世界一のプロゲーマーに学ぶ己と向き合う力 ―『勝ち続ける意志力』 

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全世界で再生回数2000万回を超え、米ゲームサイトKOTAKU.COMにて「ゲーム史上最も記憶に残る試合(1位)」と認定された「背水の逆転劇」。この試合の勝者が、著者・梅原大吾(通称:ウメハラ)氏である。

私自身、学生時代この種の格闘ゲームにかなり熱を入れたタイプだが、彼のプレーは見る者を魅了する。そして、先の試合の決着後、周囲の大歓声を尻目に、何事もなかったかのように次の試合に向かう姿を見て、「この人は何者なのだろう」と俄然興味が湧き、本書を手に取った。

本書は、17歳にしてゲームで世界一となったウメハラ氏の人生、そしてゲームと向き合う過程で培った勝負哲学について綴った本だ。プロゲーマーの寿命は25歳と言われる中、30代となった今もなお第一線で活躍している。それを支えているのが、圧倒的な行動・実践、そして失敗の量である。

一見すると遠回りな方法であっても、「正しい努力は、変化すること」とセオリーを疑い、どんどん失敗し、思考錯誤を繰り返す。教えを請う相手がいないからこそ、目の前のことに全力を傾け、己を強くするために、成長し続け、未踏の地を目指す。「勝ち続ける」ために己と向き合うひたむきな姿には考えさせられるところが多い。

この面だけを切り取ると、強い心の持ち主であることをイメージしがちだが、本書では、ウメハラ氏の弱さ・人間らしさも赤裸々に綴られている。ゲームに打ち込むことへの周囲からの偏見、自分への嫌悪感、有名な大会に優勝しても満たされなかった満足感。一時ゲームの世界から離れ、新たに打ち込んだ勝負の世界でも満たされなかったことでの挫折……。

それらを乗り越えることができたのは、「自分で自分の掲げた目標をクリアする」「目の前の勝ち負けにこだわらず、日々の成長を目標とする」という、成長することを目指したプロセスの大切さに気付いたからだ。決して負の感情を払拭するために行動したわけではなく、ゲームに限らず自ら成し遂げた経験を積み重ねた日々の行動によって、「自己効力感」(自分への信頼感)を高め、自分が大切にする価値基準を達成した「自己評価的成果」を獲得していった結果、自分が生きていくペースを掴んだウメハラ氏。

私自身、「自分に対して自信が持てない」「周囲からの評価が気になる」という経験を何度もしてきているが、彼の人生談は、人の認知がキャリア開発やキャリアの意思決定において重要な役割を果たすことを背景にした「社会認知的キャリア理論」の観点にも重なる。自分で自分に対する信頼を作り上げたプロセスを追うことができる、非常に興味深い事例である。

「どれだけ悩んでも迷っても、目の前にある道を突き進めばいい。そうすればきっと、その道がいつか自分だけの道に変わるような気がしているから」――今の道を進むべきか悩んでいる人、自分の目の前にある道の途中で立ち止まりそうな人にとって、ウメハラ氏の言葉は、日々の過ごし方、自分と向き合う姿勢、そしてなによりも一歩踏み出す勇気をもらえる一冊になるであろう。
 

『勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」』
梅原 大吾(著)
小学館
740円(税込799円)

 

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