ビジネスプラン作成の手順: 目的を意識せよ 

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『グロービスMBAビジネスプラン』から「ビジネスプラン作成の手順」を紹介します。

ビジネスプランは、投資家から投資を引き出したり、従業員を集めたりする上で、非常に重要なツールです。昨今は、以前に比べると環境変化が早く、ピボット(方向転換)なども当たり前になってきたため、かっちりしたビジネスプランを作る必要性はやや下がりましたが、それでも、経営資源を集める上で大切なツールであることは変わりありません。ビジネスプランは、最終形もさることながら、それに至るプロセスも非常に重要です。策定のプロセスを通じて経営メンバーの意識合わせができたり、気がつかなかったリスクを再検討できたりすることも多いからです。ただし、ビジネスプランは、それを作ることが目的ではないということは理解しておく必要があります。ビジネスプランは重要ではあるものの、やはりツールです。その作成を目的化するのではなく、本来の目的が何なのかということを常に意識するべきなのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

ビジネスプラン作成の手順

ビジネスプラン作成には特に定まったプロセスかおるわけではないが、ビジネスプランは新事業の将来に大きな影響を与えるため、キーメンバー全員が多少なりとも策定に参加できるようにしておくことが望ましい。

その理由は、全員の得意分野に関するノウハウが盛り込める、あるいは議論をする中で斬新なアイデアが生まれてくるというだけではない。ビジネスプラン策定のプロセスを通じてキーメンバーの問題意識や価値観が共有化され、事業が立ち上がったときに共通の目標に向かって素早く意思決定できるという効果を生むからだ。さらに、何か問題が起きたときにも、ビジネスプラン作成を共有化しておくことで、対処のスピードは速まる。

実際には、経営に携わる各メンバーが自分の分担箇所を作成し、その後に各人が他のメンバーがつくった部分をすべて読み、互いにチェックし合うという進め方がよく用いられているようである。なお、このような場合でも、誰か1人(一般的には新事業立ち上げの核となる人物)は全体を把握・統轄する立場にいなくてはならない。

さらにビジネスプラン作成の際に不可欠な手順として、最終的な仕上げの前、もしくは作成過程において、第三者に見せてアドバイスを求める作業がある。ここでいう第三者とは会計士、コンサルタントなどの専門家や、新事業リーダーの先輩や上司、知人、場合によっては取引先を含む。その最も大きな効用は、ビジネスプランの作成者たちが気づかなかった(もしくは知らなかった)事業運営上の問題点や外部環境の動向を指摘してもらえる、という点にある。

また、ビジネスプランが文書としてわかりやすいか、ビジュアル的に見やすいか、エキサイティングで読んだ後に頭に残るかといったことも、「読み手」の立場から判断してもらえる。作成者たちの間ではさまざまな前提がすでに共有されているため、「なぜこれが伝わらないのか」といったもどかしさをおぼえることも少なくない。ビジネスプランを事前に第三者に見せることは、このようなハードルを乗り越えるためにも有効だ。

最後に何らかの法的規制や法的手続きが絡む場合には、ビジネスプランを法律顧問(弁護士、場合によっては弁理士も含む)に読んでもらうことも必要である。法律の問題は素人にとっては複雑であり、これらに抵触しないようにするには専門家のアドバイスを仰ぐに越したことはない。特に法的規制の変化をとらえるような新事業や知的財産が成功要因となるようなビジネスでは、重要なプロセスである。

ビジネスプラン作成の際の注意点

ビジネスプランを作成する際には、その主要な読み手を念頭に置くべきであることはすでに述べた。それ以外にも、以下のような注意すべきポイントがある。

第1にビジネスプランは常に変更を加えるべき「進行中のドキュメント」である、ということを忘れてはならない。特に新事業の場合には、市場・製品・経営状況は刻々と変化し、投資家や銀行も常に最新の情報を要求する。したがって、最初に項目やページ数を杓子定規に決めてしまわすに、途中で変更を加えやすい形式にしておくことが望ましい。

第2に、ビジネスプランはあくまでも実際に事業を行う際の基本プランとして用いられるものだ、ということも忘れてはならない。ビジネスプランに限らず、企画書の作成作業では、いつのまにかそれを体裁よくつくることが自己目的化してしまい、抽象的あるいは逆に複雑精緻すぎて、実際の使用に耐えないものになることがある。常に「このビジネスプランは事業推進の手引きとして実用的だろうか」という点に留意する必要がある。

資金提供を要請するベンチャー企業のビジネスプランでは、特に正確さを心がける必要がある。資金を提供する投資家や銀行、あるいは取引を開始しようという企業は、「見ず知らずの人間」に投資したり、取引を始めようとしているわけである。彼らの関心を引き、なおかつ信頼を得るためには、数字の正確さや確実な状況把握が欠かせない。

 

 

(本項担当執筆者: グロービス出版局長 嶋田毅)

次回は、『グロービスMBAビジネスプラン』から「新事業を収穫する時・イクジット」を紹介します。
 

『[新版]グロービスMBAビジネスプラン 』 
グロービス経営大学院 編著
ダイヤモンド社
2,800円(税込3,024円)

 

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『ビジネス仮説力の磨き方』『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード
図解 基本フレームワーク50』(以上ダイヤモンド社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『利益志向』(東洋経済新報社)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBA事業開発マネジメント』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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