IoTとAIが実現する「不老不死」ビジネス―DMM亀山氏、ヤフー宮澤氏、GCP高宮氏による大放談(2) 

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前回に引き続き、知る人ぞ知るインターネット界の巨大コングロマリット、DMM会長亀山氏と、インターネット界の「王者」ヤフーの上級執行役員宮澤氏、そしてグロービス・キャピタル・パートナーズのベンチャー・キャピタリスト高宮氏の”言いたい放題”な講演の模様をお届します。(第2回/全3回)

ネットの次の手は何か?~異才たちの大放談~講演録[2]

牧野正幸氏(以下、敬称略): さきほど、ポスト・デバイスとして音声のお話が出たけれども、それ以外でも今は各種IoTシステムが世の中に結構出回ってきた。たとえば「Amazon Dash Button」。今、べらぼうに売れてるみたいだ。そういうものも含めた各種IoTが今後ネットにどんな影響を与えるのか。まず宮澤さんのほうからビシっと言ってください。

宮澤弦氏(以下、敬称略): ヤフーとしても取り組んではいるけれども、IoTというのは具体的に「いつ来るか」というのが一番読みにくい領域だと思う。早ければ2~3年で来る可能性もあるだろうし、ひょっとしたら5年経ってもそれほど伸びていない可能性だってあるかな、と。だから、まあ、のんびり準備していこうという感じで。

IoTの波は、緩やかにやってくる

牧野: (笑)本当に?

宮澤: 本当です。というのも、たとえば「Amazon Dash Button」が日本で買えるようになりましたが、今はユーザーも変わるものと変わらないものを常に見極めようとしている感じです。変わることでどんどん便利になるものはあるけれど、他方では、人間だから「人間って変わらないじゃん」というのもある。大切なのはその辺のせめぎあいをどう見るかということだと思うので。

牧野: 僕や亀山さんが子どもの頃は次から次へと革新的な製品が世の中に溢れていた。電子レンジだのなんだの、次々と出てくるものにマジでウキウキしてた世代だと思う。で、ある時期からは、主にアメリカから出てきていたインターネットの話にワクワクしてたわけ。「面白い」「便利だ」「すげーな」なんてものが出てきていて。でも、最近はそのあたりも家電や車と同じように行き詰まっちゃってる気も少ししている。そんな状況だからこそ、もっとワクワクできるような話を、亀山さん、してください(笑)。

亀山敬司氏(以下、敬称略): いきなり(笑)。まあ、IoTって言っても所詮は機械だから。たとえばウチは「DMM.make AKIBA」っていうものづくりのコワーキングスペースを運営してる。そこでいろいろな人がロボットとかスマートロックとか、要はITとつないだデバイスをつくったりしてるわけ。でも結局それはただの機械。今までみたいに「電子レンジを売りましょう」「テレビを売りましょう」という形でやってもビジネス的にはあんまり儲からないんだよね。モノだけつくっても。

一方で、さっきの話みたいに、デバイスが組み込まれたコンタクトレンズを通して世の中を見るようになると、たとえば自分が見たものすべてがデータとしてクラウドに蓄積されていく。で、仮に俺が交通事故で死んじゃったとしたらさ、蓄積されたデータをAIに学習させて俺の人格をロボットに移したりできるわけ。そうすると俺の子どもたちやカミさんの寂しい思いが少し和らぐかもしれない。そんなサービスを月額課金にしたら、皆、なんとなく「失いたくない」っていう感覚で使い続けるかもしれない。

牧野: それって本当にビジネスになりそうですね。

IoTとAIが実現する「不老不死」ビジネス

亀山: そういうのもある意味で不老不死というか。で、たとえばそこに息子や孫のデータを足していったりすると、そのAIに祖先のあらゆる叡智や記憶や歴史が入ったりもする。じゃあ、さらに血族以外でも共有していろいろな人たちの叡智を入れていくとどうなるか?それこそ「ルパン三世」で描かれてた「複製人間マモー」みたいに、もうバーチャルな空間で神様みたいな存在を生み出したりできるのかもしれない。

これ、意外とあり得ると思う。世の中には民主主義が独裁者を求めたりするような面があるからね。なんだかんだ言いながらも、人っていうのは自分たちが信じたいもの、「これに従ってりゃ間違いない」ってものを求める気持ちがあると思うんだよね。だから、いろいろな人たちの目に映った映像から何から何まで、叡智をクラウドに集めて、それを崇めようなんていう思いが世の中で育っていくんじゃないかなと。

そういうことが少しずつ自然にはじまる。今だって、みんなこの北海道(G1サミット会場)に集まってるけど、スマホを見てない人はいないと思う。昔なら雪景色を見て「うわーきれい!」なんて言ってたのに、今はこういう大自然のなかにいてもスマホで外とコンタクトを取ってたりする。

明らかにリアルな世界よりもバーチャルな世界への依存度が高くなってて、みんな1日1回はスマホを見ないと生きていけなかったりする。俺たちくらいのオヤジですらバーチャルな世界への依存が自然になってきている。いわんや若い20代なんかは完全にそれを受け入れると思う。とにかくリアルとバーチャルの比重が変わってくるのは間違いないし、今だとあり得ないようなことだって起こるようになると思う。人の気持ち自体が変わっていくからね。

データが最重要になる、極端に「便利な」世界は快適か

高宮慎一氏(以下、敬称略): (会場を指して)そちらにいらっしゃる川邊(健太郎氏:ヤフー株式会社 副社長執行役員, 最高執行責任者[以下、敬称肩書略])さんの「第4次産業革命の石油はデータだ」っていう名言を僕はいつも使わらせていただいています(笑)。本当にその通りだと思います。今のC向け(BtoC)のお話でも自分の記憶をデータとしてアップロードするわけで、そのデータが宝の山になります。別セッションで語られていた「コネクテッドインダストリーズ」のメソッドも、「Amazon Dash Button」も同じです。ボタンを押せばアマゾンに注文データが飛んで、アマゾンから発注されます。あれ、ボタンを単品で売るというのは布石だと思っています。そのうち家電メーカーとのアライアンスで家電に組み込まれて、最終的にはアマゾンのプライベートブランドを売っていく形になると思います。だから。企業内データだけじゃなくてバリューチェーンや世の中全体でもデータが統合されていくと思います。IoT洗濯機やIoTディッシュウォッシャーみたいなのが出てきて、オプトインすると、たとえば洗剤がなくなったら勝手にリフィルされるような世界になっていくんだろうと思います。

亀山: そういうものに、自然に慣れちゃう。

宮澤: 「IoT」って言葉が今はバズワードになって「T」のほうばかりが注目されてるけど、本質はセンサー。いたるところにばらまかれたセンサーのデータをどう料理するかが本質だと思う。で、そのサービスが面白くなっていくって考えると今後の5年間もわくわくする。とにかく、モノというか、家電が中心になる世界観とはまったく違うんじゃないかなと思う。センサーもいろいろなところにタダでばらまけばいいと思う。そうすると拡張していく。記憶も拡張されるし、「目」も拡張されていく。

亀山:  アマゾンは「しばらくは儲けなくていい」と思ってるから、タダで配ったりもする。送料を無料にしたようにね。みんな、そのパワーになかなか勝てない。このまま放っておくと、アマゾンが描いているような世界になったとき、ほとんどの仕事がなくなるというか。今まで1000人でやってた仕事が10人ぐらいでできるような世界になるから、恐怖を感じるっていう部分はある。でも結局のところ、「アマゾンは便利だよね」ってなるから、やっぱりみんな自然に受け入れていくんだと思う。

それで、たぶん10年ぐらい経ったら、トランプさんみたいな人が現れて、「ロボット禁止令をつくるから俺を大統領にしろ」なんて話にもなり得るわけよ。雇用のことを考えると、メキシコの人たちが云々なんていう話よりもロボットのほうが大きな問題になるんだし。みんなそういうことを思いつつ、進んだり止まったりしながら、それでもやっぱりロボット化社会へ進んでいくんだと思う。

出版業界の人たちが「いや、紙はなくなりませんから」なんて言ってたように、小売でも「人間同士のコミュニケーションが大事ですから」なんて話も出る。それ、すごく分かるんだけど、実際には商店街のオヤジさんたちも昔は同じことを言ってたよね。 でもコンビニができたら、人とのコミュニケーションがあるわけじゃないけど、やっぱりコンビニに行くし、品揃えの良いデパートに行ったわけじゃない。

そんな風に「俺たちは義理と人情で商売やってんだ」という世界を、デパートやコンビニが変えてきたわけよ。で、今度はそのデパートやコンビニがアマゾンとかに取って替わられようとしてる。そこで、「いや、人と人とのコミュニケーションを大事に」なんて言っても、「昔言ってたことと逆だよね」とは思う。結局、合理化に進む社会ではその辺は避けられないから、やっぱり現実から目を背けないで受け止めないといけない。その上で何ができるか考えないとね。

牧野: BtoCのエリアはどんどん合理化されていくでしょうね。合理化が進まないのはBtoBのほう。今でも相変わらず営業が足を運ばないとほぼほぼ売れない。

亀山: そういうもんなんだ(笑)。

牧野: 一部ではセールスフォース・ドットコムみたいなやり方もあるし、いきなりアカウントを取得して使ってもらうのも不可能じゃない。ただ、やっぱり売上の大半はいまだ足を使ってる営業マンが立ててる。だからなかなか合理化が進まないんだけど、BtoCはそのあたりの合理化が恐ろしい勢いで進んでると思う。

データとロボットに囲まれて、私たち人間ができること

亀山:  そういう世界で今から子どもたちに何を教えなきゃいけないのか?記憶力っていうのはあんまり役に立たないわけで、むしろ想像する力とか、いろいろなものをマルチに理解する力が必要になる。たとえば昨日のナイトセッションでも、いくつかのテーブルでそれぞれ異なるテーマが議論されてたでしょ。 ロボットっていうのは、どっちかっていうと1つひとつのタスクを専門的にこなすのが得意なんだと思う。でも、人間が得意なのはいくつものテーブルを横断すること。こっちのNPOもあっちの政治もそっちの自由貿易も、いろいろなものを広く理解しながら調整することができる。マルチにまとめたり、そこから次の世界を想像させたりするのが大事になるんだろうね。(会場の高濱正伸氏:株式会社こうゆう 代表取締役を指して)「花まる」さんがやってる教育も、そういうとこがあるよね。

 

※この記事は、2017年3月19日に北海道ルスツリゾートで開催されたG1サミット2017のセミナー「ネットの次の一手は何か?~異才たちの大放談~ 」を元に編集しました

19歳で露天商に師事し、様々な地域でアクセサリー販売を手掛ける。その後、24歳の時に家族が経営する飲食店を手伝って欲しいと請われ石川に帰郷。雀荘やバーなどの経営を経て、1980年代後半レンタルビデオ店を開業。その後、卸売を通さないDVDの販売ルートの確保や、販売時点情報管理(POS)の開発/無料配布により事業を拡大。インターネット黎明期であった1998年には他社に先駆けてネット配信事業(現DMM.com)を開始し、動画配信、通販、レンタル、オンラインゲーム、英会話、FX、ソーラーパネル、3Dプリンターと多岐にわたり事業を手がけ現在に至る。

グロービス・キャピタル・パートナーズでコンシューマ・インターネットの投資を担当。戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルに て、プロジェクト・リーダーとしてITサービス企業に対する事業戦略、新規事業戦略、イノベーション戦略立案を主導。東京大学経済学部卒(卒論特選論文受賞)、ハーバード大学経営大学院MBA(二年次優秀賞)。

1982年生まれ、2004年東京大学卒業直後に株式会社シリウステクノロジーズを創業、代表取締役に就任。2010年8月、ヤフーにより買収後はYDN(インタレストマッチプロジェクト)のプロジェクトリーダー、2014年4月より執行役員(最年少)、検索サービスカンパニー長に就任。2015年4月より検索に加え、トップページやニュースなどを含めたサービスを管掌するメディアカンパニー長就任を経て、2016年4月より現職。北海道札幌市出身。

モデレーター

1963年、神戸市生まれ。大手建設会社、ITコンサルタントを経て、1996年に同社を設立。業界の常識を覆すイノベーションを起こし続け、日本初の大手企業向けERPパッケージソフト「COMPANY」は、市場シェアNo.1として不動の地位を築く。イノベーションの源泉となる“優秀な人材”=「クリティカルワーカー」に着目し、新卒向けの「問題解決能力発掘インターンシップ」など、画期的な採用プログラムを展開。また、独自の人事施策により、個人の成長を最大化する働き方を可能にするなど、「働きがいのある会社ランキング」( GreatPlace to Work Institute)では6年連続ベスト4入りを果たしている。著書に『「働きがい」なんて求めるな。』(日経BP社)等

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