メンズネイルは流行るのか?―その価値は“領空侵犯”にアリ 

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爪をかむクセがある筆者には、整った爪への憧れがある。「細長くて厚い、きれいな爪になれないか?」と初めて体験したのがメンズネイルケア。30分間女性に手をにぎられっぱなしで、ドキドキしながら考えたことは――。マーケティング・コンサルタントの郷好文氏が、ギャルメン必見のサービスを語る(このコラムは、アイティメディア「Business Media 誠」に2008年5月8日に掲載された内容をGLOBIS.JPの読者向けに再掲載したものです)。

体験されたことのない殿方には、このウキウキする気持ちは分からないだろう。終わって数時間経っても、いや、その翌日までも“気持ちアップ効果”があるのだ。詩人・石川啄木は「はたらけど はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり」と嘆き、“ぢつと手を見る”わけだが、筆者は“見つめれど 見つめれど なお我が手ぴかり ぢっと爪を見る”――って、これ、おかしいですか?

“心の頬”をたるませ、顔の頬をゆるませ

実は筆者、メンズネイルケアに初めて挑戦したのだ。オトコ独りではちょっと・・・なので、ネイルケア歴が長い同僚の女性Cherryさんに同行をお願いした。場所は代官山の路地奥にある「アンデミ」。そこには席が2つあるほか、奥にはフットケアや温浴ケアのリクライニングシートもあり、ドキドキしながら席に座った。

「ケアは初めてですか?」と、ネイリストの松野さん。「はい」と緊張気味で筆者は小声。「では始めますね。ここに手を載せてください」と、茶色い枕のような台に手を載せられた。「力、抜いてくださいね」と言われても、ドキドキ絶頂なんですよ。

松野さんは「丸くしていいですか?」と言い、爪を削るボード(やすり)を当て、次に爪の先端の形をどうするかと聞いてきた。四角くて固い爪に憧れがあるものの、短い爪だから四角くも長くもできない。短い爪にボードをあてて下から上に削ってゆくと、爪が丸くなっていく。

形を整えた後は白いクリームを付けられ、温水を入れたボールの中でハンドバス。指先を柔らかくすると甘皮の処理が始まり、温浴でじんわりと幸せ気分に浸った。片方の手を入れている間に、もう片方の手を処理、という段取り。

松野さんが手にする甘皮のケアマシンは、歯医者で「クィ~ン」と歯をコリコリする、あの憎っくきマシンにそっくり。「そうですね。歯医者みたいなことをしてますね」。しかしマシンの先端に付けたブラシで“くいくい”と甘皮を押し上げても痛みはなく、なぜか気持ちいい。

次はニッパーを使って、爪の縁に付いている甘皮を除去する。さらに気持ちよくなってきた筆者は告白モードに。「実は、昔から爪をかむ癖があるんです」「そういう感じがしますね。指先よりも爪が引っ込んでるし、特に(左手の)親指の凹んだところ、その影響かしら?」

爪をかむことから解放されれば、きっと何かが変わるはずだ。敬愛する作家の向田邦子女史もまた爪をかむ癖があったと告白されていた。爪をかみ、文字をつむぐ。手を見つめて我が人生の詩をうたう。爪をかむ作家も、砂を握る詩人も、うふふな体験エッセイストも皆、爪のケアが必要なのだ。そんな思いにふけっていると、ネイリストに現実に引き戻された。

筆者は先広がりの平爪で、しかも薄くてヤワい。「ちゃんと爪を伸ばしてケアすれば、細長くて厚い爪になりますか?」「なりませんね、遺伝でしょう」とバッサリ。

仕上げはハンドマッサージでオイルを付けて、もみもみゴリゴリ。「力、抜いてください」「チ、チカラ、入っていますか?」「入ってますよ」

実は筆者、女性からこんなに手を握られたことが最近なかったので、緊張していたのだ。マッサージではネイル人・・・失礼、寝入る人が多いとか。「手は疲れがたまるんですよね」「男性にしてはきゃしゃな手ですね」などと話しかけられているうちに、ネイルケア初体験が終了した。とても快感の料金は、およそ3800円。

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ネイルケア前

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ネイルケア後

オンナのすなるネイル体験、その感想をひとことで述べます。「オンナは気持ちよいことをオトコに隠している、ずるいぞ!」

普及のカギは“オンナのすなるもの、オトコもしてみむ”の逸脱心理

ガードの堅い筆者でさえ、初対面の女性に対して、告白モードになったように、施術中は“心の頬”がたるみっぱなし。ネイルケアは自己解放の場でもある。しかもキレイな指は2~3週間持続し、手元を見るたびに悦に入る。それに比べヘアケアは鏡を見なくてはならないし、洗髪すると効果が落ちる。

筆者は爪かみのコンプレックスからネイルケアに興味を持ったが、ケア中もケア後も心理効果が持続するからこそ、女性は1万円も払うのだろう。さてここで質問。「メンズネイルケアは流行るのだろうか?」

まずは世間体との戦いだ。「モデルでもないのに、フツーの男のネイルってどうよ?」といった冷たい視線がまずツラい。ドラッグストアでケア用品を購入することでさえ、どこかハードルが高い。代理購入してもらうのも少し恥ずかしいし、グッズ販売の店頭はもっと工夫がほしい。

それではサロンはどうだろうか。男子禁制っぽいネイルサロンに男一匹潜入するのは、引かれるしこっちも引く。だから女性とのペアが基本だろう。ペアの問題は女性が1時間、男性が30~40分とケア時間にギャップがあることだ。客の回転を考えると難しいので、ヘアカット店での“トッピングメニュー”はどうだろうか。サービスの差別化になるし、単価アップしてよさそうだ。

では男子専用のネイルサロンはどうか? これは微妙である。

今どきは男女の境目をあいまいにする“中性的な楽しみ”がウケている。オヤジギャルがオヤジの楽しみ領域を荒らす女性とすれば、“ギャルメン”は、女性の楽しみを我がモノにと思う男性で、これが増えているようだ。例えば男のスイーツ好き、メンズエステ、そしてメンズネイルケア。

ギャルメン市場の拡張、それはオンナの楽しみを奪取したい男の“女性市場への領空侵犯”である。男と女の境目をぼかしながらも、“オンナのすなるもの、オトコもしてみむ”という逸脱心理に価値があるのだ。

だから男だらけのネイルサロンはきっとウケない。男だらけだと、いずれは“ぢっと手を見る”寂しい男のロマンになってしまいそうだから。

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