ビズリーチとウォンテッドリーが挑戦するHRテック革命 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

HR(ヒューマン・リソース)領域は、企業経営における三つの経営資源(ヒト・モノ・カネ)の一つとして定義されながら、驚くほどデジタル化やイノベーションが進んでいない。しかしながら最近、「HRテック」などというキーワードが叫ばれ始めている。その要因や動向を探ってみたい。

ビズリーチ、ウォンテッドリーの例

ビズリーチ(東京・渋谷)は2009年に設立され、即戦力人材と企業をつなぐ会員制転職サイト「ビズリーチ」を開設、既に数千の企業が同サービスを利用している。その後も複数の人材サービスを展開し、現在では700人近くの従業員数の組織へと成長している。南壮一郎代表取締役社長(40)は、米国タフツ大学にて複数学位を取得後、外資系金融機関に就職、その後香港系通信企業グループの日本支社立ち上げや楽天球団の創業メンバーとして参画するなど、一貫して事業の立ち上げに関与してきた。

「コスト競争に代わってイノベーションが競争の主戦場になりつつあり、価値を生み出せる人材の獲得と活用が企業経営における最重要課題として認識されるようになった。真に開かれた人材市場を構築し、企業経営のあり方や働き方を変え、ひいては日本の生産性を上げていくことを目指している。そのためには、事業戦略を実現するための人材戦略を立案・実行するプロフェッショナルとしての『戦略人事』が必要だ」と南氏は語る。

ウォンテッドリー(東京・港)は、フェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上における人のつながりを活用して、企業とユーザー(労働力)をマッチングすることができる「Wantedly」というサービスを展開、月間100万人の利用者数を誇る。仲暁子代表取締役社長(31)は、京都大学を卒業後外資系金融機関に入社し、その後フェイスブックの日本拠点の立ち上げに参画した。実名制のSNSが世界中の個人をエンパワーしていることに感銘を受け、自身もそのようなサービスを決意し、10年に同社を設立した。

「『すべての人が最大価値を発揮できるように最適につなげる』を目標にサービス開発を進めている。今年に入ってブログやチャットなどのコミュニケーション機能がユーザー数を大きく伸ばしており、採用領域の範疇を超えてビジネスSNSそのものとして進化を遂げつつある。労働力の流動性や給与水準を世界レベルに引き上げ、最終的には日本に世界のトッププレーヤーを集められる環境をつくることで日本の経済競争力を上げていきたい。イノベーションを起こす最大のボトルネックはヒト・モノ・カネの中でも圧倒的に『ヒト』だ」と仲氏は語る。

「戦略人事」の存在が重要

インターネットというツールやソーシャルネットワークという生態系は、ビジネスや資本主義の進化を劇的に早める一方、その速度に対応する労働力の獲得や活用・育成に関するインフラのイノベーションが追いついていなかった。両社のようなサービスによって、人の価値や能力に関する情報の非対称性や不透明性を解消することができれば、個々の企業における事業戦略と人材が表裏一体となり、企業と個人のミスマッチが解消され、結果的に国としての競争力を高める重要な機能として不可欠なものに進化していくだろう。そのためには、何よりもまず、両社のようなサービスを適切に使いこなすことのできる「戦略人事」の存在が重要だ。
 

(2016年8月4日付日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

名言

PAGE
TOP