異色のスリートップ制で成長中、腹割るコミュニケーションで創業の思いを持続【CaSy・加茂雄一】 

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鳥潟:
まず、 CaSy(カジー)のサービス内容を簡単に説明していただけますか?

加茂: クラウドソーシング型の家事代行サービスを提供しています。2014年1月に立ち上げて6月にサービスインしました。

戦略の3つの柱は「コスト削減」「質」「安定供給」です。家事代行会社は15年前頃からありますが、まだ2%ぐらいの世帯しか使っていません。主な理由は価格が高いからです。老舗の会社だと1時間5000円くらいかかります。もう1つの理由はタイムラグです。営業マンが依頼を持ち帰ってキャストやスタッフに紹介、最終的に2週間ぐらいかかるところもあります。

これらの問題を解消するために、クラウドソーシングの形でやることにしました。主婦やOLの方に登録していただき、お掃除ができない人のところに行ってもらう。そうすれば、営業マンは要らないし価格も安くなるというわけです。当時、レアジョブ(オンライン英会話)のようなクラウドソーシング型のサービスが多数出ていたので、これならいけるかもしれないと考えました。現在、スポットは1時間2500円、定期だと2190円で、最速で3時間後の依頼ができます。

家の中に入っていくサービスなので質にもこだわっていて、全キャストに対して面接と研修を実施しています。それから、家事代行業界は有効求人倍率が「4」で本当に人が足りない。需要を満たせるよう、人材確保にも力を入れています。

鳥潟: 立ち上げの経緯も聞かせていただけますか?

加茂: 大学を卒業してから31歳でこの会社を創業するまで、会計士をしていたんです。IPOや株式上場のコンサルや監査が主な仕事だったので、ベンチャー企業は身近な存在でした。世の中のためになる仕事を見つけて熱く語るベンチャー社長の話を聞くことも多く、次第に「僕も世の中のためになる会社を作りたい」と考えるようになりました。

そんな思いを持ちながら2011年にグロービス経営大学院に入学し、ベンチャー・キャピタル・ファイナンスのクラスを受講したときに、創業メンバーの3人でチームを組むことになりました。このクラスは最終日にベンチャー創業を前提とした事業プランを発表するのですが、3人でプランを話し合っていく中で、家事代行の案が出てきたんです。女性の社会進出や高齢社会が進めばもっと必要とされるんじゃないかと。

鳥潟: なぜ一歩を踏み出せたんでしょう?

加茂: 3つ要因があります。まず、クラスの最終日にベンチャー・キャピタルの方も来ている中で事業プランを発表したところ一番評価が高く、ベンチャー・キャピタルの方からも「これだったらお金出してあげる」と言われたから。2つ目は、サービスインする前に講師からBEENOSさんを紹介してもらって出資を受けられたので、お給料をもらえる体制ができて嫁さんを説得できたからです。

鳥潟: いわゆる「嫁ブロック」があったのでしょうか。

加茂: そうですね。私は前職が会計士だったのでそれなりに収入があったし、ほかのメンバーも大企業で働いていたので。ただ、みんなそれぞれに世の中のためになる会社作りたいっていう思いもあったので、そこの思いっていうのが嫁ブロックを越えたのかなと。

3つ目は…みんな適当だったんですよ。「とりあえずやってみよう!」というタイプだったので(笑)

鳥潟: 他には、どんな難所がありましたか?

加茂: 実は、自分としての踏ん切りもなかなかつかなかったんです。前の職場も僕はそれなりにプライドを持ちながらやっていたので、辞めるかどうかで悩みました。どっちが世の中のためになるんだろう、どっちが自分の使命に沿っているんだろう…と。最終的には、新しいことにチャレンジしてみたいっていう思いと、仲間がいたっていうのは大きいです。1人だったら踏ん切りつかなかったかもしれないです。

競合が次々に登場、どう強みを打ち出していくか

鳥潟 創業時の悩みを聞かせていただけますか?

加茂: 悩みとは少し違うかもしれませんが、3名とも代表取締役となり、重要な意思決定は3人で決めることにしました。「迅速な意思決定ができないんじゃないか」など、各方面から指摘も受けましたが、その点はお互いを信頼したうえで多数決で迅速に決めていくことにしました。

あとは、やっぱり戦略ですね。冒頭に3つの戦略で攻めていると言いましたが、僕らが作ったビジネスモデルは何か特別な技術が必要とか、もともとある強みを生かせるものじゃないので、やろうと思ったら誰でもできます。実際、タスカジさん、Swippさん、COMEHOMEさんなど同じようなモデルの会社が出てきたときに、どう勝っていくかを考えるのに苦労しましたね。

ただ、大手の子会社だとお客様のデータやキャスト・スタッフのデータをノートでやりとりする形なので自社で持ってないんですね。その点、うちはクラウドソーシングを初めにやったんで、お客様とのやり取りや評価、キャストの日報もデータで入ってきます。そのデータを溜めて、今後は人工知能を使ってスタッフに合ったアドバイスをシステム的に上げたり、お客さんとスタッフのマッチングなどに生かしていこうと思ってます。

鳥潟: 確実にニーズが見えている市場ですから、あとはいかに速く、安く、モデルとして構築するかっていう話になってくるわけですね。

加茂: それとやはり資金調達は結構苦労しました。最初にBEENOSさんに入れてもらった後に2回ラウンドがあったんです。1年後くらいかな。結局みずほさんとイーストベンチャーさんが入れてくれたんですけど、いろんな競合が出てきた中で、どう勝っていくか説明するのが難しかったです。

鳥潟: 資金調達をする際のポイントはありますか?

加茂: 1つ目はネットワークですよね。最初に僕は講師経由でベンチャー・キャピタルを見つけました。起業する人のことをよく知っていて、かつお金を出してくれる人を紹介してくれる人をどう見つけるかがポイントだと思います。

2つ目はやっぱり熱意ですね。まだビジネスが立ち上がっていないシード期は、経営者の思いとか熱意を一番見ると、ベンチャー・キャピタルの人からも言われました。

3つ目は根拠となる数字です。株主からお金を調達するときもそうですし、従業員を動かしていく際にも大事だと最近つくづく思います。本当に優秀な人を採用できても、彼らからするとどこか行こうと思えばすぐ行ける状況なので、仕事は本当に意味があることに絞る。そして彼らがやることに対して「こんな効果がある」「戦略の中でこういう位置づけだからやるんだ」と、数字で説得させていくっていうところはありますね。

創業メンバーとは腹を割って密なコミュニケーションをする

鳥潟: いろんな変革を経験された今、よい経営チームを作るには何が大切だと思いますか?

加茂: 腹を割って話すこととコミュニケーション頻度だと思います。全体会議はしていたのですが、気付くと3人で話す機会が少なくなっていました。そんなとき、ベンチャー・キャピタル・ファイナンスの講師からもっと3人で話す頻度を増やした方がいんじゃないかと言われ、半年前から週に1回は3人で話すようにしました。僕らはクラスで知り合った関係で、実はそんなにお互いのことを知りませんでした。だからコミュニケーション頻度が多いとか、腹を割って話せる仲になるっていうのは、最高の経営チームを作る上での1つの重要な要素かなと思います。

鳥潟: これからベンチャーを目指す方へのメッセージやアドバイスをお願いします。

加茂: 僕たちは、100個以上のビジネスプランの中から取捨選択していってこのビジネスモデルを選んだんです。ポッといい案が出ることもあるんですけど、実際起業するんだったら100個くらいとことん考えて本当に自分がいけるっていうのを選んだ方がいいかなと思います。1人でどんどん考えが出てくるっていう人もいるし、人と話すことによってアイデアが出てくる人もいるので、そこは自分がどういうタイプなのか見つつ、ですが。

もう1つは、この業界に入ってきてベンチャーの経営者とかベンチャーをサポートする人とかベンチャー・キャピタルの方とかと触れ合う機会がいっぱいあるんだと気付いたんです。例えば、トーマツ ベンチャーサポートと野村證券が主催しているモーニングピッチなど、そういうのは生かしていったほうがいいのかなと思いますね。僕も会計士をやっているときにそういうところに行けば良かったなって思います。

鳥潟: 今後の方向性やビジョンも教えていただけますか?

加茂: もともと、家事代行で困っている人を助けたいっていう思いで始めたビジネスですが、やっていくうちに、実は家の中には他にもお願いしたいことがいっぱいあるんだとわかってきたんです。例えば介護やペットシッターやベビーシッターですね。特にベビーシッターなんてうちのメインのターゲットが妊婦さんから2歳くらいのお子様がいらっしゃるご家庭なので、そういうところまでサービスを広げてプラットフォーム化したいなっていうのが次のステップですね。

鳥潟: 中に入り込んでいろいろやってらっしゃるからこそ、いろいろ細かいニーズを吸い上げられる。そこは確かに強いですよね。貴重なお話をありがとうございました。 

インタビュー後記

スタートアップフェーズにおいて、経営チームのチーム力、関係性の構築は最重要課題と言われています。様々な考え方がありますが、“代表取締役3名”という体制で経営を推進するケースは珍しいです。全員が代表だからこそコミットが高まり、さらに相互に尊敬をしながらコミュニケーションできると加茂氏は言っていました。

仕事柄、多くのスタートアップ経営チームと接していますが、経営メンバーが“腹を割って話す”ことは簡単なようで難しいと感じます。同じ船に乗っている深い関係だからこそ、お互いに甘えを持ち、“分かってくれるはず”という期待値を持ってしまうものです。創業期に合意した経営チームの共通の想いは、時間と共に変化していくものです。だからこそ、常に相互の考えをすり合わせ、経営チームの想いをひとつに保ち続けることが大切なのでしょう。これからの事業発展、応援しています!

 

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