社内政治の鉄則(1) 無自覚に敵を作ることなかれ 

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社内政治――。

この言葉を聞いて、ドキッとしたり、気が重くなったりする読者も少なくないと思う。あなた自身は、内向きの駆け引きや調整に時間を費やし、神経をすり減らしていないか。顧客のことを考える余裕がないなどという本末転倒に陥っていないか。

我々の限られたリソースやエネルギーは、社内の戦いではなく、より良いサービスや製品を生み出すための努力に注ぎ込みたい。社内に敵など作らず、無用・無駄な戦いは避けて通りたい。

だが、現実は、嫌でも戦いに巻き込まれてしまうこともある、戦わなければならない時がある。そして、戦うならば負けられない。勝たなければならない。

本シリーズでは、社内における戦いのパターンを大きく4つに分類する。

パターン1: 無自覚に社内に敵を作って孤立する
パターン2: 勝てない戦いを挑んで討ち死にする
パターン3: 意図せず戦いに巻き込まれてしまう
パターン4: 上司に戦いを挑む

構成としては、まずケースを紹介する。グロービス経営大学院の学生・卒業生の実体験に基づくものだ。そして、理論などを紹介しながら対処法を考えていく。

さっそく、パターン1の「無自覚に社内に敵を作って孤立する」を見ていこう。

パターン1: 無自覚に社内に敵を作って孤立する

【ケース】
ビジネススクールを優秀な成績で卒業した青山(仮名)は、イベント企画運営会社A社への転職を決めた。マネージャの肩書はつかなかったが、出社初日の各部署への挨拶回りから、「MBAで学んだことを活かして会社の変革に貢献していきたいと思います!」と張り切っていた。

与えられたミッションは現場オペレーションの効率化だった。物事をどんどん前に進めていくタイプの青山は、積極的に現場に足を運び、単刀直入に仕事の話を切り出し、たたみかけるように質問した。論理的な筋道が通っていることを重視し、常にあるべき姿を正論で捲し立て、自分が立てた変革案を説いて回った。

しかし、現場スタッフからは懸念の声が相次いだ。青山の目には保守的な態度に映り、青山の苛立ちは募っていく。その状況を打開しようと青山は営業本部長に直談判するが、「現場の現状を理解していない。あまりにも急進的に過ぎる」という理由で支援を拒絶されてしまう。

「マネジメントが変革に及び腰になっている会社が変われるわけがないじゃないか!」。青山は失望し、会社を去った。

好印象こそが最初に獲得すべきパーソナル・パワー

【講師解説】
転職先や異動先などメンバーとの関係が構築されていない環境に飛び込む時に留意すべきことは、最初に自分に好感を持ってもらうことである。青山は、マネージャの役職、つまりポジション・パワーが無かったので、まずは人に動いてもらうための土壌作りから丁寧に始めなければならなかった。好印象こそが最初に獲得すべきパーソナル・パワーであり、第一印象が極めて大事なのだ。だが、メンバーからはネガティブな印象を持たれてしまったようだ。なぜだろう。

最初の挨拶周りからMBA取得者であることをアピールしたことは、いただけなかった。MBAを知らないメンバーにとっては、自分との共通性が全く見いだせない。人は自分が知らないことに対してまず警戒感を示すものだ。そして、「MBA取得者が、何か自分たちに不利益なことを企んでいるのではないか」とネガティブな感情を抱かれた可能性もある。

そして、最初に形成されたネガティブな印象が、現場とのドライなコミュニケーションによって さらに強められていくという負の連鎖に陥っていく(注1)。いつまで経っても現場と良好な関係を築けなかったのも当然だ。ではどうすべきだったのだろうか。

人間は自分と類似性のある相手を好む傾向にあると言われている(注2)。例えば、出身地、趣味、価値観などだ。したがって、相手と自分とに共通点があることを相手に示すと良い。そのためには、まず相手を知ることが不可欠だ。

人間は、相手から先に何か施されるとそれにお返ししたくなるという返報性の心理(注2)が働き、距離感が縮まる。自分から先に相手に施すには、ここでもやはり相手が求めること、困っていることを知らなければならない。そして自分のできることをやってあげる。

青山の場合、類似性も返報性も意識していない。自分の強み(MBA、論理性)を一方的にアピールしている。相手に反感や嫉妬心を抱かせ、青山本人も気づかぬうちに敵を作ってしまったのだ。こうした無自覚な敵対行動は、社内の自分の地位を危うくしていく。皆さんはどうだろうか。


(注1)ジェフリー・フェファー著、『権力を握る人の法則』を参照
(注2)R. チャルディーニ著、『影響力の武器』を参照
 

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