日系ベンチャーのアジア進出、市場こじ開けるくらいの気概が必要 

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アジア市場、特に東南アジア各国に積極的に進出している日系ベンチャー企業が増加している。アジア全体で人口38億人とも言われる市場の大きさは十分な魅力だ。しかし、実際には政治的・文化的・宗教的・歴史的な背景が異なる国によって構成され、決して一筋縄では行かない。果たして、現地企業や米国企業などとの競争戦略上、勝算はあるのだろうか。

2013年に東証マザーズ市場に上場したブイキューブのウェブ会議システムは7年連続国内トップシェアを誇る。アジア全体でもシェア第2位。最高経営責任者(CEO)の間下直晃氏(37)は早い段階からグローバル企業の出資を受けながら国際感覚を養い、自ら率先してアジア市場を開拓するためにシンガポールに活動拠点を移した。

現在、海外に7拠点を構え、海外売上高比率はアジア各国を中心に15%に達する。上場までに、いち早くシステム構築型からクラウド型への事業転換を敢行し、上場後も大手企業の事業部門買収やドローン技術への投資を実行するベンチャーの雄である。

間下氏は各国での個別具体的な現地化と日本本社のグローバル化の両輪の重要性を強調。さらにコミットメントの高い体制作りを成功の鍵として挙げ、こう語る。

「アジアの魅力は米国企業も市場を未開拓であるところ。各国特有の事情や特徴を丁寧に取り込みながら、何を目的にアジア展開をするのか、それぞれの国をどう位置付けるのかを明確にして、中長期的な視点で市場を育てていく覚悟が必要」

「事業のグローバル化には日本にある本社のグローバル化が不可欠。本社にも影響力がある人間が現地から指示を送ることがその推進力になる。当社はそれをCEOの自分自身が担っている」

ロンドンに本社を置くクイッパーはディー・エヌ・エー創業メンバーだったCEOの渡辺雅之氏(40)が10年末に設立した。「知の流通革命」を実現すべく、インターネットを活用した世界的教育プラットフォームの構築を目指している。

11年のサービス開始以降、同社のスマートフォン(スマホ)アプリは全世界で1200万人が利用している。14年に始めた参入障壁が高い学校向けサービスが既にフィリピンやインドネシアで普及し、約20万人の先生と約120万人の生徒が登録している。

大学在学中から20カ国以上の発展途上国を渡り歩き、経済格差や教育問題に強い関心を持つ渡辺氏がアジア市場に着目した理由はフロンティア精神に満ちあふれている。

「アジアはスマホの浸透率、人口構成、学校現場の先生の自由度、社会的問題の大きさなどの要因と自分自身の起業家としてのモチベーションがマッチする市場である。現地に深くに入り込み、困難を楽しむことが第一。ユーザー数がクリティカルマスに達するまでマーケットを『こじ開ける』くらいの気概と行動量、試行錯誤を伴う」

「サービスやデバイス、インフラ全てにおいて日本を前提とせず、細分化された教育業界の個別ニーズに拘泥することなく、いかにプラットフォームとしてシンプルかつ拡張性のあるエンジニアリングを行うかが重要」

魅力的に映るアジア市場を攻略する鍵はサービスの拡張性や普遍性に考慮しつつ、時間軸を含めた個別具体的な市場への適応力だ。その実効性を高めるためには、逆境耐性の強い経営層の高いコミットメントが重要と言える。
 

(2015年3月12日付け日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

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