前回、今のマネジャーには「変わり続けること」が求められているとお伝えしました。それは、会社を変えるということではなく、まず自らを変えるということです。しかし、変わろうという意志はあるけれども、どうしたらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
『これからのマネジャーの教科書』という本は、何十人もの方のインタビューを通して、そういった疑問に対する答えをあぶり出しています。自らを変えて一目置かれているマネジャー、成果を出し続けているマネジャーというのは、一体何が違うのか――私達は一つの結論を導き出しました。それは、優れたマネジャーのみなさんは、共通する「3つの力」を持っているということです。
1つ目は、「組織で成果を出す力」です。ここでいう「マネジャー」とは、組織の中心、つまり、しがらみの中にいる人を指すため、個人としての能力が高いというのはもちろん、「組織で成果を出す力」を持っています。その人自身が素晴らしいのではなく、組織をまとめて成果を出す方向に導いていける、そんなスキルを持っているということです。
2つ目は、「仕事に対する想いの力」です。成果を出す力だけを持っている人というのは、実はあまり尊敬の対象になりません。それらを超えて一目を置かれている人というのは、「仕事に対する想いの力」が強い方が多いということに気付いたのです。僕はこうしたいとか、私はこうしたい、こういうお客さんに役に立ちたいという想いを強く持っている人というのは、その成果を出す力を使う方向性も明確になりますし、一目置かれる存在になっている方が多いように感じます。
しかし、ここには一つ問題が生じます。それは、その想いが強いがゆえに上司や周囲が言っていることとぶつかりやすいのです。そこで必要になるのが、3つ目の力です。組織が求めること、もしくは上司が求めることと自分の思いの間にあるギャップを埋める力です。これがないと結局は組織に潰されてしまいかねません。
そして、ここからが一番大事なことですが、その3つの力は、状況に応じて変えていく必要があります。例えば、「組織で成果を出す力」というのも、最初にチームリーダーになった時は、メンバーは2人だったかもしれませんが、キャリアを積んでいくうちにメンバーが5人になり、10人になり、20になりと増えていくかもしれません。そうなった時に、当然組織を導いていく力の質も変われば、やらなければいけないことも変わりますよね。
自分は前の職場でこうやってリーダーシップを発揮してうまくいった、という成功体験にとらわれ過ぎて、部下の数が倍になっても今までと同じやり方をしていると、うまくいかないこともあります。そうすると、たとえ1度うまくいったリーダーシップであっても、それを変えなければならないのです。つまり、継続的に能力を発揮して、みんなに一目置かれているような方というのは、この3つの能力をどんどん上塗りして、あらゆるパターンで対応出来るようになっているというのが、特徴として挙げられます。
中には成功体験をずっと重ねるという人もいるかもしれません。しかし、多くの場合は成功体験に引きずられて1回ダメになって、もう1回がんばって、新しいタイプの力を身につけるということを繰り返し繰り返しやっているということがわかったのです。
ただ、やはりそこでの違いというのは、決してめげずに次に求められる能力を獲得するという点です。別の能力が身につくということが「変わる」ということだと思いますから、そういう意味も含めて「変わり続ける」ということが何よりも大事であるということに帰着するわけです。
(本記事は、FM FUKUOKAのラジオ番組「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容をGLOBIS知見録用に再構成したものです)