トーマツベンチャーサポートとCrewwが牽引、大手とベンチャーの連携で価値創造 

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オープンイノベーションという言葉が登場する前から「大企業とベンチャー企業が緊密に連携して新たな価値を創造するためには?」というテーマが議論され続けて久しい。しかしながら、企業文化や事業規模の違い、情報の非対称性や本業との競合など、様々な理由からその歩みは必ずしも順調ではなかった。そんな中、両者をつなげ促進させる橋渡し役が登場し、活躍している。

トーマツベンチャーサポートとCrewwの例

トーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬事業統括本部長(33)は父親が事業で苦労した経験から日本の起業環境をなんとかしたいと、ベンチャー支援を会計士としての業務外の個人活動から始め、起業家の成長には大企業の変革が重要テーマだという結論に至った。現在はベンチャー支援と大企業に対する変革コンサルティングに加え、47都道府県に担当者を置くとともに、「モーニングピッチ」というイベントを既に165回開催するなどのエコシステムが、デロイトグループにおけるグローバルでのロールモデルとなっている。

「事業ライフサイクルが短期化し、大企業はベンチャーを自前のR&Dと同様にフラットな新規事業創出の選択肢と考えるようになった。大企業の新規事業に足りないのはマインド、ネットワーク、経営スキルで、それこそがベンチャーが持つ強み。両者が連携することで新規事業が生まれやすい。我々もベンチャー並みのマインドとスピードでレバレッジを掛け、世界初かつ日本発世界一のイノベーションファームを目指したい。そのためには政策提言力やグローバル展開力が肝となる」と斎藤氏は語る。

Crewwの伊地知天代表取締役(33)は2012年から、ベンチャー企業と大企業の連携によるアクセラレータープログラムに取り組んでいる。現在、同プログラムからは年間200件ものプロジェクトが実証実験に至っている。伊地知氏は米国で大学在学中に初めて起業し、これまでに4社創業した連続起業家だ。東日本大震災での現実を目の当たりにし、未来を創るイノベーションとそれを生み出す起業家にとって最良の環境を作り出すべきだと考えた。

「大企業に変革が求められていることとベンチャー企業の成長に求められていることが補完関係にある。大企業の顧客基盤や資金力と、ベンチャー企業に必要な市場からの認知や評価をマッチングさせたい。大企業もまずは実証実験を始めれば市場の反応が見え、資本参画や買収のハードルが下がる。小さくても成功体験を得た起業家や投資家を量産し、挑戦する起業家の絶対数や投資総額の増大につなげたい。まだ『オープンイノベーション』という言葉の広がりほど実利は生まれていない。ベンチャーを大手企業の下請けではなく対等なパートナーとして両者に実利をもたらすことが使命だ」と語る。

米国の時価総額上位はアップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックなどベンチャー育ちの企業が独占し、企業単位で新陳代謝が進んでいる。日本は重厚長大型企業が依然上位である。大事なのは新陳代謝が進まないことを否定するのではなく、日本型の産業進化論がオープンイノベーションの中に見いだされるかもしれないことだ。ベンチャー企業=下請けという構図ではなく、成長の速度や確度を上げる触媒、公正なプラットホームとして大企業が機能するとともに、内部的な競合・対立を仕切る強いリーダーシップも必要となろう。

(2016年10月6日付日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

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