技術的成長と精神的成長の相互作用 

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成長とは何かを考えるとき、例えば「技術的な成長」と「精神的な成長」で分けてとらえることができます。人はまず、技術的に成長したいという意欲を持ちます。幼児であれば「自転車が乗れるようになりたい」、学生になれば「試験でもっとよい成績を取ろう」、職業を持つようになれば「業務課題をもっとてきぱきこなせるようになりたい」というように。人の成長の大部分は、「できないことができるようになる」「もっとうまくできるようになる」という技術の習得にあります。

それに対し、精神的成長は、「できるようになりたいことがうまくできない」といった状態の中でむしろ育まれるものです。忍耐力や持続力がつくことは精神的な成長の典型といえます。また苦境を乗り越えることで、自信を得たり、協力者への感謝の気持ちがわいたり、世の中の価値観の多様さを知ったり、そうした内面の変化はこの種類の成長です。

技術においては、物事をこなす「巧拙(うまいか/下手か)」が問題になります。ですから技術的な成長は、いわば「長けた仕事」を生み出します。けれども、人は技術的な成長だけでは本当に次元の高い仕事はできません。もう一方の精神的な成長が必要になってきます。ピーター・ドラッカーはこの点を次のように書いています。

「指揮者に勧められて、客席から演奏を聴いたクラリネット奏者がいる。
そのとき彼は、初めて音楽を聴いた。
その後は上手に吹くことを超えて、音楽を創造するようになった。
これが成長である。
仕事のやり方を変えたのではない。意味を加えたのだった」

「それをやる意味を見出せた!」という精神的成長は、自分の仕事を変えるとても大きな要素です。意味を発見した仕事人は「長けた仕事」を超え、その人でなければ創造できない「豊かな仕事」を生み出すことができます。

誰しも入社3年くらいまでの間や、新しい業務を任された当初は、技術が伸びる喜びがあります。しかし、仕事慣れしてくるにしたがって惰性が生じてきます。仕事に対するモチベーションの低下やキャリアの停滞感はそうしたところから始まると考えられます。そんなときに人事異動があったり、転職をしたり、あるいは結婚などして環境がまるっきり変わり、またしばらくの間はリフレッシュ感のもとで働けるということはあります。しかし、それらはあくまで“外科的”な手術であり、効果は限定的です。

その人が本当に成長の次元を上げていくためには、“内からの”変化がいります。なにげない仕事の中に意味を見出したり、苦境や修羅場の過程で人生観や仕事観を根底から揺さぶられたりして、ものの見方・意識が変わる。真の成長はそうした内的変化にあり、これが生じてこそ次の技術的成長も起こります。そしてそこからさらに精神的な成長があり、内的変化が起こる。その内的変化は、ある時点から、「成長」というよりも「成熟」という名の変化にもなっていく。この絶え間ない循環が成長を推進させ、キャリアを無限に開いていくのです。
 

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