感度分析: 転ばぬ先のシミュレーション 

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『グロービスMBAビジネスプラン』から「感度分析」を紹介します。

どれだけ正確性を期した財務予測も、新ビジネスにおいて、その通りに物事が運ぶことはまずありません。そうした時に役に立つのが感度分析、すなわち数字上のシミュレーションです。実際に起こりうる状況をある程度想定し、その時にどのような利益額や現金残高になるかを見積もっておくことで、実際にそれが現実になった時にしかるべき対応がとれるようになるのです。特に資金調達で苦労することの多いベンチャー企業の場合、ある程度厳し目の状況も事前にシミュレーションし(感度分析し)、準備をしておくことは非常に重要です。場当たり的ではない、そうした事前の準備が企業の命運を左右することは決して少なくないからです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

感度分析

正確な売上げ予測を立てることは難しい。また、費用についても予測がつきにくい場合がある。したがって、予測が外れた場合を想定し、「客があまり集まらなかったら、どうなるか」「価格を下げたら、どうなるか」などについて考えてみなければならない。感度分析とは、このようにさまざまなケースを考え、数字を入れ換えてみて、ボトムライン(この場合、月末キャッシュ残高)がどう変化するかを見ることである。キャッシュ残高を見るだけでなく、客数や単価を変化させたとき、売上げや月次収支がどう変わるかを検討することもできる。

感度分析を行う場合、注意しなければならない点が2つある。

1つは、事業に大きな影響を与え、変化する可能性の大きい項目の数字を中心に動かしてみることである。ケースのイーズ・オフでは、顧客の人数や価格などがそれに当たるだろう。価格変動の激しい原材料を使っている場合は、その材料の価格を動かしてみる。

2つ目は、数字を動かす場合は、一度に1つずつ動かしてみることだ。そうしないと、どの数字の変化がどのくらいのインパクトがあるのか、わからなくなってしまう。その反対に、動かした数字に必ずリンクして変化する項目がある場合は、リンクしている数字も忘れずに動かすようにする。たとえば、売上げが変化すれば、それに応じて仕入れ額も変化するから、売上げの変化に応じて仕入れ額も変えなければならない。借入金を増やしたら、そのぶん支払利息も増やさなければならない。

できれば互いにリンクしている項目は、片方を変えたらもう片方が変わるよう、あらかじめ表計算ソフトの中に計算式をインプットしておく。

感度分析の実例

では、実際にはどのように感度分析を行うのだろうか。再びイーズ・オフの元の計画の例で見てみよう。なお、以降は、売上げや費用はすべてキャッシュベースのものとして議論を進める。また、話を単純化するために、本店の業績のみを扱うものとする。なお、イーズ・オフのケースでは。早期の出店を見込んでいたため、0力月時の本店ぶんのボトムラインとなるキャッシュ残高を400万円と仮定した。

図1に、イーズ・オフ本店のシミュレーションを示した。 Line1の来店客数の欄に示されているように、1月には500人が来店し、3カ月目以降は顧客数が833人でほぼ一定となる前提だ。1人の顧客が1回のサービスに対して払う金額(客単価)は最初が平均7000円で、3カ月目には7200円になると予想する(Line2)。2号店のオープン以降は人件費の配賦が減り、広告費も減額する予定であることから、3カ月目からは利益が出る(Line10)。月末のキャッシュ残高も、2月を底に増加し始める(Line12)。

このシミュレーションを使って、感度分析をしてみる。

図2に1つ目の分析の結果を示した。客数と客単価をオリジナルのシミュレーションとは変化させ、1月の状況が6カ月間変わらない場合を予測してみた(Line1)。結果はLine3に見られるように売上げは横ばい、Line10に見られるように月次の収支もマイナスのままである。このペースでいくと、月末キャッシュ残高は8月でマイナスに転じる。このままではじり貧なので、営業を強化する、費用を削減するなどの措置が必要になってくる。

図3は、客数の予測をオリジナルのシミュレーションのとおりに戻し、さらにLine2の平均客単価が毎月3%上昇すると予測する。顧客が定着し、より高額のサービスを求めるようになる、と考えた結果である。この変更の結果、売上げは大きく伸び、6月の売上高はオリジナルのシミュレーションより76万円近く多くなっている。月末キャッシュ残高も増加し、6月末には1000万円を超えるまでになる。こうなると、さらなる新店舗の出店や営業強化などに資金を回すゆとりも出てきそうだ。

このように、数字を少し変えただけで、シミュレーションの結果は大きく変わってくる。起こりうるさまざまなケースを予測して、感度分析をしておけば、実際にどのケースが起きても、少なくとも驚くことはない。すべてのケースの結果に対して準備をしておく必要はないが、どうやって対処するかは考えておくことができるだろう。

(本項担当執筆者: グロービス出版局長 嶋田毅)

次回は、『グロービスMBAビジネスプラン』から「マネジメントチームの重要性」を紹介します。

 

『[新版]グロービスMBAビジネスプラン 』 
グロービス経営大学院 編著
ダイヤモンド社
2,800円(税込3,024円)

 

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『ビジネス仮説力の磨き方』『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード
図解 基本フレームワーク50』(以上ダイヤモンド社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『利益志向』(東洋経済新報社)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBA事業開発マネジメント』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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