人前で話す恐怖に勝つ―ライオンの餌食にならないための方法 

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今回は、ライオンに食べられる恐怖を克服する方法についてお話しします。とはいえ、ライオンに食べられると本気で心配したことのある方はいないでしょう。多くの方がビジネスに精を出しているのは東京、上海、ロンドン、ニューヨーク、あるいは世界の主要都市など、高層ビルの谷間ですから。しかし、ライオンを怖がる気持ちは確かに存在します。皆さんの脳の奥に潜んでおり、多分この前プレゼンをした時に感じたのではないかと思います。

人間は死ぬことより人前で話すことを恐れるものなのか?

「ほとんどの研究結果によれば、人間が最も恐れるのは人前で話をすることである。2番目に恐れるのが死なのだ。死は2番目なのだ。その通りと思うかね?このことはすなわち平均的な人間であれば、葬式に行く場合、追悼の言葉を述べるより棺桶に入った方がましだと感じるということになのだよ」(ジェリー・サインフェルド/俳優・コメディアン)

有名なこの話、聞いたことありませんか。特に人前で話をするためのトレーニングをする人達にとっては、自身の仕事がどれだけ必要とされているかを際立たせる話なので、しばしば用いられます。

これは、アメリカで出版された『The Book of Lists』という本が元になっています。1977年の発行で、人間が最も恐れるものをリストにしてあります。ナンバーワンは何でしょうか?――人前で話すことです。死は6番目でした。病気にかかることと引き分けで3番目の虫よりもさらに後だったのです。同じ論理に従うと人は死ぬことより虫の方が怖いということになります。しかし、それらを裏付けるための調査は実際には全く行われていません。この神話、ないし何らかのアレンジが加わった話が、長年の間あまりにも頻繁に使われてきているので、ほぼ事実として扱われているのです。そして、繰り返し述べられることで、他人の前で話をし、プレゼンをすることに対してなおさら億劫になるという危うさをこの話は秘めているのです。

人前で話すのを恐れる理由

人前で話すのに、大きなストレス、心配、恐れが伴うことはだれも否定しないでしょう。最悪の場合スピーチ恐怖症という様相を呈することもあります。しかしスピーチ恐怖症という言葉は、スピーチに対する恐れが死に対する恐れよりも大きいと言うには無理があります。

それでも人前で話すのを億劫に思う心理学的な根拠は実在するのです。種としての人間の過去の深い部分に働きかけ、非常にありふれた人間の恐怖とつながっているのです。それは、村八分に対する恐怖、仲間外れにされることに対する恐れです。

人間というのは生来、村八分になるのを恐れています。これは人間の進化と集団に所属する必要性から出た結果です。太古の昔、集団に適応できなかったりうまく振る舞うことができなかった者は部族から追い出され、ライオンに食べられる恐怖と闘いながらたき火から遠く離れた暗闇の中で震え、腹を空かせて一人ぼっちになっていたことでしょう。その時の恐怖と、多くの人が立ち上がってプレゼンを行わないといけなくなった時に感じる恐怖には、同じような心理的状態が発現します。口が渇き、冷や汗をかき、体が震え、目が危険を探してきょろきょろします。ライオンが飛びかかってくるのを待ち構えているような状態です。

立ち上がって集団の前で話す必要が出たとき、人間の脳には太古の昔から受け継がれている恐怖が語りかけてくるのです。聴衆に嫌われ、安全な集団から追い出され、その結果ライオンのご馳走になってしまうに違いないと。脳のそこの部分が人間に対して、人前で話す必要がある時パニックを起こすよう指令を出しているのです。

ライオンの餌食にならないための方法

それでは我々の先祖たる古代人は部族から追い出されないように、何をしていたのでしょうか。 腕を懸命に磨いていたのです。狩猟や道具作り、物語を話す技を上達させていたのです。練習を重ね、技を身に付けて上達していったのです。

他のどの分野でも同じですが、技を向上させることにより自信が積み重なるのであり、何事においても上達するための最善の方法とは、できる限りとにかく数をこなすことです。人前で話すのを恐れることは、すなわち自分の腕前が心配であることと同じであり、何事も最善の上達法とは何度もやってみて練習することなのです。

さらに話す経験を積んだ人でさえも、うまくやれないのではと心配することはあり得ます。通常は準備不足の現れです。経験に関係なく、自信をもって話せる人というのはたいていの場合しっかり準備して、練習を積み重ね、題材について知識を深め、十分にリハーサルを行っています。

ですから、プレゼンのスキルを上げるための勉強を自発的に行い、プレゼンをする必要が出たときにはしっかりと準備してください。そうすれば部族との関係はよりよいものとなります。もちろん、机上の勉強より実践の方が常に効果は高いです。恐れと闘う最善の方法とはそこから逃げないことです。出向いて行って、できるだけ多くの数のプレゼンをこなしましょう。プレゼンを行うチャンスがある場合は必ず手を挙げるようにしてください。

私がライオンに対する恐怖を克服した方法

私の講演者としてのキャリアの最初は、政府の税額控除プログラムの研究開発についてプレゼンを行うことでした。聴衆は会計士やエンジニアだらけでした。税金以上に退屈な話題などあるのでしょうか?

それでも私はその仕事を進んで引き受け、手を挙げたのです。なぜなら自分にはプレゼンと演説の腕を上げて、そうすることで自分の中にある恐れの気持ちを克服する必要があると自覚していたからです。さらに信じられないでしょうが、以前は人前で話すのがひどく苦手でした。しかしながら実際にやってみることで徐々に上達していき、経験を通じてだんだんと上手になりました。私が上達するのには2、3年かかりましたが、皆さんはずっと早く上達できます。勉強して、他の話し手を観察しその人から学び、あらゆる機会にプレゼンをすることで。もちろん、この恐れというのが完全になくなることはありませんし、群衆の前でプレゼンするときには、未だに若干神経質になります。けれども、十分に練習することでこの恐れは制御可能となり、傍からは分からなくなります。

そして実際にプレゼンするときには、しっかりと準備してください。自分ならではのプレゼンを生み出すために時間をたっぷりと割き、同僚の前でやってみて意見を聞き、プレゼンを洗練されたものにし修正を加えましょう。さらにリハーサルを行いスライド1枚1枚を把握するようにしましょう。そうすれば、あなたはプレゼンに対してさほどの心配はしなくなります。

それどころか、人前で話すのが楽しいと思えるようになるかもしれませんし、プレゼンを行うことで、世間と自分の独創性を分かち合うのを楽しみに待つようになります。私はもちろん楽しんでやっています。人前で話そうとすると極度に神経質になり嫌でたまらなかったのが、自分から人前で話すチャンスを探すようにまでなりました。どうしてでしょう。楽しいからです。でも自分が向上できるからというのも理由です。自分が出世するのに役立ち、自分が他の人を手助けするのに役立つからです。必要だからです。

21世紀で中核となるスキル

「プレゼンの技能は、読み書き算盤と同等に、あらゆる学校のカリキュラムの中心とするべきです。これから数十年後には重要な生きる力の1つになりそうです。」(クリス・アンダーソン/TEDキュレーター)

プレゼンや人前で話をする力を向上させることは、望ましいものでなく、ビジネスで成功するには必要不可欠なものなのです。自分の考えを共有し、リーダーとなり、困難を切り抜けて事業を成功させ、他人のために価値を創造し、世界を変える責任が私たちにはあります。

私を含めて皆、人前で話そうとするといまだに若干神経質になり億劫だと感じます。でも他のあらゆるスキルと同様に、実際に話をする前に、練習し、経験を積み、備えをすることで上達するのです。
 

プレゼンの技術や異文化マネジメントについて英語で学びたい方はこちら>>

 

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