マネジメントチームの重要性: 経営は個人ではなくチームで 

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『グロービスMBAビジネスプラン』から「マネジメントチームの重要性」を紹介します。

近年、「ピボット」という考え方が浸透してきた。新事業開発において初期のビジネスモデルや製品・サービスが上手くいかなかったら、速やかにそれを改良・変更していくという発想である。ピボットの概念が広がった背景には、事業初期においてビジネスモデルを変えることは比較的容易だが、新事業のリーダーやマネジメントチームを変えることは(特にベンチャー企業において)容易ではないという認識が広がったことがある。つまり、鍵を握るのは、結局はリーダー、そしてマネジメントチームという「ヒト」の部分なのだ。リーダー1人で出来ることには限界がある。ビジョンや理念を共有しつつも、多様性があり、相互補完的なスキルを持つマネジメントチームを早期に作ることが新事業の成功確率を高めるのである。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

マネジメントチームの重要性

優れたマネジメントチームは、新規事業の成功に不可欠の要素である。事業の成功要因になるのは、製品やビジネスモデル、技術の革新性や優れた事業戦略であると考えられがちだが、優れたリーダーとマネジメントチームは、それらと同等以上に成功を左右する。

「アメリカのベンチャー・キャピタリストは、優れたアイデア(あるいは製品や技術、ビジネスモデル)さえあれば資金を出す」というような論調を見ることがあるが、これは誤解である。実際には、アイデア以上に、新事業リーダーとマネジメントチームが重視されている。

アメリカでよく引用される言葉に、ジョージス・ドリオットというベンチャー・キャピタリストの口癖がある。その口癖とは「Bクラスのアイデアを持つ、Aクラスの人物に投資することを常に考えろ。Aクラスのアイデアを持つ、Bクラスの人物には決して投資してはならない」というものである。

アメリカでもかつては、ハイテク・ベンチャーブームに乗って、製品や技術を重視して投資をしていた時期がある。ところが、経営者に経営手腕が欠けていたために失敗する企業が続出した。その経験から得られた教訓が「人物重視」、そして「マネジメントチーム重視」である。「人物重視」といっても、「人柄が大事」というのとはやや異なる。人柄を無視してよいわけではないが、事業を経営できる能力にウェイトがある。

ところで、マネジメントチームをつくる意味は何か。それは、個人には得意・不得意やスキルの限界があり、1人でできることは限られている、ということに尽きる。新事業リーダー1人だけでは、彼/彼女のスキルの限界が、そのまま組織の限界、成長の限界となる。ビジネスプランを考えるにあたっては、事業のマネジメント全般に必要なスキルを充足すべく、最適なチームを組むことを考える必要がある。

マネジメントチームの構想

ビジネスモデル、事業戦略がある程度できて、事業のイメージが見えてきたら、マネジメントチームの構想を練らなくてはならない。いかによくできた事業戦略でも、マネジメントチームを考えないままでは、事業を立ち上げてから、ここがうまくいかない、ここができない、ということになりかねない。それからあわてて必要な人材を探しても、時間の余裕がなくて思うようなリクルーティング(社内、社外を問わず)ができず、事業が進まなくなってしまう。

マネジメントチームの構想を練る際には、ます、事業戦略を実行するにはどうするのか、どのような行動が必要かをイメージする。そして、事業戦略を実行するために「組織として」持っているべきコンピテンシー(期待される成果を実現するうえでの行動特性)の質と水準、すなわち何をどの程度できなくてはならないか、を洗い出す。さらにそうしたコンピテンシーがなぜ必要かを考え、競争優位を生み出す重要なコンピテンシーは何か、組織内に保有すべきコンピテンシーは何かを検討する。この段階で、組織外にアウトソーシングするべきコンピテンシーが見えてくる。

組織に必要なコンピテンシーのほか、どのような組織文化にしたいかも考えておく。言い換えれば、「どんな雰囲気の組織にしたいか」というイメージを持つことである。意見が自由に言える組織がよいのか、新事業リーダーの指示どおりに整然と動く組織がよいのか、自由なイメージにしたいのか、フォーマルなイメージにしたいのか、などである。

たとえば、3K(きつい、汚い、危険)のようなマイナスイメージがある事業で、清潔感がある、接客マナーがよい、従業員が誇りを持って働けるなど、プラスイメージを打ち出したいのであれば、清潔感やマナー、プロフェッショナル意識を重視する組織文化が必要であろう。望ましい組織文化がイメージできれば、それに適合する、あるいはそうした組織文化を創り出せるような人物の性格、言動など、人物像が明確になる。

以上のように、組織に必要なコンピテンシーや組織文化を把握することによって、マネジメントチームに必要な人材のコンピテンシー、性格、価値観がわかってくる。そして新事業リーダーやメンバーを選定する際に、その人材がなぜ必要なのか、どのような役割を果たしてもらうかが明白になる。また、ベンチャー企業でリーダーは決まっていて、メンバーを採用する場合にも、「自分がやりたくないことを他人にやらせる」のではなく、「事業の成功に必要不可欠だが、自分にはできないことだから、力を借りる」と考えることができるのである。

マネジメントチームの人選にあたっては、メンバーの相互補完性にも注意を払う必要がある。似た者同士が集まったのでは、発想が偏ったり、価値観が固定化して、外部環境の変化への対応が鈍くなるなどの弊害が生じる。

たとえば技術が競争優位の源泉になる事業であったとしても、マネジメントチームが「技術屋」ばかりでは、研究開発のみに注力してしまうだろう。顧客ニーズの把握や営業、資金調達など、マネジメントに必要なほかの機能に目が届かず、やがて行き詰まってしまうおそれもある。

だが、必要な人材とその理由を理解できていれば、意識して相互補完性のある、異質な人材を集めるようにするはすだ。ホンダの本田宗一郎と藤沢武夫、ソニーの井深大と盛田昭夫のコンビは、いずれも技術者と経営管理者という異質な能力の組み合わせで成功した例である(盛田はもともとは技術者だが、それ以上に経営管理者としての高い能力を有していた)。

(本項担当執筆者: グロービス出版局長 嶋田毅)

次回は、『グロービスMBAビジネスプラン』から「支援体制」を紹介します。
 

『[新版]グロービスMBAビジネスプラン 』 
グロービス経営大学院 編著
ダイヤモンド社
2,800円(税込3,024円)

 

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『ビジネス仮説力の磨き方』『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード
図解 基本フレームワーク50』(以上ダイヤモンド社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『利益志向』(東洋経済新報社)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBA事業開発マネジメント』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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