの企業や人を結び付ける仕事を作って活きたいと考えています。
知見録: ありがとうございました。
教員より:「オンラインファースト」の時代に向けて
オンラインは通学型のクラスよりも学びの効果は低いのでは?――これが私たちがオンラインMBAを立ち上げた時に向き合った世の
卒業式のスピーチで、長谷部さんは「
(オンラインMBA責任者:荒木博行)