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MBAって本当に必要ですか?

投稿日:2016/11/28更新日:2019/04/09

先日行われた教員パネルディスカッション「グロービスで何を学び、何を実現するのか」。今後ビジネスパーソンが必要とされる資質や、グロービスで学んだことが自身のキャリアや成長にどうつながるのか、第一線で活躍する教員達が熱く語りました。(全2回)

グロービスで何を学び、何を実現するのか[1]

荒木: 今日は3名の教員と共にディスカッションを深めていきたいと思います。まずは自己紹介をお願いします。

伊藤: 伊藤羊一です。今49歳ですが、3つの仕事をやっています。1つは、Yahoo!アカデミア。ヤフーの中の企業内大学で、リーダー開発の仕事をやっています。前前職は日本興業銀行で、14年間銀行員として働いたあと、文房具・オフィス用品、オフィス家具を手掛けるプラスで11年働いて、1年半前にヤフーに来ました。この間、営業、海外本部、事業再生、物流、マーケティング、事業再生、新規事業開発、経営などいろんなことに従事してきました。

2つ目の仕事が、スタートアップ企業を育てる仕事。メンターとして8つほどのアクセラレータープログラムに関わっていて、エンジェル投資、社外取締役も数社やっています。そして3つ目がここ、グロービス経営大学院での教員の仕事。実は私は4人の中で唯一の卒業生です。通い始めたのは2005年で、卒業後、教員になって3年目です。「リーダーシップ開発と倫理・価値観」と「パワーと影響力」というクラスを担当しています。

内山: 内山英俊です。Unerryという会社の代表取締役をやっています。90年代後半にアメリカのミシガン州で研究員をしていたのですが、その頃は ITバブルだったので、多くの同僚が会社を起こしていました。その1人はグーグルを作り、私はスマートフォンを作る会社を作りました。「スマートフォン」という名称を名付けた人間はいっぱいいると思いますが、私は自分たちが付けたと思っています。

その会社は見事失敗しました。その後、コンサルティング会社に転じて企業再生や携帯会社の海外買収・合併などをやり、携帯サイトを手掛ける会社に移り、さらに2008年ぐらいにスマートフォンが出たときにもう一回新しい波がくるだろうということでANALOGTWELVEという会社を創業しました。今は、Unerryを創業し、ビーコンというデバイスを200万個ばらまいて人の行動をセンシングするという、リアルなグーグルを作る事業をしています。グロービスでは「テクノベートシンキング」と「ネットビジネス戦略」を担当しています。

廣瀬: 廣瀬聡です。キャリアの始まりは日本長期信用銀行でした。90年代に金融危機が起きて会社が厳しくなっていく過程で、自分たちの会社の戦略をコンサルティング会社が作っているというショッキングな事実に気づき、その戦略を作っている会社に行こうとA.T.カーニーに移りました。そこで知り合ったAIGの社長に誘われて転職し、その後ベルシステム24という会社に常務として入ったのちに会社が上場し、今年の3月からグロービス経営大学院の事務局長というポジションをいただいています。グロービスでの講師歴は15年目で、カネ系を中心にいろんな科目を担当しています。

荒木: では、早速本題に入っていきたいと思います。まず、今後ビジネスパーソンに求められる要件は何でしょう?

伊藤: まずこちらのグラフをご覧ください。1956年から2012年までの経済成長率と人口のグラフです。1956年からオイルショックの頃までは平均すると9.1%の経済成長をしていました。3年前の中国と同じくらいですね。その後、低成長時代に突入しますが、それでもバブル景気があって平均すると平均4.2%成長しています。その後、1991年からのいわゆる「失われた20年」の経済成長率は平均0.9%で、ほとんど何も成長していない。この間の人口の動きは、最初は増加しているのですが、徐々に伸びが鈍化し、1991年以降は伸びが止まり、直近では減少し始めています。つまり、人口が増えれば経済が成長するけれど、伸びが止まれば経済の伸びも止まる、ということがこのグラフで読み取れるわけです。


もう1つ、今後100年の人口推移を予測したグラフも見てみましょう。問題は、経済活動の中心を担う15歳から64歳の生産年齢人口が今後40年間でほぼ半分になる、こういう状況にみなさんは今いるということです。つまり、これまでと同じことだけをやっていたら経済規模が半分になるというリスクを抱えているということですね。

もはや、新しいことをやるか国外に出て行くかしないとならない状況にあるわけです。もちろん新規事業をやるとかベンチャーを立ち上げるといった大げさなことだけじゃなくていいんです。例えば、コールセンターの生産性を5%上げるとか会議のやり方を3%改善するとか、そういったことでもいいんです。要は、新しいことをやるか変えるか、海外に行くとか、こういうことができるスキルやマインドが必要ということです。そこに強烈な想いを持つことが、これからの時代のリーダーに求められていると思います。

内山: エンジニアの方はご存知だと思いますが、インド工科大学(IIT)という非常に優秀なエンジニアを多数輩出している大学があります。その大学を卒業すると初任給いくらもらえるか、だいたい8万円ぐらいです。でも同じ人がアメリカのスタンフォードに行くと2000万円ぐらいになります。一方で、日本の非常に優秀な大学を出て就職すると、月額20万円とか、25万円とか、そんなものですかね。IITを出たエンジニアは英語をしゃべれてプログラミング能力が非常に高いにもかかわらず、日本の大学を出た人の給料と3倍違うんです。僕らが突きつけられている問いが何かというと、「お前3倍すごいんだっけ?」ということですね。

今後グローバル化がさらに進んで外国人と隣り合って働くようになったときに、多くの人がこの課題に直面せざるを得なくなるでしょう。だからこそ、MBAを学ぶことは1つの打開策になるかもしれないけれど、まずは、みなさんの「バリュー」は何なのかというのを、もうちょっと真剣に明確に定義できるようになることが必要だと思います。

荒木: 自分の「バリュー」を具体化するためには、何をしたらよいのでしょうか?

内山: 個人的な体験なんですが、僕は21歳ぐらいのときにアメリカの大学に行かせてもらいました。向こうに着いてすぐ、隣に座っていた中国の方が北京大学の首席だったと知りました。その瞬間に、「相対化」が一瞬で考えるまでもなく経験できたわけです。それで僕は生まれて初めて本気で勉強したんですよね。英語も全然しゃべれない中、全5クラスで1番を取るレベルまで勉強した自分がいて。その中国の方と会って1週間ぐらいで変わっちゃったんです。そういう強烈な体験をどれだけ積めるかというのが、バリューを考えるときには大事なんだと思います。

ビジネスパーソンが今、必要とされる力は?

荒木: 今を生きるビジネスパーソンが本当に必要なものや足りないものってありますか?

伊藤: 3つあって、1つ目は論理的に考える力ですね。グロービスでは「クリティカル・シンキング」と言っていますが。仕事を通じて論理的にものごとを考える力がビジネスパーソンには不可欠です。主張があって根拠があって、やっていることの構造がわかってないと、「この人何言っているのだろう、全然わからない」ってなりますよね。

2つ目は、プロジェクトを遂行したり、何かを変革していくときに必要なリーダーシップ。つまり、チームを導いていく力です。3つ目は志ですね。ものすごく抽象的な言葉なんですけれど、志がないと、例えば壁にぶつかったら、すぐに止めたくなるかもしれない。でも、「何がなんでもやったる、これをやってみんな幸せにするんだー!」という強い志があると、乗り越えられると思うのです。

内山: 僕も3つあって、まず歴史的な大局観が重要だと思います。「ネットビジネス戦略」のクラスで語るITの歴史も、マゼランが地球一周しましたというところから始めるんです。いわゆるイギリスがグローバリゼーションを統一したというところから始めて、産業革命が起きてから統治を広げるまで、何をドライバーにして何が動いたのかということは歴史から学べるわけですよ。

2つ目に必要なことは未来を予測する力ですね。蓋然性の高い未来においては、過去使った要件が使えるんですよね。産業革命のときのドライバーは蒸気機関で…といった分析を現代のIT産業に置き換えると、例えばLINEが3年で4億人のユーザーを獲得するようなことも可能になります。3つ目に必要な能力は、孤独に耐えること。誰もついて来れなくて孤独になることも時にありますが、それでも未来を見続ける力が必要だと思います。

荒木: いろんなキーワードが出てきましたが、それってMBAとどうつながっているんでしょう?

伊藤: 僕が、グロービスに通って手に入れた力の1つが思考力なのですよね。非常にざっくりいうと、考えるスピードが10倍ぐらい速くなって考える深さも10倍ぐらい深くなったイメージです。掛け算すると、思考力が100倍になったと。つまり今まで100分かかっていたことが、大げさでなく1分で考えられるようになっています。まあ、「クリティカル・シンキング」だけを受ければいいのではなくて、ファイナンスやマーケティングなどいろんなことを鍛えられて、総合的な思考力がついたということなのですが。MBAで得られるスキルを一言で言うと、この思考力がすごくでかいなと思います。

廣瀬: MBAっていう学位自体に意味はなくて、おそらく、ファクトアンドロジックでどういう状況でもやっていける、最低限食っていけるだけのスキルをしっかりと学べるということかなと。自分自身がそこで何を学び、どういう人的リレーションを作り、どれくらい世の中と向かい合うスキルを知っているかっていうことが一番大切で、それを身につけられるかどうかで、将来的にどれだけリスクを取れるか決まってくるんじゃないかと思います。MBAが取れて、初めてその先の勝負ができると捉えたらいいんじゃないかなと。

内山: 2年、3年と学んでいると、だいたい100本以上のビジネス・ケースに取り組むわけです。どういうことかというと、100社以上の経営者になったということですね。ただ、ケースを他人事だと思って取り組むと、この体験はできません。この会社を経営しているぞと思って考えることが大切で、その結果、クラスの議論やレポートの中で会社がつぶれてしまってもいいんです。俺は会社を100社つぶしたんだぞと思ったら、次の会社はつぶれないと思うんですよね。仮にコンサルで3年働いたとしても経験できるのは10社程度ですから、この積み上げ効果は大きいですよね。

MBAの知識はすべて必要なの?

荒木: 何科目も学んだり、自分の専門領域以外も学ぶ必要があるのか疑問に思っている人も多いと思うのですが、全体を学ぶ意義や2年間続ける意義ってありますか?

内山: コンサルティング会社時代に、むちゃくちゃ売れているけど嫌われているプロジェクトがありまして。それはいろんな企業のコスト削減をしまくるっていう、むちゃくちゃつらいプロジェクトで。嫌だな、嫌だなって思いつつもやらされて仕方なくやっていたんですが。じゃあ、自分で会社作った時に一番役に立ったのは何かというと、このコスト削減プロジェクトなんですよね。それと同じで、受けてみた結果がわかるのは1年後かもしれないし、10年後かもしれないけど、学んだことは無駄にはならないということです。

伊藤: そもそも、学ぶ「量」が必要だと思っています。なぜならば、論理的な思考力を身につけるためには、「クリティカル・シンキング」だけ受ければいいという話ではなくて、いろんな科目を受けて、次第に論理思考力が鍛えられるわけですね。あと、例えば新しいプロジェクトを始めたり事業を変革したり、サービスを立ち上げるときには、マーケティングも必要だし、戦略も必要だし、ファイナンスも必要。MBA的なスキルっていうのは普通に求められることだと思います。

これを当たり前に身につけておくことが必要です。身につけておけば、スピーディに深くものごとを進めることができるからです。

荒木: 別の側面から補足をしておきます。MBAというと「私は経営者になりたいわけではないので関係ないです」といったような声を聞くことがあります。ただ、実際には経営者を目指すかどうかは関係なくて、大事なのは「良い仕事をしたい」という気概があるかどうか、ということ。「良い仕事」というのは、なぜこの事業が存在し、そしてそのためにどんなことを為さねばならないのか、という業務の全体像を腹の底から理解して、自分の言葉で語りきることができる仕事だと思っています。よく分からないままやらされる仕事だったり、人にあーだこーだ言われて主導権を握られたまま勧める仕事ってつまんないですよね。そのためには、今の仕事よりもっと大きな視野、つまり、戦略の話であったり、おカネの流れのといったことがわかっている必要があります。こういう視点というのは、必ずしもOJTで得ることはできません。どうしても視野が狭くなってしまいますから。広い視野に立ち、やっていることの意味が心底理解できれば仕事は格段に楽しくなります。そんなシンプルな気持ちで一歩進んでほしいですね。

後編「MBAを学ぶ間に自分が本当に何をしたいのかを探せ」>>

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