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3ステージ型人生の崩壊後をどう生きるか―『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』

投稿日:2016/11/12更新日:2019/04/09

日本発売から1か月も経たないうちに、大きな話題を呼んでいる本書。それだけ、長寿社会をどう生きるか、というテーマが人々の関心を集めている証左であろう。著者のリンダ・グラットン氏も来日し、話題に拍車をかけた。

本書によると、平均寿命は10年に2~3年ペースで伸び続け、2007年生まれの人はその半数が107歳まで生きる。今の子供たちにとっては、「100年ライフ」は当然のこととなる。大人になっている私たちには関係ないことだと思いがちだが、1977年生まれでも、半数が95~97歳まで生きる予測だ。グロービス知見録読者の皆様は、1970~80年代生まれが多いだろうか。なんと、私たちも「100年ライフ」の当事者だったのである!

100年も生きるとなると、引退後の人生が長くなるとイメージしがちだが、現役で働く時間を伸ばそう、と筆者は提言する。しかし、ただ長く働くわけではない。それは「教育→仕事→引退」の「3ステージ型」の人生が前提にあるからだ。本書のモデルケースによると、1945年生まれの人は、「3ステージ型」の人生を歩み幸せな生涯を遂げられる。しかし1971年生まれの人はもはや難しい。40代半ばから人生の転換を迫られるであろう。人生で何度も変化を遂げる、「100年ライフ」の人生を歩む必要があるのだ。まさに、前例のない、ロールモデルがいない人生だ。

そんな100年ライフを生きるために、有形資産と、3つの無形資産を築こうと筆者は提唱する。無形資産の3つとは、生産性資産(スキルや知識)、活力資産(肉体的・精神的健康と幸福)、そして「変身資産」だ。変身資産は、自分自身に大きな変化を促すために、(1)自分をよく知っていること、(2)多様性のある人的ネットワークをもっていること、(3)新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていること、を要素として持つ。3ステージ型の人生ではあまり必要ではなかったため、目新しく感じるだろう。

一方で、今日現在の社会システムは未だ「3ステージ型」の色合いが強い。私自身も年齢を重ね、法律や制度、住宅、保険、年金などの仕組みを知れば知るほど、現在の日本の社会システムは、学校を出て就職し、30歳前後で結婚して、男性が働き女性が専業主婦として家庭を守り、子供は2人、というライフスタイルを前提に構築されていると感じてきた。安倍内閣による「働き方改革」の動きや、配偶者控除廃止の検討も進んでいるが、社会全体の変革はまだ少し先になりそうだ。

私たちの多くは、「半径5メートル以内にいる人」の影響を受けて価値観が築かれている。特に、「親」と「所属している・してきた組織」の2つではないだろうか。1970~80年代生まれの親世代は、団塊の世代~その少し下の世代にあたり、「3ステージ型」の人生を一斉行進してきた。「これが幸せの姿」と、言葉と行動で示されてきた。そして、所属している組織からも、仕事のみならず、生き方の影響をも受けている。無意識的に、色濃く影響を受けている。自分はどのような影響を受けているのか――これを自覚することが、「変身資産」の自分をよく知っていること、の第一歩だろう。

とはいえ、今日から早速「100年ライフに備えよう!」と腕まくりして新しい行動を起こすのは難しい。まずは、全然違う世界にいる人に会いに行こう。特に自組織外の若い人、海外にいる人だ。「半径5メートル以内」のはるか遠くにいる、日々の生活で自分の視界に入らない人に会おう。それはきっと、自分に変化を促すきっかけとなるだろう。
 

『LIFE SHIFT(ライフ・シフト』
リンダ・グラットン(著)、アンドリュー・スコット(著)、池村千秋(訳)
東洋経済新報社
1800円(税込1944円)

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